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ロリータ・レンピカ

ロリータ レンピカ(アニック・メナード)

ロリータ・レンピカ
©Lolita Lempicka
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香水データ

香水名:ロリータ レンピカ Lolita Lempicka オード・パルファム
ブランド:ロリータ レンピカ
調香師:アニック・メナード
発表年:1997年
対象性別:女性
価格:20ml/3,400円、30ml/4,900円


トップノート:ヴァイオレット、セイヨウキヅタ(アイビー)、スターアニス
ミドルノート:アイリス、アマリリス、リコリス、ニオイ・イリスの根茎、チェリー
ラストノート:トンカビーン、バニラ、ベチバー、ホワイトムスク、プラリネ

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香水広告フォト&動画

©Lolita Lempicka

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ルカ・トゥリン

★★★★★ ハーバル〝エンジェル〟

ティエリー・ミュグレーの「エンジェル」をもとにした多くの香水を試してみて最初に思うことは、いつも「こんにちは、エンジェル」。今回は違う。調香師アニック・メナードは独自の香りの変化を発見した。エンジェルは、声高に叫ぶジャスミンやマンゴー、クロスグリのフルーツ様フローラルのアコードを、若干のいかがわしさとパチョリを軸に据えた男性的な甘いウッディ調が支えている。それはまるでハスキーボイスで誘惑されているかのようだ。ポスト・エンジェルがひしめく中、最高との呼び声高いロリータレンピカは甘いウッディ調が長く継続し、爽やかなアニスのメロディを奏でる。辛口のリコリスに始まり、グリーンの変化に応じて転調する。ライムソーダ水のような清涼感。恋人との粋な会話を楽しむにはもってこいの伴奏だ。しかも同じメナード作でブルガリの「ブラック」のように、知的な男性が手軽に身につけられる女性用の香水だ。以前、地下鉄に乗り込んだとき、ロリータレンピカの香りがする魅力的な若い男性が降りてきた。それが彼女の香水なら、ぴたりといい当てることができるくらい気のきいた男性であってほしい。おまけは可愛いボトル。― タニア・サンチェス

『「匂いの帝王」が五つ星で評価する世界香水ガイドⅡ』ルカ・トゥリン/タニア・サンチェス 原書房

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ロリータ・レンピカというブランド

©Lolita Lempicka

ロリータ レンピカという実に印象的な香りの名前は、そのブランドの名であり、デザイナーの名でもあります。

そして、デザイナーの本名をジョジアンヌ・マリーズ・ピヴィダと言います。1954年にフランスのボルドーに生まれたジョジアンヌは、6歳の頃からバービー人形のための服を自前で作り始め、10代にして自分自身の服を仕立てるようになります。そして、17歳で、ステュディオ・ベルソーに入学し、ファッション・デザインを学ぶことになります。

ツタの葉は、ファッション・デザイナーになった彼女のトレードマークとなりました。それは幼少期からの彼女自身の童話と自然に対する並外れた愛情から生み出されたものでした。1983年に29歳でブランドを創立したジョジアンヌは、そのブランド名を、ウラジーミル・ナボコフの小説『ロリータ』と、アール・デコの女流画家タマラ・ド・レンピッカから拝借し、ロリータ・レンピカとしました。

このネーミングの中に、彼女のファッション・スタイルの全てが投影されているのです。

史上最高にクールで美しい女流画家タマラ・ド・レンピッカ(1895-1980)。マドンナも影響を受けた。

タマラの傑作のひとつ『緑の服の女』(1927年)。

ロリータ・レンピカは1984年に東京でファッション・ショーを行います。そして、翌年、パリコレにおける初めてのファッションショーを開催します。レンピカは、1987年から90年にかけてキャシャレルのアーティスティック・ディレクターも兼任することになります。さらに、1987年よりオンワード樫山とパートナー契約を締結し、ブランディングは波に乗ることになったのでした。

ロリータと3人の娘(左の二人は双子)は全員ファミリービジネスに協力しています。2011年。©Lolita Lempicka

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そして、1997年にブランド初のフレグランスが誕生した!

ロリータ・レンピカが愛する童話の世界観を反映させたフレグランスを創造すべく生み出されたのが、この「ロリータ レンピカ」です。

リンゴをボトル・デザインにしたフレグランスと言えば、今ではニナ・リッチの「ニナ」が有名なのですが、その元祖とも言えるのがディオールの「プワゾン」です。一方、ロリータのリンゴは紫色です。そして、そのリンゴには、トレードマークである黄金のツタが巻きつけられています。さらに、リンゴのヘタの部分のゴールドキャップはカンゾウの木をイメージしたものです。

ボトル・デザインは、アラン・ド・モルグによるものです。


この香りは、リコリスがベースの香料として使用されています。リリコスというのは、スペインカンゾウの根とアニスオイルで味付けされたグミのような食感を持つお菓子です。それは童話の世界の中に迷い込んだ成熟した少女の幼さ×成熟のアンバランスな官能性を香りとして、アニック・メナードにより調香されました。

(ヴァイオレットとアニスが加わったハーバルな)アイリスと(「エンジェル」でも使用された)パチョリが柔らかいヴェールのように、リコリス、チェリー、プラリネが織り成すグルマンの上に重なっていく(=童話や昔のファイナル・ファンタジーの森の中で手に入れた薬草に甘いお菓子が絡み合う)という、現実感を感じさせない香りです。それはまさに、アニック・メナードという魔女が、そんな森の中で、大きな釜の中でトロトロの液体を煮てかき混ぜているようでもあります。

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アニック・メナードは調香師ではなく魔法使いだ!

この液体の甘い香りに惹きつけられた女子達は、やがて、その甘さではない部分の虜になってしまうのです。まさに恐るべき香りです。こうして、少女は、魔女の甘い毒の罠に絡めとられていくのです。この不思議な液体の味を知ってしまうと、もう純粋なリンゴの味では満足できなくなるのです(つまりは無垢ではない少女が、無垢を装うための禁断のリンゴでもある)。

そして、この香りは、明らかに女性のみが理解できる香りです。そこには、休むことの出来る染色体を持つ女性にのみ伝達される何物かが存在するのです。それはラストに登場するムスクとバニラが絡み合ったお母さんの母乳のような優しい香りによって証明されているとも言えます(スターアニスが含まれているのも勿論その一因です)。

しかし、何よりも、アニック・メナードがすごい(恐ろしい?)のは、1992年の「エンジェル」により大流行したグルマン・フィーバーの中で、ほとんど全てのグルマンの香りが、エチルマルトールを使用していたにも関わらず、彼女はこの有機化合物を使わずにグルマンを作り上げたところにあります。そして、この香りは史上初めてリコリス(そして、アニス)を主役にしたフレグランスになったのでした。

ちなみに香水のアカデミー賞と呼ばれるFiFi賞において、1998年に、フレグランス・オブ・ザ・イヤーの女性用ヨーロッパ部門(後にこの部門はなくなる)と、1999年にフレグランス・オブ・ザ・イヤーのラグジュアリー女性部門において、二年連続受賞しています。

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2010年にリニューアルされました。

©Lolita Lempicka

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2010年にこの香りは廃盤になり、同年に、「ロリータ レンピカ ル プルミエ パルファム」の名で発売されるようになります。

そして、2012年にエル・ファニングにより、新たなるキャンペーン・フィルムが撮影されたのでした。