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【フエギア 1833】コモレビ(木漏れ日)(ジュリアン・べデル)

フエギア 1833
フエギア 1833
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コモレビ(木漏れ日)

原名:Komorebi
種類:パルファム
ブランド:フエギア 1833
調香師:ジュリアン・べデル
発表年:2016年
対象性別:ユニセックス
価格:30ml/28,600円、100ml/48,400円
公式ホームページ:フエギア 1833

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フエギアは、スケール感のある香りを生み出すニッチ・ブランドです。

©FUEGUIA 1833


2010年にジュリアン・べデルが、ブエノスアイレスで創業したフエギア 1833から、2016年に発売された「コモレビ Komorebi」は、11に分けられたコレクションの〝Literatura(文学)〟のひとつとして、ジュリアン・べデルにより調香されました。

フエギア1833というニッチ・フレグランス・ブランドの本質は「南米の大地に自生する芳香性植物や薬草の守護者である先住民の地域社会への賛辞であり、彼らの保護活動を応援する叙情詩でもあります」というブランド公式の文章と、

ある意味、私の香りへのアプローチはいつも神とつながることで前進してきました。人類学的に見ても人は、さまざまな儀式に香りを取り入れ、儀式の内容にかかわらず、それを広めてきました。こうして地球上のいかなる儀式にも香りは欠かせないものとなりました。

ジュリアン・べデル

の言葉に集約されています。

つまり香水業界にとっても未開の地である〝南米の壮大な世界観と豊かな香料〟を反映した、〝繊細さよりも、大地から湧き立つエネルギーやドラマティックな植物の生態を解き放つスケールのある香り〟を生み出す唯一無二のブランドなのです。

それは、チャイコフスキーの『ピアノ協奏曲第1番』のような荘厳なクラシック音楽を思わせます。そのためフエギアは、香りの変化について〝パフューム・コード〟で表現しています。

それは、香りのスケールを音楽のコード理論で示しており、以下のスリーコード(主要三和音)となります。

  • トニック・ノート 香調を決定づける主役の香料。もっとも長く残り、余韻を奏でる香り。他の香料はすべて、最終的に引き寄せられひとつの世界観を生み出してゆきます。
  • ドミナント・ノート 香りに個性を与え、香水のテーマを表現する香り。トニック・ノートの次に安定感のある香料であり、香調を豊かにする役割を担います。
  • サブドミナント・ノート つけた瞬間に漂い、第一印象を決める香り。二つのノートに不安定な響きを与える香料で、コントラストを生み出す役割を果たします。

つまりシングルノートではなく、クラシック音楽のように、ドラマティックな香りのうつろいを感じることが出来ます。

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桜の花のあいだをすりぬけた光が、魔法のように心を揺さぶる。

©FUEGUIA 1833

日本人が「光」に与える観念。桜並木の中、太陽の日差しが漏れる木漏れ日の中、突然、アンバー(琥珀)の風が吹き込みます。見える「光」と見えない「風」が生み出す相互作用が、湿気を帯びた空気を生み出し、桜のかぐわしい香りを広げてゆきます。

ジュリアン・べデル

日本でも有数のラグジュアリー・ホテルであるグランドハイアット東京の1Fロビー内に「フエギア1833」が初上陸したのは、2015年10月7日のことでした。この上陸後、日本限定の香りとして、2016年5月31日に、30ml税抜き12,000円、100ml税抜き23,000円で発売されました。

あくまで私のこの香りのイメージです。©蜷川組「さくらん」フィルム・コミッティ

それは、当時ジュリアンが、念願の日本上陸を果たし、日本の地を踏んだ〝喜び〟を〝桜〟に託した香りとも言えます。その〝桜〟の表現は、南米のスパニッシュモス(Barba de Viejo)ケブラコ(Sombra del Toro)から抽出した香料を中心に、独自の表現で展開してゆきます。でありながら、日本人の琴線に触れる、〝風の中で揺れる桜の花〟の儚さを感じさせます。

この香りには、古い昭和の日本映画に出て来そうな、桜舞い散る中に忘れていた情景と、華やかに和服を着た現代的な女優がライトアップした桜吹雪の中で風に舞う髪をかきあげるモダンな情景も同時に感じさせる、SAKURAが生むドラマティックな感覚があります。

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〝桜の香りの王朝絵巻〟が肌に広げられてゆく


香りの幕開けは、トニック・ノートであるチェリーブロッサムが、最初から天然のアンバーグリスと溶け合い、桜花爛漫たる桜の輝きが広がってゆくようにしてはじまります。

はじまりからおわりまで、得も言えぬ感覚に包まれるのは、これぞ、フエギア特有の魔法が織り込まれているためなのですが、メキシコの先住民アステカ族に古くから伝わるお香であるホワイトコーパル樹脂がアンバーグリスと絶妙なバランスで溶け込んでいるためです。

名前とは裏腹に、通常の桜の香りに適応される〝はかなさ〟という概念から離れ、その華やかさに脚光(=木漏れ日)を当てた日本の総天然色で作られた桜の香りです。その華やかさは、ヒカリゴケのようなスパニッシュモスと、そこにほんのり添えられたジンジャーとミントのアクセントにより生み出されています。

木漏れ日の中で桜が、甘さと酸っぱさを輝かせる中、早くも散った桜の花びらが浮かぶ小川のオゾンのみずみずしさが、彷徨いこんだラベンダーとカルダモンにより、息をのむほど魅惑的なコントラストが流れる水のように心に染みてゆきます。

ケブラコ(Sombra del Toro)という日本では聞きなれない黄色の花をつける常緑高木から採られたハーブ酒の香りが、花見酒のような高揚感を与えつつ、あくまで雅たる「しづやかさ」と共に、日本の春の空と桜と水を結び付けていく〝香りの王朝絵巻〟が、肌に広げられていくようです。

晴れやかな太陽と、ピンクにきらめく桜、水面が輝く川の流れは、繊細さよりも、スケール感を感じさせます。それは透き通るようではなく、あくまで半透明に広がり、肌との相性が良く、肌のぬくもりに溶け込み、ダイナミックな自然の力が全身にみなぎり、やがてはきらめく香りのオーラを解き放ってゆくのです。

ちなみに2016年発売された当時の公式文章はまた違ったものであり、こちらもこの香りの世界観を広がらせてくれる素敵な文章です。

松林図屛風/長谷川等伯 ©TOPPAN

日本を象徴する花、それは桜の花。太陽に照らされ、わずかに香る桜の花の香りは、やがてその力強い幹が宿す影に吸い込まれ、枝葉の陰る間に幽遠に浮遊する。墨絵の松林図屏風に描かれた松林のように、陰と陽、古さと新しさが共生する世界を表現している。

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香水データ

香水名:コモレビ(木漏れ日)
原名:Komorebi
種類:パルファム
ブランド:フエギア 1833
調香師:ジュリアン・べデル
発表年:2016年
対象性別:ユニセックス
価格:30ml/28,600円、100ml/48,400円
公式ホームページ:フエギア 1833


トニック・ノート:チェリー・ブロッサム
ドミナント・ノート:スパニッシュモス(サルオガセモドキ)、アンバーグリス
サブドミナント・ノート:ケブラコ(Sombra del Toro)、ムスク