グッドガール
原名:Good Girl
種類:オード・パルファム
ブランド:キャロライナ・ヘレラ
調香師:ルイーズ・ターナー
発表年:2016年
対象性別:女性
価格:日本未発売
21世紀のシンデレラの靴は、だれもが履ける〝香りの靴〟
アメリカのファッション・ブランド、キャロライナ・ヘレラが、プーチ社にライセンスを供与し、はじめてのフレグランスを発表したのは1988年のことでした。
そして、娘であるキャロリーナ・ ヘレラ・デ・バエズが、1996年にフレグランス部門のクリエイティブ・ディレクターになり、折からの「若者向けフレグランス」ブームに遅れてはだめよ!と、2つ目の女性用フレグランスを生み出すための陣頭指揮を執ることになり1997年に誕生したのが、アルベルト・モリヤスの手による「212」でした。
以来、フレグランスのヒット作を20年近く生み出せずにいたキャロライナ・ヘレラは、まるで1937年に『白雪姫』のヒット以降、ヒット作が生み出せなかったウォルト・ディズニーのようでした。
ウォルト・ディズニーは会社倒産の危機の中で、27年かけて構想したシャルル・ペローの童話『シンデレラ』を5年かけミュージカル・ファンタジーへと昇華させました。そして、空前の大ヒットとなり、ディズニー社は一気に息を吹きかえし、ディズニー帝国を築き上げていくことになるのでした。
その伝説を21世紀に引き継ぐように、キャロライナ・ヘレラは、21世紀のシンデレラの靴を作り上げることによって、フレグランス帝国の礎を築き上げたいと考えたのでした。
185cmのカーリー・クロスが、2mを超える魔性の美女に。
まず最初にキャロリーナ・ ヘレラ・デ・バエズは、彼女が構想した〝香りの靴〟にフィットする21世紀のシンデレラを象徴する女性を決めることにしました。そして、すぐにそれはカーリー・クロス(1992-)しかいないと確信しました。さらに広告キャンペーンのフォトグラファーとしてマリオ・テスティーノを起用したのでした。
ちなみにカーリーがファッション・モデルとしてはじめて歩いた大きなランウェイは、15歳の時にキャロライナ・ヘレラのショーでした。
ベビーシッター代を貯めて、初めて買った大きな買い物のひとつがフレグランスでした。中西部で育った私は、高級なハンドバッグや靴、ドレスなどは持っていませんでしたが、フレグランスだけは持っていました。
ヘレラ夫人が仰るように、フレグランスは目に見えないアクセサリーなのです。内なる自信を引き出し、気分を変えてくれるものです。投資できる最高のもののひとつです。私はいつもカメレオンのように服を変えていますが、フレグランスはいくつかの愛用しているものしかつけません。
カーリー・クロス
ミステリーとは、女性が持つ最も重要な資質である。
そして、5人の一流調香師を選抜し、試作品を競い合わせた上で、ルイーズ・ターナーに調香を依頼することが決定したのでした。この2010年代に飛翔したシンデレラ・レディにより、〝香りの靴〟の夢を現実のものにしようと考えたのでした。
それからルイーズは延々と5年間、このプロジェクトに携わることになるのでした。
キャロリーナは、ルイーズに新しい香りに対して望んでいるポイントとして、ただ「新しいもの、ユニークなもの、そして二面性のあるもの」とだけ伝えました。それがルイーズにとって「いろいろな解釈の余地があり、自由にクリエイションをすることができる」良い効果を生み出したのでした。
最初にルイーズは、二面性から即座に浮かんだ感覚=「光と闇」を大切にし、純粋さと女性らしさを表すホワイトフローラルブーケ(ジャスミンとチューベローズをベースにした香りがヘレラのファースト・フレグランスだった)と、ダークで神秘的かつ官能的なローストした豆によりもたらされる香りであるトンカビーン、コーヒー、カカオのコントラストを中心に据えることにしました。
さらにキャロリーナが試作品を嗅いでアドバイスしてくれた一言「ミステリーとは、女性が持つ最も重要な資質である。開かれた本ほど退屈なものはありません」も、ルイーズの創作意欲をいたく刺激したのでした。
自信に満ちていて、率直で、フェミニンでありながら、隠し事もする現代女性を表現する香りを生み出したかったのです。最終的には、多面的で、とてもパワフルな特徴を帯びたユニークな香りに仕上がりました。また、私にとってこの香りは、身につけるたびに新たな一面を発見できる、とても価値のあるものです。
ルイーズ・ターナー
スティレットヒールパンプスが香水ボトルになりました。
靴の形、質感、色、素材など、色々試行錯誤を繰り返して、最終的にこのディープブルーのピンヒールのデザインにたどり着きました。最初はシンデレラが靴をなくしたような、もっとロマンティックなシンデレラのガラスの靴風にしようかとも迷ったのですが、私はもっとエレガントで、でありながら遊び心があって、いたずらっ子のような現代風の靴が欲しかったのです。
キャロリーナ・ ヘレラ・デ・バエズ
生み出されたジュースを入れるボトルの開発にも、膨大な時間がかかりました。21世紀のシンデレラの靴の候補として600種類以上の靴の試作品を経て、ゴールドスティレットヒールのディープブルーパンプスが生み出されたのでした。
そして、香りの名を「シンデレラ」にするのではなく「グッドガール」に決定したのでした。その意味は〝It’s so good to be bad!(オンナにとって悪いことってとても素敵なことなのよ!)〟という意味が込められていました。つまり『可愛い悪女』の香りなのです。
6年の歳月を費やしたこの香りは、2016年9月に発売されると同時に「212」を超える空前の大ヒット作となりました。プーチ社にとって「歴史的な売り上げ記録を達成した」この香りは、すべての市場で、すぐに完売し、目標売り上げの2倍に達したのでした。
「グッドガール」とはホワイトシャツ。
「グッドガール」の精神は、実は「ホワイトシャツ」なのです。ホワイトシャツは着こなし次第で、その意味を全く変えてしまうことができるのが魅力です。袖をまくったり、下げたり、結んだり、開いたままにしたり、ボタンを留めたり、タックインしたり、解いたり、ホワイトシャツには多様性があります。ホワイトシャツは着こなし次第で、まったく違う印象を与えてくれるのです。
キャロリーナ・ ヘレラ・デ・バエズ
つまりこの香りも、スティレットヒールが導き出すエレガンス、優雅さ、妖艶さ、ミステリアス、神秘性、シャープな存在感といったあらゆる表情を、着用する人が導き出せる香りなのです。
ジャスミンとチューベローズ VS ローストした豆たち
自分の良い面を愛しながらも、悪い面も愛することが出来る女性がこの香りの核心です。つまりすべての女性が持つ二面性に基づいたコンセプトを実現する香りです。このミステリアスさは重要な資質なのです。
キャロリーナ・ ヘレラ・デ・バエズ
天使が目をさます鐘の音が鳴り響くのではなく、天使の心を持つどんな女性の中にも眠る、悪魔を目覚めさせるカツっと鳴り響くヒールの音色からこの香りははじまります。それは颯爽と歩く長い脚から先に現れる美女の到来のように、ベルガモットとレモンが勢いよく弾け出すのです(プラムが隠し味)。
そしてすぐに甘いバニラと香ばしいコーヒーとアーモンドが円やかに混じり合い、うっとりするようなスパイシーなチョコレートと、ミルキーなコーヒーの余韻に包み込まれていくのです。
まさに艶やかな蜜が滴る光り輝く美脚を見せつけられ、その持ち主を直視してしまった瞬間、甘い微笑で篭絡されていく、はじまりから天国に召されるような至福のひと時を感じさせてくれます。
はじまりから終わりの香りです。最初からクライマックスの香り。そして、それだけでは許してくれずに何度もクライマックスへと導かれる香りなのです。
天にものぼる絶頂の果てに、「良い女」を思わせるクリーミーなチューベローズと甘く花蜜豊かなジャスミンサンバックの光り輝くホワイトフローラルブーケに満たされ、真っ白に燃え尽きるような燃焼感に心は溺れてゆきます。
天翔するように美しい花々が織り成すピーチを想わせる芳醇な香りに酔わされ翻弄される中、突然、あいつはやって来たのでした。
「悪い女」を思わせるローストしたトンカビーンとカカオ、プラリネの到来です。一気にフローラルがグルマンに飲み込まれる中、バニラは、パウダリーなオリスとムスク、アンバー、サンダルウッドによって滑らかに引き伸ばされてゆくのです。
さらに存在を表すパチョリとシダーにより、もはや思考回路は停止寸前となり、心は香りに吸い込まれ、その艶やかな甘くて苦い余韻に身も心も委ねていくようにひとつになっていくのです。
その日のスタイルによって、カメレオンのように変身してくれる「誰にでもフィットするシンデレラの靴」がそこに置かれています。
香水データ
香水名:グッドガール
原名:Good Girl
種類:オード・パルファム
ブランド:キャロライナ・ヘレラ
調香師:ルイーズ・ターナー
発表年:2016年
対象性別:女性
価格:日本未発売
トップノート:アーモンド、コーヒー、ベルガモット、レモン
ミドルノート:チューベローズ、ジャスミン・サンバック、オレンジ・ブロッサム、オリス、ブルガリアン・ローズ
ラストノート:トンカビーン、カカオ、バニラ、プラリネ、サンダルウッド、ムスク、アンバー、カシミアウッド、シナモン、パチョリ、シダー