ミッシェル・リーという天使
ただこの作品のためだけに存在した女優と言い切ってもいい程の存在感を示したミッシェル・リー。しかし、僅かこの一作で彼女は、21世紀のファッション・シーンに影響を与え続ける不動のファッション・アイコンとなりました。
そう、恐らくミッシェル・リーという女性は、この作品のためだけに舞い降りてきた天使なのかもしれない。
女エージェント スタイル11
堕落天使ワンピース
- 赤のパテントレザーワンピース
- 黒のパンスト
女は最後に気づく。パートナーになるには、感情をこめない方がいい。彼女は自分自身に約束する。これからは、二度とパートナーのためにベッドメイクもしないし、ゴミの中から自分の楽しみを探そうなどととも思わないと、そして、彼女は自分自身に約束する。これから、すべて変わるのだと。
『ウォン・カーウァイ』ジミー・ンガイ
「すぐ着いて降りるのは分かっていたけど、今のこの暖かさは永遠」
最後の場面で、女はバイクの後ろに座り、淡々と、束の間のぬくもりに浸るーそれは矛盾にみちた道のりだ。行く先はあまり重要ではない。冬が長いか短いか、それもたいして重要とはいえない。冬はいやおうなく通り過ぎていくものだ。私たちが暗闇の後で夜明けを迎えるように。トンネルの果てには出口がもたらされるように。重要なのは、今の感情をあっさりと収めてしまうことだ。ぐっすりと眠ること、あるいは、休んで英気を養うこと。枯れきった木のように冷静になること。自分を守ること。あるいはせめて、そんなわけの分からない傷は負わないと、自分自身に約束すること。
基本的に、女は最後に、これまでしてきたことはみんな間違いだったと自分に告げているのだ。彼女は自分が155週間を費やし、1人で作り上げてきたパートナーが、一変したのを見て、このパートナーを一人で葬り去る計画を立てる。パートナーをなくした女は、もう誰でもない。
『ウォン・カーウァイ』ジミー・ンガイ
幻のラストシーン?それともオープニングシーン?
ラストシーンのその後が実は撮影されていました。それはバイクに乗せた女エージェントをガソリンスタンドで降ろし、そして、そのまま別れるのかと思いきや、熱いキスを交わす二人。そして、二人は別れるというシーンでした。
実はこのシーンは、一番最初に撮られたシーンであり、ウォン・カーウァイの構想として、麻薬中毒の女とモウが出会い、恋人になるというオープニングシーンとして撮影されたものでした。しかし、「二人だとこれ以上の化学反応は生み出されないな」と感じ、物語は全て変わったのでした。
作品データ
作品名:天使の涙 Fallen Angels 堕落天使 (1995)
監督:ウォン・カーウァイ
衣装:ウィリアム・チャン
出演者:ミッシェル・リー/カレン・モク/チャーリー・ヤン/レオン・ライ/金城武