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【ジバンシィ】ダリア ノワール(フランソワ・ドゥマシー)

ジバンシィ
©Givenchy Beauty
ジバンシィ
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ダリア ノワール

原名:Dahlia Noir
種類:オード・パルファム
ブランド:ジバンシィ
調香師:フランソワ・ドゥマシー
発表年:2011年
対象性別:女性
価格:30ml/9,450円、50ml/12,075円、75ml/14,175円

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リカルド・ティッシ朝ジバンシィのファースト・フレグランス

©Givenchy Beauty

ダリア ノワール」のプロジェクトをスタートし、フランソワ・ドゥマシーと初めて会ったときから、私は彼にフォーミュラではなく感情と嗅覚の記憶について話しました。母や姉たちの化粧品の匂いを覚えています。それは独特のパウダリーローズの香りでした。これが、私たちがローズのノートから始まり、アイリスとミモザを豊かに加えた「ダリア ノワール」を構築した理由です。そこにサンダルウッドやパチョリなどの洗練されたウッディノートを加え、香りに現代的なエッジを与えました。

リカルド・ティッシ

1952年2月2日に僅か24歳で自分自身のメゾンを創立したユベール・ド・ジバンシィが引退したのは1995年のことでした。その後、ジョン・ガリアーノが後任デザイナーに抜擢されるも、1996年にディオールのデザイナーに就任し、アレキサンダー・マックイーンがジバンシィを引き継ぐことになりました。

2001年10月にマックイーンが主任デザイナーを更迭された後、しばしの時を経て、2005年(2005-06AW)に、リカルド・ティッシが新たにクリエイティブ・ディレクターに就任しました。そして2008年にワールドツアーでマドンナが着用し、ジバンシィ・バイ・リカルド・ティッシ旋風を巻き起こしている中、彼がはじめて創造したフレグランスがこの香りです。

2011年にクチュール・フレグランスとして発表された「ダリア ノワール」は、フランソワ・ドゥマシーにより調香されました。日本ではオード・トワレ版が発売された約2ヵ月後の2012年12月1日に発売されました。

抗しがたい破滅的な魅力を発散する、〝黒色のダリア〟という、ダリアには存在しないカラーの架空の花をイメージした香りです。男女を虜にするミステリアスな魔性の香りというかなり挑発的なテーマに挑んでいます。男と抱き合っているときに、うっとりとしている男の表情とは裏腹に、女の表情は冷めきっているという〝背筋の凍る〟瞬間を投影したような香りでもあります。

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この香りのミューズは、ブラック・ダリア事件の被害者。

エリザベス・ショート

エリザベス・ショート

ジェイムズ・エルロイの本に登場する「ブラック・ダリア」が、何よりもこの香りのミューズです。私の意見では、この物語は犯罪よりも情熱についてのものです。情熱が人々の心を頂点へと押し上げ、限界を超える思わぬ力を与えてくれます。感情が最高潮に達すると、情熱の影響下での行為につながる可能性があります。

リカルド・ティッシ

このフレグランスのイメージする女性像は、公式では〝危うさと優雅さ、神聖さと世俗性といったさまざまな2面性を持ち合わせたミステリアスな女性〟と表現されています。さらに、リカルドが語るように、ジェイムズ・エルロイが1987年に発表した小説『ブラック・ダリア』と、実際の「ブラック・ダリア事件」から大いなる影響を受けています。

ブラック・ダリア事件とは、1947年1月15日にロサンゼルスのレイマート・パークで発見された、胴体がマネキンのように真っ二つに分断された異様な他殺体が発見された事件のことを指します。その死体は当時マスコミに曝され、口は悪魔が笑みを浮かべているかのように左右に裂かれており、世界中に衝撃を与えました。

その被害者の名を、エリザベス・ショート(当時22歳)と申します。彼女は漆黒の髪にいつも黒ずくめのドレス姿で、〝ブラック・ダリア〟と呼ばれ、主に兵士相手に、娼婦のような日々を過ごしていました。しかし、もともとは映画スターを夢見てハリウッドに出て来た女優の卵でした。

さて話を〝ダリア・ノワール(英語ではブラック・ダリア)〟に戻しましょう。

リカルド・ティッシがデザインしたブラック・シフォン・ドレスを着たマリアカルラ・ボスコーノ(1980-)がキャンペーン・モデルをつとめたキャンペーン・フィルムは、ファビアン・バロンによるものでした。

それはマリアカルラが、ブラック・ダリアが花開く様子を、どこか悪夢のような妖艶さと、梶芽衣子さそり的なブラック・マジック・パワーを発散させ、体現しています。キャンペーンフォトは、マート・アラス&マーカス・ピゴットによるものです。

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ピンクの液体が、黒に染まる瞬間を、あなたの肉体で再現させる香り

©Givenchy Beauty

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自然界には存在しない全く想像上の花、ブラック・ダリアは抽象的な花で、非常にゴシック的ですが、非常に風変わりでロマンチックでもあります。私たちは、力強いトップノートとそれに続くパウダリーな柔らかさによって、力強さと脆さの間の緊張感を表現しました。

リカルド・ティッシ

ピンクの液体が、黒に染まる瞬間を、あなたの肉体で再現させる香り、それが「ダリアノワール」。まず手はじめに、あなた自身の中に潜む、もっとも美しいピンクを引き出すように、トロピカルジュースのようなジューシーなオレンジが注ぎ込まれたホワイトミモザが弾ける中、フレッシュなミモザが彷徨い込む感覚からはじまります。

すぐにエレガントなアイリスの香りが広がる中、ミステリアスなパチョリに愛でられたジャミーなブラックローズが、独特な透明感と甘やかさですべての香りを魅了し、ひとまとめになってゆくのです。スローでメロウな、何かに浸食されていくような抗し難い、うっとりする甘さに包まれていく広がりを持つ香り…

やがて、魔性のシプレの甘辛さを、バニラとサンダルウッド、トンカビーン、オークモスがふんわりと解き放ち、新鮮なピンクは艶やかでクリーミーなブラックへと幸福なる闇落ちを果たしてゆくのです。どこまでもキラキラと輝くパウダリーなミモザとアイリスの余韻が〝魔性の黒いドレスの女〟というよりも、やわらかなフェミニンな女性像を感じさせます。

太陽のように煌めくミモザからはじまり、クールビューティなアイリス(イリスバター)を経て、たおやかなローズに優しく満たされるという、クラシカルな流れを、見事にモダンなスローフローラルの恵みに変えています。まるで一緒に咲いているような、やさしさとおおらかさに包まれる、名前とは全く逆のイメージを与えてくれる香りです。

ボトル・デザインは、クラシックにあくまでもシンプルなエレガンスに満ちたデザインです。しかし、表面からはフレグランス名を確認できず、キャップの内側にその名が、密かに刻まれています。ブラックのキャップが、オード・パルファムで、ピンクのキャップが、オード・トワレです。そして、それぞれが全く違う香りです。

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2012年に発売されたオーデトワレ版

©Givenchy Beauty

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2012年2月に発売されたオード・トワレ版=別名「ピンク・ダリア」は、ジューシーなオレンジが注ぎ込まれたホワイトミモザが弾ける中、レモンとピーチが注ぎ込まれ、キラキラと溶け合う感覚を素肌で感じるようにしてはじまります。

すぐに咲き誇るローズが、パウダリーなムスクの風に乗って到来します。ピーチと抜群の相性を魅せるムスキーローズに素肌が洗われていくように香り立ちます。日本では「ダリアノワール」は、2012年10月5日にこの香りから発売されました。

トップノート:セドラ、マンダリン・オレンジ、ピーチ
ミドルノート:ピンクペッパー、ローズ、ヘディオン
ラストノート:サンダルウッド、シダー、アンバー、バニラ、ムスク

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2013年に発売された「ダリア ノワール ロー」

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2013年春に発売された「ダリア ノワール ロー」は、リフレッシュ・ヴァージョン、もしくはユニセックス・ヴァージョンでした。

爽やかなグリーンの風に乗って、ネロリとシトラスからはじまる別名「グリーン・ダリア」は、すぐに柔らかなムスキーローズとピオニーが甘く香りを広がらせてゆきます。

まるでオーデコロンのように涼しげな「ロー=水」は、やがてパチョリがクリーミーに溶け込み、温かな余韻で包み込んでくれます。すべてフランソワ・ドゥマシーによる調香ですが、それぞれの香りにほとんど共通点はありません。

トップノート:ネロリ、グレープフルーツ、セドラ、グリーンノート
ミドルノート:ローズ、ピオニー
ラストノート:パチョリ、シダー、ムスク、アンバーウッド

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香水データ

香水名:ダリア ノワール
原名:Dahlia Noir
種類:オード・パルファム
ブランド:ジバンシィ
調香師:フランソワ・ドゥマシー
発表年:2011年
対象性別:女性
価格:30ml/9,450円、50ml/12,075円、75ml/14,175円


トップノート:マンダリン・オレンジ、ピンク・ペッパー、ミモザ、べルガモット
ミドルノート:アイリス、パチョリ、ローズ
ラストノート:サンダルウッド、トンカビーン、バニラ、オークモス