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クリスチャン・ディオール

【ディオール】ディオールオム<2020年版>(フランソワ・ドゥマシー)

クリスチャン・ディオール
©DIORBEAUTY
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ディオール オム<2020年版>

原名:Dior Homme
種類:オード・トワレ
ブランド:クリスチャン・ディオール
調香師:フランソワ・ドゥマシー
発表年:2020年
対象性別:男性
価格:50ml/12,650円、100ml/17,490円
公式ホームページ:ディオール

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まずはオリジナルの『ディオールオム革命』のおさらいから。

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(1995年から2004年にかけて)ディオールのパルファム部門のグローバル・マーケティング・ディレクター、サビーナ・ベッリは、1999年に「ジャドール」により見事アメリカ市場を再度席巻することに成功しました。その勢いの中、1997年に「デューン プールオム」が果たせなかった、メンズ・フレグランス市場へ再挑戦したのが、2001年に発売された「ハイヤー」でした。しかし、期待していた成功を収めることは出来ませんでした。

あまり知られていないのですが、2001年(2001-2002秋冬のパリコレクションから)よりクリスチャン・ディオール初のメンズ・ライン、ディオール・オムをスタートさせたエディ・スリマンがこの香りに深く関わっています。彼は元々1997年にイヴ・サンローラン・リヴ・ゴーシュのメンズラインのクリエイティブディレクターに抜擢されるも、2000年にイヴ・サンローランがグッチ・グループに買収され、ディオールに移籍することになりました。

ディオール・オムが社会現象と言えるほどに大旋風を巻き起こし、2003年夏に3年間の契約延長をし、メンズフレグランスのクリエイティブ・ディレクターも兼任することになりました。かくして「ハイヤー」に引き続きエディ・スリマンが関わった香りが、ディオール・ラ・コ レクシオン・プリヴェの「ボア ダルジャン」、「オー ノワール」、「コロン ブランシュ」の3つのユニセックスの香りでした。

そして、この延長線上に2005年に生み出されたディオール・オム初のメンズ・フレグランスが「ディオール オム」でした。それはエディが調香界の若き貴公子・オリヴィエ・ポルジュとタッグを組み「21世紀に新たに付け加えられた男性にとってのエレガンスの最後のアイテムとしてのコロンの一提案」として創造されました(IFFにより製造された)。

アイリスを男性用フレグランスのために使用すべく、シャネルのNo.19からヒントを得た画期的な香りであり、アイリスの女性らしさとベチバーの男性らしさが巧みにブレンドされています。まさにメンズ・フレグランスにフローラル旋風を巻き起こすきっかけになりました。

それは、それまでメンズ・フレグランスにおけるフローラル(この香りまで10の香りしか存在しない)と言えば、ラベンダーとローズしかなかったフローラルにおける「第三の男」を生み出した瞬間でした。

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ディオールが示す、新しい男性像に、アイリスとカカオは不要。

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私が実現したかったのは、ある種の力強さ、抑制された力強さだ。官能的な数種のウッディの香りが過剰なまでに使用されているのがこの香りの特徴です。

クラシックでシンプルという基本への回帰を表しています。そして、もうひとつ、誰からも好かれる男性像=「明るくて」「クリーンで」「やさしくて」「柔軟性があって」をシンプルに、回りくどくなくストレートにイメージさせるほんのり甘い香りです。

フランソワ・ドゥマシー

2020年1月に発売された「ディオール オム」は、2005年に発売されたオリジナルのアイリスとカカオ(ココア)とレザーの三位一体を、ディオールの初代専属調香師フランソワ・ドゥマシーが、2011年に再調香した時、レザーを取り除き、バニラを付け加えプチ・リニューアルしたのに対し、完全に一新したものとなりました。

新しい「ディオール オム」からは、アイリスは失われ、カカオも失われています。それはジェームズ・ボンドが登場しない007と同じくらい、「ディオール オム」の名である必要がないとも言えます。

キャンペーン・モデルは、2011年版から同じく 『トワイライト』シリーズのロバート・パティンソンです。そして、今回の香りのキャッチコピーは「I’m Your Man」です。ちなみに2011年版は、海外では「ディオール オム オリジナル」という名で販売されています(コアユーザーの存在を感じさせます)。

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ドゥマシーが古巣の「ブルー ドゥ シャネル」を意識した香り

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澄み渡る青空のようにうつくしく爽やかなベルガモットと、太陽のように輝くレモンに似たエレミが、ピンクペッパーによりピリリと弾け合い絡み合うようにしてこの香りははじまります。まさにストレートパンチのような酸味とキレがそこにはあります。

すぐにカシュメランの温かく流れる風に乗り、静寂と神秘を思わせるドライなシダーの香りに包み込まれてゆきます。そこにベチバーとパチョリハートが加わり、すこしアクアティックな塩っ気(ミネラル)をふくんだレザーのように、まるで男性に、凛とした佇まいを与えるオーラが満ち広がってゆきます。ピリっとしたピンクペッパーが実に静かにこの男を最初から最後まで見守っています。

やがて、イソEスーパーがすべての役割を引き継ぎ、クリスタルのように輝く木のきらめきを素肌の中に焼き付けて去っていくのです。明らかに、フランソワ・ドゥマシーが古巣のシャネルの「ブルー ドゥ シャネル」を意識して生み出した香りでしょう。

しかし、どうせならこっちの曲のイメージで香りを調香したほうが魅力的な香りが生まれたと思います。ゲイじゃない人も対象にして「男から男に贈る香り」というコンセプト=「You are my man」な香りとして・・・

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香水データ

香水名:ディオール オム<2020年版>
原名:Dior Homme
種類:オード・トワレ
ブランド:クリスチャン・ディオール
調香師:フランソワ・ドゥマシー
発表年:2020年
対象性別:男性
価格:50ml/12,650円、100ml/17,490円
公式ホームページ:ディオール


トップノート:ベルガモット、ピンクペッパー、エレミ
ミドルノート:パチョリ、アトラス・シダー、カシュメラン
ラストノート:ホワイト・ムスク、ハイチ産ベチバー、イソEスーパー