『カイエデモード香水図鑑』に、新作発表会・内覧会・コンサル依頼を送る ← 2026年春よりご依頼が殺到しております。

ローリング イン ラブ|スキンパルファムと言うよりも、ヌードパルファムと呼ぶべき香り

キリアン
©KILIAN PARIS
キリアン
この記事は約7分で読めます。

ローリング イン ラブ

原名:Rolling in Love
種類:オード・パルファム
ブランド:キリアン
調香師:パスカル・ゴーラン
発表年:2019年
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/36,850円
販売代理店ホームページ:ラトリエ デ パルファム

スポンサーリンク

キリアンの新章は、女と男のミルクに溺れていく香りから。

©KILIAN PARIS

©KILIAN PARIS

©KILIAN PARIS

この香りには、フルーティー、ウッディ、パウダリー、またはアニマリックな香調を持つレザーのような、非常に官能的な〝肌を艶めかせるムスク〟がたっぷり含まれています。

キリアン・ヘネシー

キリアンというブランドは、元々、正式名称を〝バイ キリアン〟と申しました。そしていつのまにか〝キリアン パリ〟という正式名称に変わっていたのですが、これはこの香水に対するキリアン・ヘネシーの心境と同じく、彼自身のある心境の変化のためでした。

ブランド名を変更したきっかけは、キリアンが、スペインのバルセロナ旅行で訪問したピカソ美術館で受けた衝撃からでした。青の時代(1901年~1904年)とばら色の時代(1904年~1906年)を経て、キュービズムに辿りつくパブロ・ピカソの進化の歴史を見て、キリアンも同じように進化していかないといけないと覚醒したからでした。

そのための〝あたらしいあしたのために その一〟が、2018年に発売された「ローリング イン ラブ」でした。〝愛に溺れて〟〝愛に身を任せて〟という意味を持つこの香りは、キリアンというブランドを象徴する「ラブ ドント ビー シャイ」を進化させたネーミングでした。そして、今までの香りのように、複雑な感情を呼び覚ますものではなく、シンプルな香り=〝ただ愛だけのために〟作られた香りでした。

オリエンタル・フローラルの香りは、パスカル・ゴーランにより調香されました。合成麻薬であるMDMA(エクスタシー)からもインスパイアされています。キリアン自身が〝白の香水〟=〝白に白を重ねるミルフィーユのような香水〟と呼ぶこのフレグランスのボトルカラーは、最初は鮮やかな赤色でしたが、現在は燃え尽きるような白色です。

スポンサーリンク

キリアン帝国の女神、エリザベス・ジョーンズ・ヘネシー

エリザベス・ジョーンズ・ヘネシー(隣の男性はキリアンではない)。夫に負けない圧倒的なオーラがあります。

その女性の名を、エリザベス・ジョーンズ・ヘネシーと呼びます。彼女こそがキリアン・ヘネシーの二番目の妻であり、キリアンというブランドの影の女帝なのです。

彼女の存在があればこそ、キリアンはこれだけ大きくなったと言っても過言ではありません。エリザベスは、キリアンのアメリカにおけるマーケティング・マネージャーに就任する前は、サックス・フィフス・アベニューとバーグドルフ・グッドマンの美容バイヤーを10年間勤めていました。

そしてその時に、キリアンの香水を扱うようになり、二人は恋に落ち、その後6年間キリアンのために働き、共に離婚して、現在は再婚を果たしているのです。

©KILIAN PARIS

そんな彼女の宿願が、キリアンというブランドをただ香水だけで終わらせずにトータル・ビューティーを提案するブランドへと進化させることでした。それが今年の2月にアメリカで発売されたメークアップライン「ル ルージュ パルファム」でした。12種類のリップスティックには香料が用いられている特殊な仕様になっており、2カ月で7万個完売しました。

このエリザベスという女性の恐ろしさは、自身の存在は、全くキリアンというブランドとは別の存在として立ち振る舞っているところにあります。あくまでもキリアンの主役はキリアン・ヘネシーであることを心得ているのです。しかし、このブランドの頭脳は、紛れもなくあのバーグドルフ・グッドマンで敏腕美容バイヤーとして叩き上げられた彼女なのです。

だからこそ、この「ローリング イン ラブ」のボトルカラーは赤であり、広告フォトも「ル ルージュ パルファム」のリップと対になっており、ゴージャスで官能的な21世紀の美人像を創造するキリアンのブランド・イメージが巧みに作り上げられているのです。

スポンサーリンク

スキンパルファムと言うよりも、ヌードパルファムと呼ぶべき香り

©KILIAN PARIS

©KILIAN PARIS

©KILIAN PARIS

私にとって、愛というのはチューベローズのような香りがします。だから私は「ローリング イン ラブ」にこの花を加えることにしました。でも腹を割って話しますと、真実は、愛の香りとは、あなたの愛する人の香りを持っていることなのです。

キリアン・ヘネシー

蜘蛛女のキス。それは一度、キスを交わしてしまったら決して抜け出せない、蜘蛛の糸に絡めとられるように、一瞬で魅了される、運命的な愛の瞬間です。その愛が、破滅を呼ぶか、天国へと導くかは、運を天に任せるようなものなのですが、だからこそ、人々はこのシンプルな愛のカタチから逃れられないのです。

服を脱がずに、全裸になるような感覚を生み出す〝愛に溺れる〟香りは、明らかにトム・フォードの「ロストチェリー」を意識した、チェリーを思わせるアーモンドからはじまります。そこにフルーティーなアンブレットが溶け込み、新鮮なアーモンドミルクに満たされてゆきます。

それはまるで愛のはじまりの酔いしれるような高揚感を、ひんやりと冷たいアーモンドミルクにより、ストレートに表現しているようです。どこかヘーゼルナッツチョコレートのようなニュアンスも感じられます。

すぐに涼やかにパウダリーな(口紅を思わせる)アイリスを中心に、無邪気に青々としたフリージア、そしてロマンティックなヘリオトロープが到来し、アーモンドミルクという名の蜘蛛の糸に絡めとられていくように、素肌にとろけてゆきます。

そして間髪入れずに、めくるめく妖艶さを迸らせるチューベローズが加わってゆきます。それはまるで「こんなのはじめて」という感覚と共に、女と男のミルクに溺れていくように、愛は絶頂に達します。ジューシーなラズベリーが隠し味になっています。

やがて、〝肌を艶めかせるムスク=ムスク ド ポー〟を中心にバニラ、キャラメル、トンカビーンが生み出すほんのりとアルコールを感じさせる優しい甘さに香り全体が包まれるのです。きらめく甘さに満ちたちょっぴり謎めいたアーモンドミルクの余韻に身も心もほだされてゆきます。

この香りは、スキンパルファムと言うよりも、ヌードパルファムと呼ぶべきでしょう。つまり、服を着たまま、全裸で愛撫を交わす妄想を、易々とその周りに抱かせてしまう〝よろめき香水〟なのです。

「香水の香りよりも、自然の香りの方がいい」という人に対して、「自然のエロスを広がらせる」、シャンパン、スイーツ、ベッドインする前の気の効いた軽食との相性も抜群な香りなのです。ハニートラップの共犯関係として最も理想的な香りであり、純愛物語を盛り上げてくれる神聖さもある、天使と悪魔の両面を兼ね備えたすごい香りです。

ジョー・マローン・ロンドンの「スカーレット ポピー コロン インテンス」とキャロライナ・ヘレラの「グッドガール」ともよく比較される香りです。

スポンサーリンク

香水データ

香水名:ローリングインラブ
原名:Rolling in Love
種類:オード・パルファム
ブランド:キリアン
調香師:パスカル・ゴーラン
発表年:2019年
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/36,850円
販売代理店ホームページ:ラトリエ デ パルファム


トップノート:アンブレット、アーモンドミルク
ミドルノート:フリージア、アイリス、ヘリオトロープ、ラズベリー、ヘディオン、ピオニー
ラストノート:バニラ、ムスク、チューベローズ、トンカビーン、キャラメル