黒水仙=ナルシス・ノワールを愛する女
高峰秀子様が演じる銀座の雇われママ圭子が愛用している香水は、「黒水仙」=キャロンのナルシス ノワールです。1911年にフランスで発売されたこの香りは、戦後日本で、和服を着た上流婦人に愛された香りの一つでした。ナルシス=水仙の花言葉は自己愛。そして、地球上に存在しない黒い水仙。
存在しないものを求めるのが、銀座の女たちの本質であるとでも言わんばかりのこの香水のチョイス。そして、圭子は、この香りを関根(加東大介)からプレゼントされることによって、自分の中の約束事を放棄してしまうのでした。

心が弱り切っていた時に、「ナルシス ノワール」をプレゼントされ、よろめく圭子。

プレゼントされた「ナルシス ノワール」を香り、ときめいている圭子。

キャロンの黒水仙=ナルシス・ノワール
昭和の銀座のママ・ルック4
唐草模様の着物
- 唐草模様の着物
- 光沢のある帯




成瀬巳喜男監督と高峰秀子様とスタッフたち。
矢代圭子語録

店ではね。パッと派手な物着たほうが、目立って得だってことは分かってても、そんな着物昼間は着れないし、どっちでも着れるように倹約してわざわざ地味に作ってんじゃない。
ナリが良くなくちゃいいお客がつかないわ!銀座の女はナリで勝負してんのよ!
銀座へ来るお客様はね。ぜいたくな雰囲気を味わいに来るのよ。私たちは、それを満足させてチップをもらってんのよ。身分不相応なアパートに住んだり車で通ったり、高い香水使ったりするのも、みんなそのためだわ。
誰が好き好んでバーへなんか勤めるもんですか!無理にお酒を飲んで体を壊す。男におもちゃ扱いされる。こんな商売勤めた日から一日だって楽しいと思ったことなんかないわよ。ここで寝てたって、請求書と集金の夢ばかり。惨めもいいとこよ!
昭和の銀座のママ・ルック5
戦う女の休息着
- しだれ桜の高級なちりめんの羽織
- 小花柄の着物

「昼のバーは化粧をしない女の素顔だ」



母親役の賀原夏子と秀子様は僅か3歳違いでした。
成瀬巳喜男の演出と黛敏郎の音楽

撮影中の成瀬巳喜男監督と高峰秀子様。
監督・成瀬巳喜男の演出に対して、高峰秀子様が『わたしの渡世日記』の中で的確な説明をしておられます。
そして本作の世界観をより洗練したものにしている要素として、黛敏郎によるテーマ曲の存在があります。ヴィブラフォンの響きが銀座のノーブルな雰囲気とマッチしており、しかも、秀子様の和装を引き立たせているところに、今見ても、斬新なジャジーな音楽と着物のマッチングの妙が見られます。
昭和の銀座のママ・ルック6
四角柄の着物
- ダークトーンに四角柄の着物
- シルバーの草柄の帯
- へちま衿のコート



昭和の銀座のママ・ルック7
ボーダー着物
- ルック3よりは細めのボーダー模様の着物
- 黒地に大花帯


昭和の銀座のママ・ルック8
キラキラした着物
- ペールカラーに花をプリントしたキラキラした着物
- 黒の大花柄の帯

高度経済成長の中、接待費=会社のお金で毎晩のように銀座通いが出来る社用族が本作に登場する。

高峰秀子様とダンディな森雅之。
1960年、東京オリンピックを4年後に控えた銀座。


約65年前の銀座。

後にボンドガールになる、デビューしたばかりの若林映子様も出演しています。
「私は真冬のような厳しい試練を受けた。しかし、歩道の並木も冷たい風を受けながら新しい芽を育てていく。私もそれに負けないように生きていかなければならない。風が当たれば当たるほど・・・」
最も人畜無害そうな男が結婚詐欺師で、エリートの大手銀行の支店長が、見掛け倒しの凡庸なつまらない男に過ぎないという男運のなさの波状攻撃の中、張り詰めていた糸が切れ、強くなったようでありながら、実は弱くなっている中年女の更なる逆風を予感させるラスト。
それにしても本当に笑顔が綺麗な人です。高峰秀子様は。
作品データ
作品名:女が階段を上る時 (1960)
監督:成瀬巳喜男
衣装:高峰秀子
出演者:高峰秀子/森雅之/仲代達矢/淡路恵子/団令子
