バラッド ソヴァージュ
原名:Balade Sauvage
種類:オード・パルファム
ブランド:クリスチャン・ディオール
調香師:フランソワ・ドゥマシー
発表年:2018年
対象性別:ユニセックス
価格:40ml/15,950円、125ml/34,100円、250ml/48,400円
ディオールの「地中海の庭」
ディオールの「ラ コレクシオン プリヴェ クリスチャン ディオール」は、2004年に「コローニュ ブランシュ」「オー ノワール」「ボア ダルジャン」という3種類の香りからはじまりました。そして、2009年に「アンブル ニュイ」が発売され2017年までコンスタントに新作がリリースされていました。
このコレクションが、2018年に「メゾン クリスチャン ディオール」として一新されました。そして、新作のうちのひとつとして「バラッド ソヴァージュ」が発売されました。シチリアのエオリア諸島の中でも最も小さな島であるパナレア島をイメージした香りです。この島は、地中海有数のラグジュアリー・リゾート・アイランドです。
フレッシュなベルガモットとミネラルの火山岩の香りを備えた風に揺れるイチジクの香りです。ディオールの初代専属調香師フランソワ・ドゥマシーにより調香されました。
ところで、ディオールにとって〝パナレア〟とは、2009年秋に発表されたトートバッグの名としてよく知られています。「レディ ディオール」と同じカナージュステッチが特徴です。2014年にはニューバージョンも発売されました。
終わりなき日常から逃避する、無邪気な邪悪=イチジクの香り
〝バラッド ソヴァージュ=野生の中をお散歩〟という名のこの香りは、地中海の小さなラグジュアリー・アイランドの贅沢な太陽に愛されるように、穏やかな潮風と海水を感じさせる爽やかなベルガモットの風に乗り到来する、プチグレンとイチジクの葉の新鮮なグリーンの輝きからはじまります。
すぐにイチジクの果実の甘さがミルキーに広がってゆきます。そこに爽やかなオレンジ・ブロッサムとみずみずしいピーチが加わり、南国の開放感に包まれてゆきます。ディオールの「地中海の庭」とでも形容したくなる、透き通るような優雅さに満たされてゆきます。
ディプティックの「フィロシコス」やラルチザンの「プルミエ フィグエ」で感じるイチジクのフルーツの質感よりも、遠浅の海を泳ぎながら、太陽と波と潮風のハーモニーに身を委ねている時に、やってくる〝太陽と海に洗われるイチジク〟を感じることが出来ます。そんなとても繊細でフレッシュな、熟する前のグリーンなイチジクがそこにあります。
やがてパウダリーなバニラと流木のようなウッドが、すべてをひとまとめにして、温かな余韻を残してくれるのです。一見、他愛もないバカンス・フレグランスなのですが、実はこの香りの裏テーマは、終わりなき日常から逃避する香りという意味合いもあるのです。
この香りの先にあるのは、楽園?それとも、電気椅子?
〝バラッド ソヴァージュ=野生の中をお散歩〟その名は、1973年にテレンス・マリックが監督したアメリカ映画「地獄の逃避行」のフランス語の題名と同じです。間違いなくディオールは、この作品の世界観を意識して、その名を命名したはずです。
それは、15歳の少女が日々の退屈な生活から逃れるように、ゴミ収集作業員の青年の無軌道な殺人の旅に付き合うことになる物語。最終的に青年は逮捕され、電気椅子で処刑されます。
この香りには、明らかに、無邪気な邪悪が潜んでいるのです。
ちなみに映画「地獄の逃避行」のモデルは、実存した殺人鬼チャールズ・スタークウェザー(1938-1959)です。
南国の楽園気分に浸らせてくれる香りの先にある現実は、あなたにとってどんな世界なのでしょう。そしてそれがもし明るい未来の見えないものであるならば、現実からの逃避を促せるこういった香りの存在もかなり重要なのではないでしょうか...
香水データ
香水名:バラッド ソヴァージュ
原名:Balade Sauvage
種類:オード・パルファム
ブランド:クリスチャン・ディオール
調香師:フランソワ・ドゥマシー
発表年:2018年
対象性別:ユニセックス
価格:40ml/15,950円、125ml/34,100円、250ml/48,400円
トップノート:ベルガモット、プチグレン
ミドルノート:フィグ、ヘディオン、オレンジ・ブロッサム、ローズ、フィグ・ツリー、ピーチ
ラストノート:ラブダナム、小石、アンバーウッド、バニラ