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【ディプティック】オトニエル ロザ(ルイーズ・ターナー)

ディプティック
©Diptyque
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オトニエル ロザ

原名:Othoniel Rosa
種類:オード・トワレ
ブランド:ディプティック
調香師:ルイーズ・ターナー
発表年:2020年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/23,430円

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ガラス玉をアートに変えた男、ジャン=ミシェル・オトニエル

ジャン=ミシェル・オトニエル ©Diptyque

ルイーズ・ターナーとジャン=ミシェル・オトニエル

ディプティックが2020年7月2日に限定発売した「オトニエル ロザ」は、マダガスカル産ブラックペッパーとローズをブレンドしたスパイシーローズの香りです。現代アートにおいて巨匠の域に達しつつある美術家ジャン=ミシェル・オトニエルとのコラボレーション作品です。

貧乏学生だった頃、ディプティックの本店で寝室用のキャンドルを買うことが、唯一の贅沢だったという彼にとっても〝形として残らない芸術〟を生み出す貴重な機会となりました。

ジボダン社のルイーズ・ターナーの協力により調香された作品です。

ジャン=ミシェル・オトニエル(1964-)とは、パリを拠点に活動する現代美術家です。1993年にムラーノガラスを用いた作品を発表して以来、ガラス玉をアートに変えた現代アートを代表する美術家としてとても著名な人です。

日本においては、六本木ヒルズ内の毛利庭園にある「Kin no Kokoro」(ハートを象ったゴールドのガラス玉の彫刻)や、シャネル銀座店3階の吹き抜け部分に設置されたオブジェなども製作しています。

©LOUIS VUITTON

©LOUIS VUITTON

2020年10月にルイ・ヴィトンが6人の著名な美術家による「アーティーカプシーヌ コレクション」を発表した時、オトニエルもそのうちの一人として、メゾンのアイコニックなバッグ「カプシーヌ」を再解釈しました。

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モチーフになった『ルーブルのバラ』とは?


私は常に全感覚を刺激する作品を制作することを心がけてきました――例えば舐めたり触ったりしたい欲求や〈緊縛美〉を呼び起こす形状です。

また、観る者の視覚と戯れる鏡面ガラスの魅力も、ひとつの罠として機能しています。なぜならば、見る者は目の前にある〈結び目〉の立体作品に自らの反射を観ることにより、自身の想像力を解放できるからです。

この官能的な花々には目に見える以上のものがあり、ボードレールの『悪の華』のように、魅力的であると同時に危険でもあるのです。〈文化的な自然〉と呼ぶこともできるでしょう。

ジャン=ミシェル・オトニエル

イオ・ミン・ペイによるルーヴル美術館のピラミッド建設30周年を記念して、2019年にオトニエルによって製作された『ルーブルのバラ(Rose du Louvre)』からインスパイアされたのがこの香りです。

©Diptyque

この『ルーブルのバラ』という6枚の絵は、ルーブル美術館を象徴する花を描いたものでした。

それは、少年時代に祖母の家で植物標本を作っていたオトニエルが、パリで学費を稼ぐためにルーブルで警備員として夜勤をしていた頃に思いを馳せながら、休館日のルーヴルの中を18ヶ月かけて歩き回り、探し出した一枚の絵がヒントになりました(彼の唯一の趣味はガーデニング)。

その絵とは、ルーベンスの「マリー・ド・メディシスとアンリ4世の代理結婚式」(1622-25)でした。この絵の中の片隅に描かれた段差に落ちて散らばった小さな深紅のバラ。フランスとイタリアの結婚を象徴する壮大な絵画の中で、誓いの言葉を交わしている最中に、新しい妃の足元にこぼれ落ちたこのバラの花にルーベンスは何を託したのでしょうか?

深紅のバラの花は、愛と権力と情熱のシンボルであるとともに、妃がたどるその後の過酷な運命を暗示するものにもなっています(夫のアンリ4世は後に暗殺される)。そういった光と闇を感じさせる神秘的なバラこそルーブルを象徴するものだとオトニエルは考えたのでした。

そして、彼は黒のインクで『ルーブルのバラ』という6枚の絵を描いたのでした。彼はルーベンスのバラのエネルギーを昇華させるために、赤ではなくあえて黒を用いたのでした。

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「ローズ オトニエル」とは


2012年にオトニエルの展覧会がパリのウジェーヌ・ドラクロワ美術館で開催された際、著名なバラの栽培家であるクリスチャン・ハナクが訪問し、オトニエルのアートを褒め称え、自分が栽培した新種のバラの写真の中からひとつを選んで彼の名を冠したいと提案したのでした。

そして、このとき、オトニエルが選んだのが、華やかなバラではなく、道端で見かけるようなイヌバラとよく似た花びらの少ないシンプルなバラでした。

この野生種とティーローズ種を交雑して生み出された新種のバラは「ローズ オトニエル」と命名されました。この香りには、このバラが使用されています。

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ルーブル美術館を象徴する花=スパイシーローズの香り

ボトルのバックシルエット ©Diptyque

©Diptyque

ベルガモットの香りに乗り、朝露を含んだ目覚めたばかりのフレッシュなグリーンローズの芳香からこの香りははじまります。すぐに挽きたての生き生きしたブラックペッパーが加わり、力強くローズは開花してゆきます。

大地を思わせるベチバーのアーシィーな香りが混じり合う中、ローズは「ローズ オトニエル」の感情を揺さぶるようなスパイシーローズへと昇華してゆきます。ここには、中東のスパイシーローズの香りに欠かせないウードは一切存在しません。

逆に涼しげなアキガラウッド(パチョリから土っぽさを取り除いた香料)とアンブレットシードが、ローズにみずみずしい生命力を加えてゆきます。

オトニエル自身が、香りの中からローズを探すようなローズの香りは望まないと言う意見を反映したローズを主体とした香りです。つまりはスパイスもウッドも決してティーローズを邪魔しないように配されています。

6連作である『ルーブルのバラ』のうちの1枚がボトルのラベルに描かれています。そして、緑がかった黄色の液体の色味の美しさを損なわないように、ボトルはきわめてシンプルな透明なボトルになっています。

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香水データ

香水名:オトニエル ロザ
原名:Othoniel Rosa
種類:オード・トワレ
ブランド:ディプティック
調香師:ルイーズ・ターナー
発表年:2020年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/23,430円


トップノート:マダガスカル産ブラックペッパー
ミドルノート:ローズ
ラストノート:ベチバー、アキガラウッド、アンブレット