ダンドゥレ(乳歯)|あなたの首筋にかぶりつきたくなる香り

セルジュ・ルタンス
セルジュ・ルタンス
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ダンドゥレ(乳歯)

原名:Dent de Lait
種類:オード・パルファム
ブランド:セルジュ・ルタンス
調香師:クリストファー・シェルドレイク
発表年:2017年
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/19,800円、100ml/30,140円

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あなたの首筋にかぶりつきたくなる香り

©Serge Lutens

[乳歯]

腕時計は、長針と短針で時間の流れを表す。数週間、もてあそばれたぐらぐらの乳歯は抜け落ち、舌に残るのはわずかな幼少期への倦怠感。
今、若い狼はミルクよりも血を求める。ずっと愛した無垢なる私の一部、決して忘れない。

公式ホームページより

ダンドゥレ」は、セルジュ・ルタンスの「コレクションノワール」より、2017年6月に発売されたアルデハイド・メタリックの香りです。クリストファー・シェルドレイクにより調香されました。

人間の一生の中で、〝魔法のような瞬間〟とも呼ばれる最も幸せだった季節=乳歯が抜ける頃(幼少期)にルタンスが思い巡らせた香りです。

「そうだ!私のあの瞬間が、子供時代の終わりの始まりだったんだ!そして、私はミルクよりも血を求めるようになったのだ!」。

「ダンドゥレ」の創作は、何よりもまず、7歳という年齢 ――いわゆる『理性の年齢』とも呼ばれ、初めて乳歯が抜け始める年齢―― において、個人の選択が下されるという原則に導かれたものです。人格が定まり、新しい歯、すなわち血の歯が、かつてないほど鋭く生え始めるのです。もちろん、何も決まったことなどない。しかし、もし我々が注意深く観察すれば、あらゆるものが、独裁者、賢者、あるいは芸術家の出現を予感させるものとなり得るのだ……

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吸血鬼のための血の香り

この香りは、〝子供時代の思い出の繊細な世界〟を表現した2014年の「ロルフェリン」と、〝月明かりの下を歩くムスク:飼い慣らされた野獣〟を表現した2003年の「クレール ドゥ ムスク」の間に位置づけられるだろう。それは、子供の中に共存する天使と悪魔を捉えているのです。

セルジュ・ルタンス

どうやら、この香りは、ベラ・ルゴシに捧げられた香りのようだ。

吹雪がボトルの中で渦巻いているような色合いの液体をスプレーから開放した瞬間、トランシルヴァニア地方へと魂が失われていくような、フレッシュグリーンなスズランのようなシュワっと広がる清らかな春の花々の上に、アルデハイドのきらめく粉雪が舞っているような雪山の情景が素肌に生み出されていきます。

ドラキュラ城へようこそ。ひんやりと清涼感に満ちたソーピィーな(ベビーパウダーも感じさせる)雪の香りは、隙のない紳士然としたドラキュラ伯爵そのものです。しかし、あまりにも完璧すぎて氷のような冷たさが感じられます。そんな風に、ヘリオトロピン(ヘリオトロープ=塩キャラメルとチェリーの香り)が生み出すローズ調メタリック・ノート(金属の香り)が、インセンスの風に乗り、香り全体を支配してゆきます。

しかしこの香りの恐ろしいところは、危険な人物だと分かっていても、引き寄せられるミステリアスな香りが広がっていくところにあります。この香りの世界には、甘いという概念は存在しないようです。まるで催眠術をかけるように、ゆっくりとゆっくりとほろ苦いアーモンドが泡立ちながら、血のようなメタリック・ノートの上に重なり、浸透していくのです。

まるでドラキュラ伯爵に血を吸われていくかのように、血の気配はすっかり消え失せ、ミルキーなビターアーモンドの余韻が柔らかく漂い、もう自分が自分でないようなエアリーな感覚に満たされていくのです。

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背筋が凍るほどクールビューティーを生み出す『あぶない香り』

乳歯という名の不思議さが連想させるような、デンタル・クリニックの香りとも形容できるのですが、実際のところ、この香りが目指したのは、香りという娯楽産業の中に、ホラーという要素を付け加えてみようという試みだったのかもしれません。

つまりは、真実は吸血鬼のための血の香りなのですが、吸血鬼とは、つまり、ミルクを求めて母親を求める乳児のような純粋さと本能を持つ存在です。この香りはそんな両極端な同質性をテーマにした香りなのです。だからこそ、「血とミルク」なのです。嫌悪が愛情に変わる香りです。

さらにヘリオトロープとメタリックノートとインセンスのハーモニーが、アスファルト・ジャングルを連想させるほどに、モダンでメトロセクシャルなムードを漂わせてくれるので、スマートにスーツを着こなす男性女性にも使いやすい香りです。

ではありますが、自分の容姿に自信がある女性が身に纏うと危険極まりない香りでもあり、まるでドラキュラ伯爵に血を吸われ、女吸血鬼に変身してしまうように、背筋が凍るほどクールビューティーなアルデハイドが、だんだんとあなたの素肌の上で、円やかにミルキーな香りとなり、ツンとした絶世の美女が、無邪気に微笑むような効果を生み出すことになるからです。

まさにその微笑みを向けられた人は、私だけにこの微笑みは与えられたと勘違いさせてしまうのです。世に存在していた廃盤香水(2024年に廃盤)の中には、とてつもなく『あぶない香水』が存在するのです。

2007年に生み出された「ルウーブ」が狼男(狼女)の香りだとすると、こちらとあとフランケンシュタインの香りさえ誕生すれば、『香りの怪物ランド』は誕生する訳です。

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香水データ

香水名:ダンドゥレ(乳歯)
原名:Dent de Lait
種類:オード・パルファム
ブランド:セルジュ・ルタンス
調香師:クリストファー・シェルドレイク
発表年:2017年
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/19,800円、100ml/30,140円


シングルノート:アルデハイド、ココナッツミルク、メタリック・ノート、インセンス、ヘリオトロープ、アーモンド、カシュメラン