作品名:ハンガー・ゲーム The Hunger Games(2012)
監督:ゲイリー・ロス
衣装:ジュディアンナ・マコフスキー
出演者:ジェニファー・ローレンス/ジョシュ・ハッチャーソン/リアム・ヘムズワース/ウディ・ハレルソン/エリザベス・バンクス/レニー・クラヴィッツ
クリスチャン・ディオールのミューズ
2012年の全米年間興収ランキングは、第1位が『アベンジャーズ』、第2位『ダークナイト・ライジング』、そして、第3位が『ハンガー・ゲーム』(さらに第4位は『007 スカイフォール』)でした。本作は、約4億ドルという破格の興行収入を稼ぎ出し、2015年までに全4作シリーズ化され、完結を迎えることになるのですが、日本では、アメリカほどの大ヒットは記録しませんでした。
その明確な理由は、日本人から見れば本作は、『バトル・ロワイアル』(2000、以下BR)に似た内容のためでした。それはBRよりも最高に盛り上がる展開でバトルへと突入し、BRよりも最高に盛り下がる展開で終わっていく劣化バージョンでした。
しかし、ここに脚本のクオリティの低さを圧倒する、「21世紀のミューズ」が誕生した事実を見逃してはなりません。その人の名をジェニファー・ローレンス(1990-)と申します。本作が公開された2012年に公開された『世界にひとつのプレイブック』でアカデミー主演女優賞を受賞した彼女は、同年よりディオールのミューズとして、ナタリー・ポートマンと双璧をなす存在になったのでした。
その悲しみをたたえた瞳がとても魅力的なジェニファーが、ディオールの19年ぶりの女性用フレグランス「ジョイ」のミューズとして登場している2018年のキャンペーン・フィルム(上の動画)を見れば、本物のファッション・アイコンとしての道を、着々と進んでいる数少ないハリウッド女優の一人であることを認識することでしょう(SNSでファッション・モンスターぶりを誇示するポップスターや、リアリティ貴族達とは、真逆のホンモノの存在)。
そんな彼女の魅力と、ファッション業界に賛否両論を呼んだもう一人の女優の存在が、このシリーズの、ファッション性の原動力となり、他の作品にはないファッション・ムービーとしての価値を生み出したのでした。その人の名は、エリザベス・バンクス(1974-)です。
2012年、アメリカ中の少女たちがブラウン・レザージャケットを着た。
カットニス・エヴァディーン・ルック1 レザージャケット
- 三つ編みをサイドに
- ブラウン・レザー・ジャケット、シャツスタイル・カラー、フロント・ジップ、1940年代風
- ブラックスウェット
- ダークブラウンのレザーベルト
- ダークブラウンのストライプ・パンツ、1870年代のヴィンテージ・リーバイスから作られた
- ブラウン・ロングブーツ
原作の中で記載されている父親の形見のレザー・ジャケットを着るカットニス。ただし、映画の中では、原作とは違いオーバーサイズではなく、ジャストサイズで着ています。リアム・ヘイズワース(1990-)が演じるゲイルのファッションもそうなのですが、スウェットにしてもコットンパンツにしても、そのダメージ具合にしても、貧困層というよりも、オシャレなダメージ加工が施されたワークウェアを着ているとしか思えないところが、この作品の狙いでもあるのです。
「最初、私は減量を要求されたの。カットニスは飢餓で苦しんでいる設定なのだからと…でも、私はこう答えたの。そんなガリガリの主人公なんて、10代の女の子は見たくないはず。だから、私は思いっきり、彼女たちのように健康な体型で出演したのよ」。このジェニファーの発言が、この作品の方向性を見事に示しています。
メンズライクなスタイルのクールネス
カットニス・エヴァディーン・ルック2 ブラックスウェット
- ブラックスウェットシャツ、赤のワンポイント
- ダークブラウンのストライプ・パンツ、1870年代のヴィンテージ・リーバイスから作られた
- ブラウン・ロングブーツ