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ラヴィエルジュドゥフェール(鉄の百合)|中世の拷問器具『鉄の処女』+ジャンヌ・ダルクの香り

セルジュ・ルタンス
セルジュ・ルタンス
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ラヴィエルジュドゥフェール(鉄の百合)

原名:La Vierge de Fer
種類:オード・パルファム
ブランド:セルジュ・ルタンス
調香師:クリストファー・シェルドレイク
発表年:2013年
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/17,710円、100ml/26,950円

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拷問器具「鉄の処女=ニュルンベルクの鉄の処女」の香り?

©Serge Lutens

©Serge Lutens

セルジュ・ルタンスは、神秘的な「鉄の乙女」のイメージを私たちに提示し、棘の奥に隠された百合を見つけるために、自らの魂の奥底へと深く潜るよう誘います。

「鉄の宗教には乙女が必要で、乙女には百合が必要だった。」
「その匂いを嗅いだことがあるか?」
「ああ、あるよ。」
「それはどんな香りだ?」
「犯罪者の腕にある百合の紋章のように強烈な香りだ。」
「まさか?!」
「そして心の奥底では、肌に触れる苦行の衣のように、むずむずとした感覚を覚えます。まさに至高の拷問だ!」

セルジュ・ルタンス公式サイトより

セルジュ・ルタンスより2013年9月に発売された「ラヴィエルジュドゥフェール」は、邦題は「鉄の百合」となっているのですが、本当のフランス語の意味は「鉄の処女」であり、を英語に訳すと「アイアン・メイデン」になる強烈なネーミングの作品です。クリストファー・シェルドレイクにより調香されました。

2018年3月21日に「ブラック&ベージュ コレクション」が「コレクションノワール」に変更され組み込まれましたが、現在はパレ・ロワイヤル本店だけで取り扱われている「レフラコンドターブル」コレクションのひとつとなっています。

それはパブロ・ピカソの『アビニヨンの娘たち』(1907)からインスピレーションを得た香りです。このスペインのバルセロナにある娼窟の五人の売春婦たちを描いた作品が〝キュビスム革命〟の狼煙となった事でも有名な作品です。


「鉄の処女=ニュルンベルクの鉄の処女」とは、中世ヨーロッパの拷問器具です。ハンガリーの伯爵夫人バートリ・エルジェーベト(ルタンスは、彼女のことがとてもお気に入りらしい。「テュベルーズクリミネル」も彼女をテーマにした香り)が作らせたという伝説が有名です。

聖母マリアの形をした空洞の鉄製の人形の内部には、長い釘が仕掛けられています。

そして、もうひとつこの名前で連想させるのが、80年代のヘヴィメタル・バンド「アイアン・メイデン」です。

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真実は、ジャンヌ・ダルクの香りだった。

©Serge Lutens

「光あれ!そして闇はもはやない。光は闇の中で輝いている。闇は光に勝たなかった。見よ、わたしは盗人のように来る」とキリストは言った。確かに沈黙のうちに、そしておそらく、彼にしては靴を履いて。盗人がその称号にふさわしい存在となるためには、不在の所有者たちの見開かれた目の下で行動しなければならない。この場合、カインが後悔もなく見つめるあの微かな視線ではなく、何らかの形でアベルを共犯者にしてしまう別の視線のことである。

もしパリの人類博物館のフェティッシュ、偶像、お守りが20世紀と出会っていなければ、誰もが『アビニヨンの娘たち』というエロスの信じられないほどの嘲笑を見逃していただろう。「黒人たちは、我々を取り巻くすべてが敵であることを理解していた」と、魔術師ピカソは自身の絵筆に語った。

彼らのうちの一人でなければ、死によって生を決意した者が、誰が敢えて、この世界の性である、恐怖の牙を解き放つだろうか。それは我々の内臓から生まれた果実である以上、高みへと昇華されねばならない。そのためには、近親相姦を恐れず、我々はそれを抱擁するのだ。そうしてこそ、彼女は我々の最も美しい怪物たちを産み落とすだろう。こうして、疑念のせいで少し錆びついた私の足取りは、「鉄の乙女(La vierge de fer)」へと再び向かった。茨の中の百合へと。

発売された時のプレスリリース

この香りの百合は「アン リス」のそれよりも華やかです。「アン リス」はよりフレッシュで、実のところ、より百合らしい香りでした。百合の白さを前面に出していた。一方、こちらは、その陶酔的な側面を際立たせている。花粉が舞い散らず、雄しべと葯をそのまま残している百合。これは、再び我々に挑みかけるような百合なのだ。

セルジュ・ルタンス

〝鋼鉄の処女〟それは、血と百合と聖剣の香りだ!泡立つアルデハイドに洗われていくシャンパンのような、まるで冷たくなった鋼鉄の剣を歯で受け止めるメタリックな洋ナシと、咲きたての若くて鋭くフレッシュなインドールの効いたグリーンジャスミン×スズランの戦慄のハーモニーからこの香りははじまります。

すぐにバラの棘を持った、ミルキーな百合の香りに包み込まれるように、不気味で不穏なフルーツとフローラルの、ひんやりとした清々しいよろめきの中に呑み込まれてゆきます。

「鉄の処女」とは?実は拷問の道具ではなく、あの鋼鉄の鎧に身を包んだ処女のことを指すのではないだろうか?そう、火あぶりにされたあの英雄ジャンヌ・ダルク(1412-1431)を・・・

そうに違いない、まさにこの洋ナシは神の啓示なのだと言わんばかりに、洋ナシは、クリーミーなチューベローズとムスクを仲間に引き入れ、透き通るように新鮮な甘い血の匂いを解き放ってゆきます。そして、鋼鉄の鎧を身に着け、百合(聖母マリア、純潔の象徴)に導かれ、この香りを身にまといし者は、時代を切り開くのです。

聖なる灰(インセンス)に先導され、真の赤い血を求めて、戦いの果てに、素肌はアンバー、バニラ、サンダルウッドという安らぎを得て、純潔の血を吸い上げた百合の妖しき甘い輝きに満たされてゆくのです。この香りは、間違いなく、セルジュ・ルタンスが、10代から20代にかけての処女に向けて捧げた香りなのでしょう。その名のおどろおどろしさとは真逆の親しみやすさがあります。

それはその年代の女性の体臭に含まれるオスマンサスやピーチのような香りのラクトンC10と、ピーチやココナッツのような香りのラクトンC11が肌の上でブレンドされ、肌に溶け込んでいく、滑らかな温かく優しい香り立ちを生み出すことが計算された香りなのです。

それにしてもこの香りを調香したシェルドレイクという男は、実に恐ろしい男です。ルタンスの神の啓示を香りにするという恐ろしいリクエストに対しても、怯まずに処刑人としての役割を果たすべく、これほどの香りを生み出せるのですから。

「鉄の処女」それは、拷問器具の香りではなく、「オルレアンの乙女」ジャンヌ・ダルクの香りだったのです。そして今、この香りの殺傷能力の高さ故に、恐らく、自主規制され、2023年に廃盤となっています。

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香水データ

香水名:ラヴィエルジュドゥフェール(鉄の百合)
原名:La Vierge de Fer
種類:オード・パルファム
ブランド:セルジュ・ルタンス
調香師:クリストファー・シェルドレイク
発表年:2013年
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/17,710円、100ml/26,950円


シングルノート:百合、メタリックノート、インセンス、洋ナシ、サンダルウッド