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売れるラグジュアリー・ブランドの販売員の特徴 第七条

アパレル塾
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徒歩10分圏内に乱立する同じブランドの店舗の異様さ。

2010年代に入り、ラグジュアリー・ブランドは、アジア進出に力を入れています。それは欧米人のブランドに対する熱が、経済力に反比例していることに対して、アジア人の場合は、ブランド信仰というものが強く、経済力がさほどなくてもブランドを購入する層が、若年層を含めて多く存在することからです。

その結果、日本国内に、歴史上初めて、世界中のラグジュアリー・ブランドが混在する異常な状況が生まれています。

例えば銀座ひとつを例にとっても、同じブランドの店舗が、二つあったり、西日本ならば、京都の四条に二つのルイ・ヴィトンや難波ー心斎橋間に二つのルイ・ヴィトン、三宮にも二つのルイ・ヴィトンという風に、そこまで必要なのか?と言うほど店舗が増えているわけです。ちなみに梅田には、3つのグッチ、2つのエルメスが存在します。

ラグジュアリーと名のつくあらゆるものの鉄則として、店舗数が増えれば増えるほど、その神通力は、落ちていくことになります。

ましてやインターネット全盛の現代において、実店舗を増やし、膨大な人件費とテナント費を払い続けるメリットはほとんどありません。

一方で、フランスやイタリアに本社のあるラグジュアリー・ブランドにおいて、悪しき風習が存在します。視察と言う名の「観光」として、本国の社員が、とんでもないヤツは子供まで連れて、日本にやってくるのです(ある意味、日産で起きていたことと重なります)。そして、そういった連中はなぜか京都に何泊かする訳なのですが、そういった滞在費や現地での接待費用はどこから出ているのでしょうか?

これほど店舗が増えて(大手百貨店においては、階層ごとに同じブランドの出店が出来ている)、ひとつの店舗がこまめに改装され、商品数も、膨大に増えていくにもかかわらず、販売員の懐は相変わらずお寒く、自宅にあるワードローブはほとんど増えず、優雅なるリゾート地とも無縁な環境の中、財力のあるお客様と、さも自分もその同類であるかのように会話しなければならないのです。

ここで、はっきりと断言しましょう。ラグジュアリー・ブランドの販売員は、常に自己嫌悪に苛まれています。

明らかに、彼らは、ラグジュアリー・ブランドを購入するお客様とは違う環境の中で、明るい未来の見えない環境の中で、生きているのです。でありながら、優雅な買い物を、優雅なスペースで楽しむお客様に、合わせて、さも自分自身も同類であるかのように自分を騙しながら人生を過ごしているのです。

しかし、ひとつだけ間違いない現実があります。大の男が、ラグジュアリー・ブランドの販売員なぞしていると、40代になるととんでもない不幸が待ち構えているということです。キャリアアップなど夢の夢です。苦労だけを背負い込むような中間管理職である店長職を任されてしまい、これからの不景気の中で、苦労することは目に見えているのです。

同じブランドの店舗と店舗の距離が近づけば近づくほど、お客様の購買意欲は、遠のいていきます。更に言うと購買頻度は落ちていきます。現在は、中国人及びアジア人の観光客のセルフィー(=ブランド自慢)文化に流されやすい日本人が、ブランド嗜好になっているだけであることを、ラグジュアリー・ブランドは知らなければなりません。彼らは、ファッションや歴史のあるラグジュアリー・ブランドに興味があるわけではなく、ただ人気のある商品を手にしたいだけなのです。

バブルとは必ず弾けるものです。かつて、海外における日本人がそうであったように、中国人の爆買いは、近々終焉を迎えるはずです。

この時、ラグジュアリー・ブランドが店舗数を無計画に増やしたツケを払わされるのは、現場の販売員だということを予想しておかなければなりません。

そのためには、ラグジュアリー・ブランドの販売員は、謙虚に、ファッションとラグジュアリー・ブランドの歴史を学び、来たるべきサバイバル時代に備えなければならないのです。なぜならば、店舗数は整理され、本当にそのブランドを愛するお客様に対する接客が出来る販売員のみが必要とされる時代になるからなのです。

第七条 スタイリングが苦手な販売員が増えている

たとえラグジュアリー・ブランドにおいて、服や靴を売るわけではないバッグや財布を主に販売するショップであったとしても、その販売員のスタイリングの能力が販売力に反比例していきます。

スタイリングとは、そのお客様と商品の距離感を推し量る作業です。

つまりは

8万円以上のラグジュアリー・ファッションを売る時に何よりも考えないといけないこと、それがスタイリングなのです。景気が悪くなればなるほどに、お客様はラグジュアリー・ブランドに夢を求め、的確なスタイリングに対してのみ、お金を出そうと固く決意して店舗に来客されるわけです。

ブランドのスタイリングを同ブランド同士ですることがあり得ない現在においても、まずは、同ブランド内のベストな組み合わせを探し出すことは基本であり、最も重要なことです。

その上で、売れる販売員が実践することは、買わないお客様に目をつけることです。

とにかくオシャレで、ファッション感度の高いお客様をファッション談義に引きずり込みながら(つまりその販売員にも、ファッションの知識がなくてはいけないことは言うまでもない)、自由にスタイリングをしてもらうことが重要なのです。こうして、このお客様のスタイリングの提案を盗み、購買意欲の高いお客様に自信を持ってそのスタイリング例をぶつけていくのです。「一昨日に、オフホワイトのスニーカーを履かれたお客様がこのブルゾンを見事に着こなされていました」と言ったりするわけです。

自分自身で着てみたり、身につけたりして確認する作業以上に、重要なのは、本当にラグジュアリー・ブランドを購入しているオシャレなお客様の英知なのです。

そんなファッション感度は高いが購入してもらえないお客様から学んだスタイリング例が多くなればなるほど、その商品を販売することに対する自信は飛躍的に高まり、結果的に、彼らに、何らかの商品が売れたりするわけなのです。