究極のフレグランスガイド!各ブランドの聖典ページ一覧にすすむ
アニック・グタール

【グタール】オーダドリアン(アニック・グタール/フランシス・カマイユ)

アニック・グタール
©Goutal Paris
この記事は約6分で読めます。

オーダドリアン

原名:Eau d’Hadrien
種類:オード・トワレ
ブランド:グタール
調香師:アニック・グタール、フランシス・カマイユ
発表年:1981年
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/20,130円、100ml/28,050
販売代理店ホームページ:ラトリエ デ パルファム

スポンサーリンク

アニック・グタールが世界的な名声を獲得した香り

©Goutal Paris

アニック・グタール

記念すべきアニック・グタール(1946-1999)の二作目の香り「オーダドリアン」は、1981年に、フランシス・カマイユの協力の下、アニックがトスカーナへのヴァカンス中に生み出されました。そして、この年、『アニック・グタール』が創業されたのでした。

というのが、一般的なアニック・グタールの創業プロフィールなのですが、本当の所は、1979年に、アニックが父親から30,000フラン借り『アニック・グタール』は創業されました。そして、1980年に、「フォラヴリル」と「オーダドリアン」を、ごく少量生産しました。

あまりに少量のため、工場生産できず、友人たちと共に、香料を計量し、ボトルに詰め、ラベルを手で結び、ボトルをセロハンで包むという文字通り全て手作りで生み出されたのでした。

この最初の数百個の香りを、ホームセール等で販売し、「オーダドリアン」だけが評判になったことから、1981年に本格的な工場生産に踏み切ることになったのでした。

「オーダドリアン」とは、「ハドリアヌスの水」という意味です。何よりも画期的なのは、発売当時非常に珍しい男女共に身に纏うことが出来るユニセックスのシトラス・フレグランスということでした。

この香りの存在があればこそ、1990年代のフレッシュでクリーンな香りが到来したと言われるほど、その先駆けとなり、それらの香りを作った調香師たちに影響を与えたのでした。

スポンサーリンク

マルグリット・ユルスナールの『ハドリアヌス帝の回想』



アニック・グタールが自分の二作目の香りのテーマとして選んだのは、1951年にマルグリット・ユルスナールが書いた歴史小説『ハドリアヌス帝の回想』でした。女性の調香師が取り上げたこの作品は、ユルスナールが20歳のときに構想され、48歳でようやく完成した、28年の歳月をかけたものでした。そして、彼女は一躍世界的な名声を獲得したのでした。

60歳になった第14代ローマ皇帝ハドリアヌス帝(76-138)が、(二代後に皇帝となる)後継者と定めた17歳の青年マルクス・アウレリウスにあて回想する告白のスタイルを取る歴史小説でした。

ローマ帝国の五賢帝と謳われたこの皇帝の在位(117年~138年)以上の歳月をかけて生み出された小説をなぜアニックは、二作目のテーマにしようと考えたのでしょうか?その正確な意図を示すコメントをアニック自身が残していないため、なんとなくハドリアヌス帝をイメージした香りと喧伝されています。

ローマ帝国史上最大の版図を引き継いだこの皇帝は、いくつかの領土を放棄することにより、パクス・ロマーナ(ローマによる平和)を持続させることに成功しました。一方、私生活においては、美青年の愛人アンティノウスを寵愛し、エジプト視察中に、彼が事故死を遂げるという悲劇に見舞われたりもしました。

ユルスナールが、ハドリアヌス帝を小説の題材に選んだのは、彼がローマの神々がもはや信じられていない、しかし、キリスト教がまだ確立されていない時代に生きていたからでした。

スポンサーリンク

地中海が見える木陰で飲むリモンチェッロ

©Goutal Paris

©Goutal Paris

トスカーナ地方の一日でもっとも暑い日を再現しようとしたこの香りは、焼けるような太陽の恩恵を受け、明るく晴れやかなフレッシュで甘酸っぱいシチリアン・レモンとシトロン、グレープフルーツ、マンダリンオレンジ、ベルガモットが、アルデハイドをアクセントに、シャーベット状に肌に降り注ぐようにしてはじまります。

レモンと砂糖漬けされたオレンジピールの香りがほのかにする一方で、グレープフルーツの香りはあまりしません。すぐにそれらシャープなシトラスの香りを和らげるように、ハーバルなバジルとサイプレスの木々が日差しとなり、軽やかに、滑らかな、陽気なイタリアの地中海の空気を運んでくれます。

それはまるで、イランイランの甘い囁きを耳元で受け止めながら、リモンチェッロをクリーミーな木陰で飲む、ローマ人の優雅さを肌で感じる瞬間とも言えます。

フランソワ・ミッテラン元大統領が愛用したこの香りは、2009年に再処方されました(初期ヴァージョンは、レモンシャーベットのようではなく、カットしたばかりの熟したレモンとグレープフルーツにほのかなアルデハイドとサイプレス/ラベンダーがアクセントとして効いていました。ちなみにイザベル・ドワイヤンは、処方は全くいじらずに濃度を1.2%高めただけであると主張しています)。

ちなみにこの香りは、カトリーヌ・ドヌーヴイザベル・アジャーニダイアナ元妃レオナルド・ディカプリオが長年愛用している香りとしても有名です。

ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、オードトワレについて「1981年の発売以来、グタールで最も安定した人気を誇るオーダドリアンは、やや控えめなオーデコロン。心地よいクールなレモンを起点に、バジルノートを伴って、よどみないかすかな森の香りへと変化していく。あえて控えめにしているのだろう。香水は苦手という人には嬉しい配慮だ。」と3つ星(5段階評価)の評価をつけています。

スポンサーリンク

オード・パルファム・ヴァージョンについて



価格:50ml/23,760円、100ml/33,330
販売代理店ホームページ:ラトリエ デ パルファム

〝疾走するレモン〟の香りを、もっともっと肌の上に残したい気持ちで生み出されたとも言えるオード・パルファム・ヴァージョンは、レモンを中心とした柑橘の魅力をより深く感じることが出来ます。

ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、オード・パルファム・ヴァージョンについて「シトラスオイルとモッシーエッセンスを柱にした香水があるとしよう。ところがアレルギー物質の規制に引っかかり、リモネン、シトロネラール、オークモスを取り除かなければならなくなった。本来ならば製造中止にすべきだが、売れ筋の商品を切り捨てるのは忍びない。そこでやむなく・・・という妥協の産物がこれだ。」

「オリジナルよりはるかに淡白(レモンオイルというよりもレモン配合の食器用洗剤)になり、よりフローラルな感じが前面に出ている。シャネルの「オードゥ コローニュ」に対抗したつもりかもしれないが、話にならない。」と2つ星(5段階評価)の評価をつけています。

スポンサーリンク

香水データ

香水名:オーダドリアン
原名:Eau d’Hadrien
種類:オード・トワレ
ブランド:グタール
調香師:アニック・グタール、フランシス・カマイユ
発表年:1981年
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/20,130円、100ml/28,050
販売代理店ホームページ:ラトリエ デ パルファム


トップノート:シチリアン・レモン、シトロン、マンダリンオレンジ、ベルガモット
ミドルノート:サイプレス、グレープフルーツ、バジル、イランイラン
ラストノート:サンダルウッド、アンバー、パチョリ、バニラ