スピンオフがありそうなほどの人気キャラQ
前作『007 スカイフォール』(2012年)からQ(MI6の秘密兵器開発課の課長)を演じているのはベン・ウィショー(1980-)です。ボンドがダニエル・クレイグになってから2作品連続Qが出演しなかったのですが、ダニエル自らQの復活を希望して若きQが誕生しました(元々は、デスモンド・リュウェリンが36年間演じていた名物キャラ)。ベンは、プライベートにおいて、同性婚をカミングアウトしている人であり、そのファッション・センスの良さも、トム・フォードで身を固めるダニエルと双璧を成す魅力を発散しています。
母親が、美容部員であり、フランス、ドイツ、ロシア、イギリスの血がミックスされています。そして、双子の兄弟がいます。ヴィヴィアン・リーやロジャー・ムーア(3代目JB)、リチャード・アッテンボローが卒業した英国王立演劇学校出身です。舞台劇ハムレットで、ハムレットを演じ「次世代のローレンス・オリヴィエ」とまで絶賛された超実力派です。
彼の一番のお気に入りの映画スターは、とぼけたムードを持ち味にしていたジェームズ・ステュアートというだけあって、Qの役柄にも通じるものがあります。ちなみにはベンは「僕の大好きなボンドムービーは、『007/ドクター・ノオ』と、『007/ロシアより愛をこめて』なんです」と言っています。
草食男子〝Q〟スタイル3
- ビリー・リードのアスターコート。ノッチカラー。ウール
- ポール&ジョーのルサーブル・セーター。赤×青マルチカラーパターン。ラウンドカラー。ロングスリーブ
- UnivoのプラスティックU5眼鏡
バーバリーとティモシー・エヴェレスト
本作において、悪役のCを演じたアンドリュー・スコットのスーツは、全てバーバリーを着用しています。一方、バティスタが列車でボンドを襲撃する時のスーツは、英国調です。ロンドンのテーラー、ティモシー・エヴェレストによるものです。ちなみにクリストフ・ヴァルツが着用したミッドナイト・ブルーのジャケットも同じく。
ジェームズ・ボンド・スタイル10
- ジョンバルベイトスのゴートスエード(山羊革のバックスキン)のジャケット。ラルフ・ローレンとカルバン・クラインでキャリアを積んだバルベイトスが2000年にスタートしたブランド
- エヌピールのモックネックニット
- サンダースのプレイボーイチャッカブーツ。ノーザンプトンの老舗
もしあなたがメンズファッションの販売員なら・・・
私は、007シリーズ全24作品を、見ることをお奨めします。いいえ、お奨めするという言葉ではなく、絶対に見ないとメンズファッションを扱う資格はありません。男性にとって、ファッションとは何か?洋服を着るということはどういうことか?その歴史の片鱗が、メンズ・スーツの50年史が、そこには凝縮されているからです。
さらに、女性ファッション、ヘアメイクまで時代を追って感じ取ることが出来ます。2016年を境にファッション及びアパレル業界において、若き人々には知識武装が求められています。今や、この業界は、とてつもないファッション知識に乏しい老害に食い尽くされています。ファッションとはかけ離れた感覚で、しなければいけない仕事ばかり増えて、自分達のファッション感度を磨くためのお金と時間と集中力はどんなに頑張っても勝ち取れそうにはありません。そんなお先真っ暗に見える環境だからこそ、ファッションに対する知識を高めて、ラグジュアリー・ブランドを販売しても、将来の保証のないファッション&アパレル業界の変革に立ち上がらないといけないのです!
文句をぐ~たれて、勉強もせずに、仕事が終わると、アパレル仲間が集まり、安い居酒屋で、進歩のないファッション談義に花を咲かせている暇があるならば、ボンドムービー24作品をまずはコンプリートするべきです!そして、ファッションに対する自分自身の考えと向き合ってみましょう。今は何も出来ない?いいえ、学ぶことは出来るはずです。ラグジュアリー・ファッションは買えなくても、知識は吸収することは出来ます。ファッションは芸術の段階に入ります。そして、本当にファッションを愛する者のみが、勝ち上がれる下剋上がやって来るのです。流行よりも、過去の知識を得ることが、今販売員に、残された偉大さへの道なのです。
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