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チャンス オー タンドゥル|最高の最初の香水。世界で一番売れている「チャンス」

シャネル
©CHANEL
シャネル
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チャンス オー タンドゥル

原名:Chance Eau Tendre
種類:オード・トワレ
ブランド:シャネル
調香師:ジャック・ポルジュ
発表年:2010年
対象性別:女性
価格:35ml/10,340円、50ml/15,180円、100ml/21,230円
公式ホームページ:シャネル

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世界で一番売れている「チャンス」は、やさしく愛して下さい。

500枚以上撮影され生み出されたビジュアル・イメージ。©CHANEL

1996年の「アリュール」(2001年に発売された「ココ マドモアゼル」は「ココ」のフランカーである)以来となるシャネルの女性用の新作フレグランスとして、2002年に発売された記念すべき「チャンス」シリーズの第三弾として「チャンス オー タンドゥル」は、2010年4月に発売されました。

「タンドゥル」とは、フランス語で「優しい」「柔らかい」という意味です。フルーティフローラルの香りとして、シャネルの三代目専属調香師ジャック・ポルジュにより調香されました。

香水をつけぬ女に未来などない。

ポール・ヴァレリー

ジャック・ポルジュ最後のチャンスでもあり、三作目にして生み出された、日本をはじめとする世界中で最も売れているチャンスです。

このチャンスは、たくさんの愛用者の中で間違った使い方をされていることでも有名です。その名の通り〝やさしく愛して〟あげないといけない香りなのですが、至近距離でたくさん吹きかけてしまうことにより、その〝やわらかな上品さ〟ではなく、ただただ強いピンクの香りで武装してしまい、〝パブリック・エナミー・ナンバーワン〟の悪名を頂く結果になってしまっているのです。

「チャンス オー タンドゥル」の付けこなし方は単純に、控えめに素肌に寄り添わせるように吹きかけるだけで十分なのです。すると背中の大きく開いたロングドレスを着るように、極めてエレガントに、ヌード以上にそのボディラインを感じさせることが出来るのです。

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チャンスから広がる香りの世界

©CHANEL

〝三回目のチャンス〟は、マーマレード・ジャムの元祖とも言えるマルメロという珍しい果実がグレープフルーツとシンクロするようにしてはじまります。ピリっとしたスパークリング感は全くなく、そこには煌めくような甘いジューシーさが、ほのかな苦みと酸味と共に、若い女性にとって〝若さの特権〟を引き出し、成熟した女性にとっては〝失われた若さ〟を蘇らせてくれるようです。

しかし、この香りが〝優しい、柔らかい〟と名付けられている理由は、この後に現れるパウダリーなヒヤシンス、アイリス、ジャスミンという個性的な花々のブレンドが生み出す〝静謐さ〟にあるのです。

つまりこの香りにおけるジャック・ポルジュの偉業は、若さと成熟の境界線を見事に取っ払ったところにあります。そしてベースのホワイトムスクとシダー、アンバーがこの香りに、エアリーでクリーミーな透き通るような生命力を与えているのです。

すべてが見事にひとまとめにまとまり、ホワイトムスクによるソーピィーな青リンゴ、バナナ、ストロベリーを感じさせるフルーティさがあり、若々しく、陽気でありながら、上品で礼儀正しい、それでいて忘れられない印象を残す香り。

この香りを上手くつけると、ここまでビジネスに向いている香りはないと断言できるほどに、社会進出を果たした女性の守護神になり得る香りです。

パチョリが排除されシプレの要素を完全に取り除いた〝三回目のチャンス〟の意図はボトル・デザインにおいてもはっきりと示されています。それはシルバープレートに包まれたピンクの円形のボトルなのですが、つまりは、ピンクの香りなのです。

2010年2月に世界同時発売に先駆けて、青山のシャネルにおいて先行販売されたという事実がこのフレグランスのマーケティングが、フレグランスに対して情報弱者が集まる国(今ではなく2010年当時)=日本をターゲットにしたチャンスという名の〝狩り〟であることを明らかにしています。

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インスタント食品の美味しさ=三代目チャンス

©CHANEL

しかし、この〝狩り〟によって、フレグランス愛好者の人口が拡大されたという事実によって、「チャンス オー タンドゥル」ほど、日本のフレグランス文化の成熟に貢献した香りは存在しません。

そういう意味においては、〝チャンスからはじまる女としての第一章の扉を開けてくれる香り〟とも言えます。

一種の男性ウケの良い香りとしても持て囃される香りなのですが、「この香りを身に纏うと、男性が私を見てくる」という香りに関しては、ミニスカートを履いている女性と同じく、「軽薄そうな」という意味が含まれています。

本当に魅力的な女性に対して、直視できないのが、日本人の男性であり、直視されると言うことは、それだけ、女性として「安く」値踏みされていると言うことなのです。それを誘導する香りは「モテ香水」と言うよりも「安い女の値札をつける香り」なのです。

最後に、この香りは、実用性においてはピカ一だと思います。それはまるで1000円くらいのお金を払って『無鉄砲』『麺ジンさいとう』のような素晴らしいラーメンを食べるのとは別に、100円ちょっとで食べることができるサッポロ一番塩ラーメンのような魅力があるからです。チャンスとはサッポロ一番なのです!(私はサッポロ一番塩ラーメンが大好き!)

だからこそ、このボトルの可愛さも含めて、一本は所有しておいてムダのない香りであることだけは確かです。はっきり言って、高級な香りや、頭を使う香りばかり飼いでると本当に疲れます。ときには、ただ単に〝ウッホ~~〟という気分になる香りに包まれたいものですから。

当時キャンペーン・モデルにスーパーモデル・シグリッド ・アグレン(1991-)が起用され、天才フォトグラファー・ジャン=ポール・グードがフォトを担当しました。

マーク・ジェイコブスの「デイジー」とよく比較される香りです。

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香水データ

香水名:チャンスオータンドゥル
原名:Chance Eau Tendre
種類:オード・トワレ
ブランド:シャネル
調香師:ジャック・ポルジュ
発表年:2010年
対象性別:女性
価格:35ml/10,340円、50ml/15,180円、100ml/21,230円
公式ホームページ:シャネル


トップノート:グレープフルーツ、マルメロ
ミドルノート:ジャスミン、ヒヤシンス
ラストノート:ホワイトムスク、アイリス、ヴァージニア・シダー、アンバー