パーフェクト ウード
原名:Perfect Oud
種類:オード・パルファム
ブランド:ミゼンジール
調香師:アルベルト・モリヤス
発表年:2016年
対象性別:ユニセックス
価格:日本未発売
皇帝アルベルト・モリヤスのブランド、ミゼンジールとは?

2013年にヴェルデーヌ通りにオープンしたジュネーヴの一号店 ©MIZENSIR.COM

娘ヴェロニクとアルベルト・モリヤス ©MIZENSIR.COM
私がこのブランドを妻と興したのは、ただただ自分の好きな香りを自由に作りたかったからです。つまり、想い出や、家族、過去の感情、あるいは過去の出来事を思い起こさせるような香りです。だから、一番好きなものは何かと聞かれても難しいのです。すべてが自分の子供のような気がするので。
香りの調香には、1年から6年かけます。それも毎日ではなく、週に1日か2日だけ作業する感覚で作り上げています。
アルベルト・モリヤス
1999年にジュネーヴで創業されたアルベルト・モリヤス自身のブランド、ミゼンジールは、当初キャンドル・コレクションからはじまりました。元々は、パトリック・フィルメニッヒにVIPの顧客のために提供するキャンドル・コレクションを作るように依頼されたことがきっかけでした。
「ミゼンジール(Mizensir)」とは、mis en cire(set in wax)とモリヤス(Morillas)のM、そして、真ん中のZenは、モリヤス一家が大切にしている禅の精神であり、Sirは英国の貴族精神=エレガンスを意味する言葉遊びです。
妻クロディーヌと娘ヴェロニクと共に運営しているファミリー・ブランドであるミゼンジールに、フレグランス・コレクションが誕生したのは2015年のことでした。きっかけはヴェロニクのアドバイスからでした(2011年以降は元弁護士でもある彼女がこのブランドの最高責任者でなる)。
そして「エディション ドゥ ヴェロニク」という娘の名を冠した香りを含む、9種のフレグランスを作りました。その翌年の2016年に「パーフェクト ウード」は誕生しました。
ミゼンジールのウード・コレクションの中でも最も人気のある香りです。天然のウードを使用せず、焚かれた木とお香の組み合わせにより、ウードの世界を創造しています。
このブランドで、ニッチな香りを作るつもりは全くありません。そうではなく卓越した製品を作りたいと思いました。最高の原料と合成香料を使い、これまでの経験を生かして、誰かのためではなく、自分のために何かを作りたかったのです。
私たちにとって重要なのは香りです。最高の品質の香水を作ることが最も重要で、この理由から、私は広告に予算を割かないことに決めました。
アルベルト・モリヤス
天然のウードを使わずに、天国にいちばん近いウードを生み出そう!

©MIZENSIR.COM

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マスターパフューマーとして、ウードのノートを一切使わずにウードを中心とした香りを創り出すというのは、大胆な決断だと考えています。
香水におけるウードの表現方法は様々ですが、私は焦がした木やお香のノートを通して表現し、その刺激的でスモーキーとも言える個性を際立たせることにしました。この想像力豊かなプロセスの結果は、革新的で、驚くほど新鮮なものとなりました。
アルベルト・モリヤス
世界の香水市場に向けてはじめて生み出されたウード・フレグランスは、2002年にイヴ・サンローランから発売された「M7」と言われています。この香りは、トム・フォードの指揮下で、アルベルト・モリヤスとジャック・キャヴァリエにより創造されました。
セールス的には大失敗だったのですが、2007年にトム・フォードは、自身のプライベート・ブレンドから「ウード ウッド」を発売し、リベンジに成功します。この香りにより、空前のウード・フレグランス・ブームが起こり今に至ります。
以後、「M7」を調香した二人の調香師は『ウードの始祖』と呼ばれるようになります。そんな始祖の一人アルベルト・モリヤスが、一切のウードを使用せずに生み出したウード・フレグランスが「パーフェクト ウード」です。
高価な精油である天然のウードを一切使用せず生み出すウード・フレグランス。これはある種、市場に氾濫するウード・フレグランスの〝暴露本〟のように種明かしをしていくような危険な香りとも言えます。さらに言うと、〝ウードを一切使わずにウードのフレグランスを作る方法〟のハウツー本とも言えます。
天然のウードを使用せずとも〝完璧なウード〟は創造できると宣言するこの香りは、爽快に弾けるベルガモットとグリーンスパイシーなコリアンダーのハーモニーからはじまります。
すぐにエアリーに甘やかなパウダリーローズの香りと共に、ウードの小片に火をつけたような燻った木の香りが広がってゆきます。だんだんとローズは、ジャムのようなフルーティーさを解き放ってゆきます。ただしローズはあくまで一歩引いて存在する頼もしい側近のようです。
そしてこの香りの主役であるアラスカ・シダーが到来します。(焦げたガソリンのような)グリーンスモーキーなジュニパーが加わることにより、アラスカ・シダーのスエードレザーのようでありインセンスのようであるそのニュアンスが滑らかな深みを増して広がります。
最後に魔法の粉のようにアイリス・コンクリートが素肌に舞い落ち、ウード・フレグランスで支配的になる重々しさとダークな輝きと扱いにくい黒魔術感という三重苦を吹き飛ばし、ウードの持つ明るくフレッシュな木の感覚を引き出してゆきます。軽やかで明るくてフレッシュなスモーキーな木の香り、つまりはクリスタルのようなウードの輝きに包まれる香りです。
かくして夏でも冬でも、TPOをわきまえている〝社交的な人当たりの良い洗練されたウード〟が素肌にとろけてなめらかな余韻を残していくのです。控えめなウードの存在が、まるであなたの隣で絶世の美男子(または美女)が静かに佇んでいるような洗練されたエレガンスに包み込まれていくようです。
ウード・フレグランスでは、滅多に使うことのない〝静かに輝く〟〝明るくいつも隣で笑顔で居てくれる〟〝清潔感に満ちた〟といった言葉を感じることが出来る香りです。
この香りの翌年にモリヤスが生み出したグッチの「グッチ ギルティ アブソリュート プールオム」は、この香りの系譜とも言えます。
香水データ
香水名:パーフェクト ウード
原名:Perfect Oud
種類:オード・パルファム
ブランド:ミゼンジール
調香師:アルベルト・モリヤス
発表年:2016年
対象性別:ユニセックス
価格:日本未発売
トップノート:ベルガモット・エッセンス、コリアンダー・エッセンス、ブルガリアン・ローズ・エッセンス
ミドルノート:アイリス・コンクリート、ウード・アコード
ラストノート:アラスカ・シダー・エッセンス、ジュニパー・エッセンス