2005年10月14日、6代目ボンドが発表されました。
007シリーズの記念すべき第20作目となった『007 ダイ・アナザー・デイ』(2002)が、公開当時、過去最高のシリーズ興行成績を記録した後、4作品のジェームズ・ボンドをつとめたピアース・ブロスナンが、5代目ジェームズ・ボンドを降板しました。007シリーズを復興したこの男の降板は、世界中のボンド・ファンを失望させました。
そんな中、2005年10月14日、ロンドンにて、6代目ジェームズ・ボンドが発表されたのでした。
そして、その瞬間、世界中のファンは再び失望したのでした。長めの金髪に、にやけ面のダニエル・クレイグ(1968-)が、ネイビーのスーツにスカイブルーのシャツ、そして、レッドタイという、まるでオフィスビルからランチタイムに出てきたようなスタイルで登場したのでした(最終選考に残ったもう一人は後にスーパーマンになり、『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』でトム・クルーズと戦う当時22歳のヘンリー・カヴィルだった)。
この会見を見た人々のリアクションは、一様に「ああ…ピアース・ブロスナン様、考えを改めて!」という神への祈りだったはずです。しかし、蓋を開けてみると、ダニエルで正解だったのでした。こんな優男が、撮影開始までのわずか100日後(2006年1月30日に撮影は開始された)には、男さえも羨む、ムキムキの肉体、精悍なヘアスタイル、クールなファッションで史上最高のジェームズ・ボンドへと変身を遂げたのでした。
おれの名をいってみろ!=You Know My Name
「さぁ、おれのジェームズ・ボンドは絶対に見ないと言ったお前たち!おれの名をいってみろ!」と言わんばかりに、ダニエル・クレイグが、あの会見からは想像もつかないほどの肉体改造を終えて登場します。そして、世界中の私を含む女性と男性が、「私たちはこんなジェームズ・ボンドが見たかったんだ!」といけしゃあしゃあと歓喜したのでした。
とてつもなく男のフェロモン全開なクリス・コーネルの主題歌が素晴らしいです。『007 死ぬのは奴らだ』(1973)のポール・マッカートニーの主題歌のメロディラインと、『007/サンダーボール作戦』(1965)のトム・ジョーンズの主題歌のフェロモンを取り入れたというだけあります。女性のシルエットが一切登場しない硬派なタイトル・デザインが、ニュー・ボンドのイメージを物語っていました。
クリスが咆哮する「ユー・ノウ・マイ・ネイム!」がどこか「おれの名をいってみろ!」に聞こえてくるほどです。元々タイトル・ソングを歌う予定だったエイミー・ワインハウス(1983-2011)の主題歌も聴きたかったのですが、ダニエル・クレイグのニューボンドには硬派な男性ボーカルで良かったのではないでしょうか。
ボンドが殺しのライセンスを手に入れたとき。
殺しのライセンス=ダブルオー(00)要員になるためには、2人殺さなければならないルールがあるらしい。そして、原作(1953年に刊行されたボンド第一作)において、ボンドが007になるために殺した二人は、日本人スパイとノルウェーのダブルスパイでした。
映画においても、そのルールは適応されており、このオープニングのモノクロシーンで、2人目の殺人を行うシーンが映し出されます。このシーンでボンドは、歴代ボンドの中ではじめてピーコートを着ることになります(そして『007 スペクター』(2015)において本格的にピーコートを着たボンドの姿がお披露目されます)。
ニュー・ボンドのファッション1
ピーコート
- ダークネイビーのウールメルトンのピーコート、アルスターカラー、8ボタン
- チャコールグレイ・リブニット・カーディガン、スタンドカラー、5つのブラックボタン、セットインスリーブ、恐らくダニエルの私物
- サンスペルのダークグレイTシャツ
- テッド・ベイカーのグレンチェックのトラウザー
- ジョン・ロブのロムゼイ、ブラックカーフ・チャッカブーツ
作品データ
作品名:007 カジノ・ロワイヤル 007 Casino Royale (2006)
監督:マーティン・キャンベル
衣装:リンディ・ヘミングス
出演者:ダニエル・クレイグ/エヴァ・グリーン/カテリーナ・ムリーノ/イワナ・ミルセヴィッチ/ジュディ・デンチ/マッツ・ミケルセン
- 【007 カジノ・ロワイヤル】ダニエル・クレイグのニュー・ボンド誕生
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.1|ダニエル・クレイグ6代目ボンド就任
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.2|コンバースをはいたダニエル・クレイグ
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.3|ダニエル・クレイグのマッチョボディ
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.4|ダニエル・クレイグとジョルジオ・アルマーニ
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.5|ダニエル・クレイグとアストンマーティンDBS
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.6|ダニエル・クレイグとサンスペル
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.7|ダニエル・クレイグとブリオーニ
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.8|イワナ・ミルセヴィッチとロベルト・カヴァリ
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.9|カテリーナ・ムリーノと第四のボンドガール「M」
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.10|エヴァ・グリーンとジョルジオ・アルマーニ
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.11|エヴァ・グリーンとグッチ
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.12|エヴァ・グリーンの美容哲学
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.13|エヴァ・グリーンとヴェルサーチェ
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.14|エヴァ・グリーンとサンタ・マリア・ノヴェッラ