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【ランコム】ラヴィエベル(オリヴィエ・ポルジュ/ドミニク・ロピオン/アン・フリッポ)

ランコム
©LANCOME
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ラヴィエベル

原名:La Vie Est Belle
種類:オード・パルファム
ブランド:ランコム
調香師:オリヴィエ・ポルジュ、ドミニク・ロピオン、アン・フリッポ
発表年:2012年
対象性別:女性
価格:30ml/10,230円、50ml/15,510円
公式ホームページ:ランコム

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ランコムを象徴するフレグランスの誕生

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何百万人もの女性や男性の心に響く感情を呼び起こし、時を超えて愛される香り。ロレアルでは、この感情の探求をすべての高級ブランドのフレグランス制作の中心に据えています。

さらに素晴らしいフレグランスの魔法の秘密は、驚きと親しみやすさ、新しさと安心感の微妙なバランスにあると私は言いたい。例えば、ランコムの「ラヴィエベル」は初のアイリスグルマンで、アイリスの洗練されたフローラルなパウダリーな特徴とグルマンアコードが思いがけず融合している。

カリーヌ・レブレ=ルルー

フランソワ・コティのために香水顧問として数々のコティの名香を手がけてきたアルマン・ブティジャンが、1935年に、フレグランス・ブランドとして創設したランコムの歴史は、5つの香水から始まりました。そのブランド名の由来は、フランス中部のアンドル県にあるランコズム城の傍らに咲いていた野バラに由来します。

1964年にロレアル社に買収され、本格的に世界進出を果たしていく過程で、1967年、世界初の携帯マスカラ「ランコマティック」を発売し大ヒットさせ、70年代から80年代にかけて、メイクアップとスキンケアの部門で世界の頂点に駆け上るのでした(1978年には日本上陸を果たす)。

そして1978年に「マジー・ノワール」、1990年に「トレゾァ」、2000年に「ミラク」とほぼ10年周期で空前のヒット作を生み出してきたランコムが、2012年5月2日にヴィラ・エフルッシ・ド・ ロスチャイルドで盛大に発表した香りが「ラヴィエベル」でした。

この香りの誕生の前に『プラダを着た悪魔』(2006)『ゲット スマート』(2008)『レイチェルの結婚』(2008)で脂が乗っていたアメリカの映画女優のアン・ハサウェイ(1982-)をミューズに、ジャック・キャヴァリエオリヴィエ・クレスプというゴールデン・コンビで生み出した「マニフィーク」の空前の大失敗がありました。

この失敗により、新社長に41歳のスー・Y・ナビ(1968-、1993年にランコムに入社、現コティのCEO)が就任し、5年間の在職期間中に「ラヴィエベル」の大成功により、傾きつつあったランコムを見事復興させたのでした。

フレグランス製作開発ディレクターのカリーヌ・レブレ=ルルー(元ジボダンで1999年にロレアルに入社)とステファン・ドメゾン(元ゲランでシニアフレグランス開発マネージャー)が主導となり「ラヴィエベル」のプロジェクトはスタートしました。

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3人の調香師がバラバラに調香し、パチョリでひとつにした香り。

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この香りの誕生前夜、世界は、2008年9月15日からはじまったリーマン・ショックの真っ只中でした。だからこそ二人のクリエイティブ・ディレクターは、楽観主義と生きる喜びが必要とされる時期であると考えていました。それは丁度、1929年からはじまる世界恐慌の中作られたチャールズ・チャップリンの『モダン・タイムズ』(1936)のラストシーンで流れる「スマイル」の精神と共通するものがあります。

つまり世界中が『昭和枯れすゝき』と似たような閉塞感に包まれている中、全く逆の精神を生み出していこうと考えたのでした。

ランコムの〝新時代の幕開け〟を象徴する「ラヴィエベル」とは、フランス語で〝人生は美しい〟を意味します。シャネルの4代目調香師になる寸前のオリヴィエ・ポルジュドミニク・ロピオンアン・フリッポという3人の人気調香師により調香されました。3年間を費やし、5521の試作品を経て、63種類の香料を使用して生み出されました。

この香りの調香のユニークさは、3人のIFFの調香師が、それぞれが得意とする3つのノートを作り上げ、最後にインドネシア産のパチョリにより、ひとまとめにしたところにあります。

オリヴィエ・ポルジュは、アイリス・ノートを完成させ、ドミニク・ロピオンは、プラリネ、バニラ、トンカビーン、ブラックカラント、洋ナシによるグルマン・ノートを完成させました。そして、アン・フリッポは、ジャスミン・サンバック・アブソリュートとオレンジブロッサム・アブソリュートによるフローラル・ノートを担当したのでした。

アメリカとフランスでは、とてつもなく売れているフレグランスです(アメリカでは、2017年に、2番目に売れました)。

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‟おいしい”フレグランス=嗅覚に‟微笑み”を与えてくれる香り

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‟おいしい”フレグランスを目指しました、ラヴィエベルはまさに嗅覚に‟微笑み”を与えてくれるような香りです。

アン・フィリポ

どんなに冷たい心さえも、溶かしてしまい、温かい微笑みで満たしていく、〝あなたを笑顔にし、幸せを輝かせる〟歴史上初めてのアイリス・グルマンと、ランコムによりアナウンスされた(実際はゲランの「アイリス ガナッシュ」)この香りは、透き通るようなピリっとしたブラックカラントと洋ナシの弾けるクリスタルシャワーからはじまります。

まるで心に残る哀しみを洗い流してくれる明るい雨のようです。すぐに軽快なカクテルのミモザも注ぎ込まれてゆきます。と同時に、清流のようなアイリス(フランス産イリスパリダ・コンクリート)と暖流のようなプラリネ(綿菓子)が素肌に流れ込んでゆくのです。バルサミックなトンカビーンも加わり、多くのことが一瞬で起こっているようです。

大地を揺らす雷鳴のような(鋭く苦いメタリック・ミンティな)パチョリが青い影のように揺らめいています。最初は背景にうっすらとアーシィーに、最後には閃光のようなものを甘さの中で解き放ち、あらゆる香りの間で乱反射してゆきます。

時を同じくして、フレッシュなオレンジ・ブロッサムとムーディーなジャスミンが、プラリネに注ぎ込まれたバニラと共に、ホワイトフローラルブーケとバニラ×キャラメリゼのハーモニーを素肌に広がらせ、エレガントなとろけ具合で匂い立たせてゆくのです。

やがてだんだんと、酔わせるフルーツ・カクテルと焦がされたキャラメルがひとまとめに溶け合い、滑らかなクリーミーさで身も心も温めてくれるのです。

2012年に作られたこの香りが、今もなお、特に西欧社会において絶大なる人気を誇る理由は、綿菓子を思わせるエチルマルトールを4%(ちなみに世界初のグルマンの香り「エンジェル」は0.1%)というかなりの高濃度で使用したことと、その爆発する甘さを、オレンジ・ブロッサムの花の甘さとピーチの果実の甘さ、更には少し酸味のあるパウダリーなアイリスのニュートラル感により、ヴォージュ(Vosges)のショコラを食べるような〝大人のグルマン〟へと昇華させたからです。

最後にこの香りについてこのようなたとえをしてみてもよろしいのではないでしょうか。それはスイーツビュッフェで一皿目を選択している心のトキメキからはじまり、だんだんと満たされ、最後の一口を食べる瞬間がドライダウンとしてずっとずぅ~っと続いていく、そんな〝大人のスイーツで作られた世界の住人〟になる香り。だからこそ夢のような香りではあるのですが、暑さには弱い香りとも言えるのです。

さらに最後にもう一つ、この香りは、女性を最も美しく見せることも、最も醜く見せることも出来るワードローブだということ。赤い口紅、スティレットヒール、リトルホワイトドレス(またはリトルブラックドレス)、ダイヤモンドのネックレス、そういったものと同じように、過ぎたるは猶及ばざるが如しなのです。ほんのちょっぴりで十分な香りなのです。

ヴィクター&ロルフの「フラワーボム」とよく比較される香りです。

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ジュリア・ロバーツのクリスタルの微笑み

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ボトル・デザインも秀逸です。1949年に発表された”クリスタルの微笑み”(ランコムの創設者アルマン・プティジャンが、アーティスティック ディレクターであるジョルジュ・デロムに創らせた) というハンドメイドで生み出されたボトルのデザインを、現代風の洗練された量産ボトルとして復刻したものです。

自由を象徴する羽のようなグレーのスカーフが加わったことでモダンなパリジェンヌの雰囲気が漂うものとなっています。ポシェ・デュ・クルヴァル社によって製造されています。

スプレーの作りにはかなりのこだわりが感じられ、とてもパフォーマンスの良いスプレー機構を備えています。

キャンペーン・モデルは、2010年よりランコムのミューズをつとめるジュリア・ロバーツです。そのキャンペーン・フィルムはとてもエレガントなのですが、如事にこのフレグランスが日常向きではないことを教えてくれています。

第一弾(2012年)は、ジュリアが主演した『白雪姫と鏡の女王』の監督ターセム・シンによるもの。そして、第二弾(2018年)は、今大人気のイケメン・フォトグラファー・アレクシー・ルボミルスキによって撮影されました。

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香水データ

香水名:ラヴィエベル
原名:La Vie Est Belle
種類:オード・パルファム
ブランド:ランコム
調香師:オリヴィエ・ポルジュ、ドミニク・ロピオン、アン・フリッポ
発表年:2012年
対象性別:女性
価格:30ml/10,230円、50ml/15,510円
公式ホームページ:ランコム


トップノート:ブラックカラント、洋ナシ
ミドルノート:フィレンツェ産アイリス、ジャスミン、チュニジア産オレンジ・ブロッサム
ラストノート:インドネシア産パチョリ、トンカビーン、バニラ、プラリネ