日本橋
原名:Nihombashi
種類:オード・パルファム
ブランド:破天荒
調香師:清水 篤
発表年:2026年
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/23,650円
公式ホームページ:破天荒

あなたの中の「江戸」が目覚める香り

©株式会社キャライノベイト

『東海道五拾三次 日本橋 朝之景』歌川広重、1833-34年。
シトラスの朝光から始まり、霧と白い霞が広がる日本橋の情景を呼び起こす香り
江戸の始まりを告げる場所、日本橋。
歌川広重が描いた《日本橋 朝之景》に漂う、清澄で静かな空気感と朝日の黄金感を香りで表現しました。公式サイトより
日本文化や日本の魅力を、香りを通じて世界へ発信するキャライノベイト(青山フラワーマーケットなどの人気フレグランスも創造しています)が、満を持して2025年4月14日に発表した国産フレグランス・ブランド『破天荒』。
日本人には「破天荒な性格」と誤用されやすいこの言葉の真の意味は「前人のなしえなかったことを初めてすること。また、そのさま。前代未聞。未曾有」です。
日本人の琴線に響く前人未到の香りを創造するために、日本の伝統文化を継承しながら、現代の価値観を未来へ受け継いでゆく〝新たな日本らしさ〟を表現する『破天荒』の〝お披露目フレグランス〟として、浮世絵を題材に『和の美学』を香りに投影した五作品が、総合ディレクター兼調香師の清水 篤氏により発表されました。
2026年2月11日より、日本橋三越本店で開催されたサロン ド パルファン(2月17日まで)から先行販売された、限定フレグランス「日本橋」は、歌川広重の浮世絵『東海道五拾三次 日本橋 朝之景』からインスピレーションを受け、東海道の出発点であり、江戸時代の町人文化の中心地である(魚市場も有名)、下町を代表するこの町で生きる江戸っ子気質を投影した香りです。
江戸時代の朝の光と、お寺の朝が、ひとまとめに感じられる香り

©株式会社キャライノベイト
江戸の町人文化のはじまり、江戸に生きる市井の人々の一日のはじまり、とてもシャープなユーカリとレモンの香りが素肌の上に広がり、朝日に染め上げられていくような清々しさからはじまります。
とても不思議なのは、爽快でありながら、ガヤガヤしたかんじがなく、とても心が落ち着くような、深呼吸したくなる、清らかなグリーンイエローの輝きに満たされていくようです。
すぐにどこからともなく朝のお寺さんから流れてきた厳かなお線香=フランキンセンスの香りが、心を整え、嗅覚に集中力を与えてくれるように広がってゆきます。そして穏やかな太陽の光に温められていくように、ミモザの黄色い花の煌めきが溶け込んでゆきます。
とても心安らぐ香りです。スパイシーなクローブが、常に心に活力を与えてくれるような清涼感を与えてくれています。やがて広がるドライな木の香りが、ムスクの風に乗り、まるで日本橋を渡っているような、時代を超えた、日本の朝の空気感で包み込んでくれます。
まさに、日本の朝を祝福するような香りと言えます。
「日本橋」の魅力を調香師・清水 篤さんに聞いてみました。

清水 篤さん © 株式会社キャライノベイト
Q.「日本橋」という場所は、東海道など五街道の起点で、百貨店文化のはじまりですよね。あらゆる意味において〝はじまりの香り〟というイメージでこの香りを調香されたのでしょうか?
A.そうですね。日本橋を考えた時に、私の中にあったのは、何か一つの「はじまり」というより、いろいろなものが同時に動き出す場所というイメージでした。
五街道の起点として、ここから旅立つ人がいる。商いの街として、店を開け、仕事を始める人がいる。そして朝になれば、魚河岸をはじめ街で暮らす人々の一日が始まっていく。広重の『東海道五拾三次 日本橋 朝之景』にも、まさにそうした日本橋の朝が描かれています。
人が動き、物が動き、商いが始まり、旅も始まる。日本橋は、さまざまな「はじまり」が重なる場所なんだと思います。だから、この香りは「朝」の香りにしました。
Q.ミドルノートの、フランキンセンス、ミモザ、クローブ、バンブーの4つの香りの組み合わせがとても珍しいと感じました。でありながら、トップのアロマティックなシトラスの流れから、まったく違和感なく、フレッシュな生き生きとした香りの広がりを感じることが出来、感動しました。このミドルノートについてお話をお聞かせ願えますでしょうか?
A.この4つを珍しい組み合わせにしようと考えたというより、日本橋の朝の空気を香りとして組み立てていった結果、この組み合わせになりました。朝の少し白く澄んだような空気をフランキンセンスでつくり、そこにミモザの柔らかな明るさや、バンブーの青さを重ねています。
クローブには、少し違う役割があります。浮世絵の人物を見ていると、髪を結った人々の姿がありますよね。そこから、鬢付け油のような日本的なキャラクター香をどこかに忍ばせたいと思い、クローブを使いました。朝の空気をそのまま綺麗に描くだけではなく、その朝の中に、江戸の人々が実際に暮らしている気配を入れたかった。
フランキンセンス、ミモザ、バンブーがつくる清々しい朝の中に、クローブがほんの少し人の存在を感じさせる。そこが、このミドルのポイントだと思っています。
Q.ここで使われているシダーウッドがとても印象的なのですが、清水さんの中で、『東海道五拾三次 日本橋 朝之景』の浮世絵に登場する、木の門、日本橋、人々の生活の営みの中で使われている道具を作る木々を投影しているのでしょうか?
A.シダーウッドには、木造の日本橋そのものの存在感と、香り全体を支える土台、そして日本橋が持つ格式を重ねています。
この香りは「朝」を描いていますが、ただ軽やかで爽やかな朝にはしたくありませんでした。日本橋には、長い歴史の中で人や商いを受け止めてきた街としての重みがあります。橋や門をはじめ、当時の街には木が当たり前のように存在していて、その木の質感が人々の日常を支えていた。
香りの中でもシダーウッドを土台に置くことで、トップやミドルの朝の清々しさの下に、長い時間を積み重ねてきた日本橋の揺るがない部分を残したかったんです。爽やかな朝の香りでありながら、どこか背筋が伸びるような感覚がある。その格式を支えているのが、シダーウッドだと思っています。
Q.日本文化の魅力を、香りを通して素肌に伝えて下さる清水さんにずっとお聞きしたかったことがあります。私はフランキンセンスの香りが大好きなのですが、清水さんが愛しておられるフランキンセンスの香水、または人生のある時期、愛したフランキンセンスの香水などございますでしょうか?
A.特定のフランキンセンスの香水というより、私はフランキンセンスという香りそのものが好きなんだと思います。最初に香りを嗅いだ時から惹かれたことは、よく覚えています。
私の中では、フランキンセンスは白い霧のような香りなんです。煙のようでもあるけれど重たくなく、白い霧が静かに広がって、周りの空気まで少し変えていくような感覚があります。なぜ好きなのかを理屈で考えて選んだ香りではなく、嗅いだ瞬間に「この香りが好きだ」と感じた。
調香をしていると、素材によって自分との距離のようなものを感じることがありますが、フランキンセンスは、私にとって自然と自分の感覚に馴染む、相性の良い香りなんだと思っています。だから日本橋でも、朝の空気を表現しようとした時に、自然とフランキンセンスを選んでいました。
2種の香りを重ねて、物語をひらく「聞き重ね」
日本の伝統芸道・香道では、香りを「嗅ぐ」のではなく「聞く」もの──。『破天荒』では、香道の文化にならい、2種の香りを重ねて、物語をひらく「聞き重ね」が提案されています。
それぞれの「聞き重ね」について総合ディレクター兼調香師の清水 篤さんに質問させて頂きました。
①『潮霞(しおがすみ)』日本橋 1プッシュ × 磯波 1プッシュ

©株式会社キャライノベイト
日本橋~品川~海へ続く“水の道”の情景を香りで再現
Q.なぜ「日本橋」と「磯波」を重ねようと思われたのでしょうか?
A.日本橋を考える時、どうしても「橋」や「街」に目が行きますが、実際に日本橋川を船で巡った時に、水から見る日本橋はまったく違う表情をしていると感じたんです。川沿いには江戸城の石垣が残っていて、石には当時の藩が刻んだ印も残っている。水位の変化によって残された痕跡も見える。
普段、街を歩いているだけでは気づかないものが、水の上から見ると現れてくるんです。「磯波」は日本的な海や水の情景を描いた香りです。
日本橋の朝に磯波を重ねることで、今の東京の中に流れ続けている水と、その水が見てきた長い時間まで聞いてみたいと思いました。街ではなく、水から日本橋を見てみる。そこから生まれた聞き重ねです。
Q.『潮霞』という名前には、どのような意味が込められていますか?
A.朝の日本橋川に、薄く霞がかかっているような情景をイメージしています。船に乗って川を進んでいくと、現在のビルの間に突然、昔の石垣が現れる。今と江戸が、同じ水辺に存在しているんです。霞というのは面白くて、すべてを隠してしまうわけではない。
見えているけれど、少しだけ輪郭を曖昧にする。そうすると、目の前にある石垣が、現在のものなのか、江戸の情景を見ているのか、一瞬分からなくなるような感覚がある。水の上に、昔の日本橋が薄く浮かび上がってくる。そんな時間を『潮霞』と名付けました。
Q.それぞれを単体で香った場合と、どのように印象が変わりますか?
A.「日本橋」はフランキンセンスの白い朝の空気や、木の橋を思わせるシダー、鬢付け油を連想させるクローブなどを使い、街が動き始める朝を描いています。「磯波」は、アッサムティーなどを重ねた、日本的な水の情景を持つ香りです。
二つを聞き重ねると、日本橋の朝に水の気配が入り、街の奥に隠れていた歴史が少しずつ見えてくる。今流れている川と、かつて流れていた時間が重なっていく。そんな日本橋の記憶が馨る聞き重ねです。
②『朝艶(あさつや)』日本橋 1プッシュ × 魁 1プッシュ

©株式会社キャライノベイト
最も「日本橋」の柔らかなミモザが活きる組合わせ
清潔感と艶感の絶妙なバランス
Q.なぜ「日本橋」と「魁」を重ねようと思われたのでしょうか?
A.日本橋には、朝が似合うと思っています。老舗の暖簾が掛かり、店を整え、人々が仕事を始める。日本橋には昔から商いを続けてきた人たちがいて、ただ物を売るのではなく、仕事そのものを美しく見せる文化があるように感じます。そこに「魁」の華やかさや艶を重ねてみました。
ここで表現したかった艶は、夜の色気とは少し違います。身支度を整え、道具を整え、店を整え、お客様を迎える。誰かに見せるためではなく、毎日きちんと仕事をすることによって自然と生まれてくる美しさ。朝の日本橋で働く人の姿にある艶。それを聞き重ねてみたかったんです。
Q.『朝艶』という名前には、どのような意味が込められていますか?
A.「艶」という言葉は、色気や華やかさを想像することが多いと思います。でも、日本橋で感じる艶はもう少し静かなものです。
老舗の暖簾、磨かれた道具、整えられた店先、きちんとした身なり。長く続けてきた仕事だからこそ、一つ一つの所作が自然と美しくなっていく。それも一つの「艶」だと思うんです。夜に生まれる艶ではなく、朝、仕事を始める人から生まれる艶。そこから『朝艶』と名付けました。
Q.それぞれを単体で香った場合と、どのように印象が変わりますか?
A.「日本橋」単体には、朝の澄んだ空気と、歴史を積み重ねてきた街の格式があります。「魁」は月下香を中心に、華やかさや人を惹きつける艶を持った香りです。
二つを重ねると、魁の艶が少し引き締まり、華やかさの中に凛とした佇まいが生まれます。派手に見せるための美しさではなく、積み重ねてきた仕事や所作から自然と現れる美しさ。美しい仕事ぶりが馨る聞き重ねなんです。
③『朝影(あさかげ)』日本橋 1プッシュ × おどろおどろ 1プッシュ

©株式会社キャライノベイト
Clove Leafの微熱とメントールの冷気が美しく調和
Q.なぜ「日本橋」と「おどろおどろ」を重ねようと思われたのでしょうか?
A.今の日本橋を歩いていると、整備された街並みや新しい建物が目に入ります。でも、その場所では江戸の頃から何百年も、人が働き、暮らし、旅立ってきた。五街道の起点でもあり、商いの中心でもあった場所です。当然そこには、今はもう見ることのできない無数の人の時間があります。
「おどろおどろ」を重ねたのは、怖い日本橋を作りたかったからではなく、今見えている街の下に、見えない時間が幾重にも存在していることを香りにしたかったからです。朝になれば、また新しい一日が始まる。でもその朝は、何百年もの朝の上にある。その感覚を聞いてみたいと思いました。
Q.『朝影』という名前には、どのような意味が込められていますか?
A.朝は普通、光のイメージですよね。でも、光が差せば必ず影も生まれます。日本橋の新しい朝の中にも、昔ここにいた人たちの姿や、商い、旅、暮らしの痕跡が、影のように残っている気がするんです。もちろん、その人たちを見ることはできません。
それでも、橋があり、道があり、老舗があり、文化が残っている。今の日本橋を形作っているものの中には、見えない人たちの時間がある。朝の光の中に、その影まで感じてみる。そこから『朝影』と名付けました。
Q.それぞれを単体で香った場合と、どのように印象が変わりますか?
A.「日本橋」は、新しい一日が始まる朝の香りです。一方の「おどろおどろ」には、冷たさや違和感、目には見えないものの気配があります。
この二つを重ねると、日本橋の清らかな朝の奥に、少しだけ影が現れます。ただ、その影は怪異そのものではありません。今日この街を歩く人の後ろに、かつて同じ場所を歩いた無数の人たちの時間が重なっているような感覚です。
新しい朝は、何もないところから始まるわけではない。昨日があり、江戸があり、そのさらに前から続く時間の上に、今日の朝がある。『朝影』は、そんな歴史の積み重ねが馨る聞き重ねです。
香水データ
香水名:日本橋
原名:Nihombashi
種類:オード・パルファム
ブランド:破天荒
調香師:清水 篤
発表年:2026年
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/23,650円
公式ホームページ:破天荒

トップノート:檸檬(レモン)、桉樹(ユーカリプタス)
ミドルノート:乳香(フランキンセンス)、銀葉金合歓(ミモザ)、丁子(クローブ)、竹(バンブー)
ラストノート:鉛筆柏槇(シダーウッド)、カスカスガヤ(ベチバー)、龍涎香(アンバー)
