究極のフレグランスガイド!各ブランドの聖典ページ一覧にすすむ
その他のブランド

トミーガール (カリス・ベッカー)

その他のブランド
この記事は約4分で読めます。

香水名:トミーガール Tommy Girl オーデ・コロン
ブランド:トミー・ヒルフィガー
調香師:カリス・ベッカー
発表年:1996年
対象性別:女性
価格:30ml /5,616円、50ml /8,100円、100ml /11,340円










★★★★★ ティーフローラル

私の記憶にある限り、トミーガールほど値段の安さゆえに不当な評価を得ている香水はない。手頃な価格設定に苦しめられている香水なのだ。まるで、節操のない下品な女みたいにいわれている。これってあまりに不当。安くても良質な香水はいくらでもある(プリュ、カヌー、ジェニファー・ロペスのデビュー作など)のに、世間ではいまだに嗅覚が得るものよりも、財布から出ていくもので香水を評価したがる俗物が大手を振って歩いている。トミーガールのオリジナルについて、製作者のカリス・ベッカーから説明を受けた。彼女はサモワールにいつも湯を沸かしていて、風変わりなお茶に愛着をもっている母親がいるような、そんなロシア系の家庭で育った。ジボダンの著名な科学者ローマン・カイザーは、ベッカーにそそのかされ、その独特な香りの元を探るべく、パリにある紅茶専門店マリアージュ・フレールまで匂いを嗅ぎに行ったそうだ。こうして、茶のベースノートが生まれたが、誰も興味をもたなかった。茶の香りを使うという着想は、その後数年、ジャン=クロード・エレナの秀逸な、しかしあまり茶の香りがしない、「オ パフメ テヴェール」(ブルガリ)が1993年に出てくるまで、お預けをくらっていた。この香水の成功のおかげで、ベッカーは茶の香りの調香を、トミー・ヒルフィガーに提案することができたのだ。こうして彼女はチャンスを勝ち取り、1100種類の試作を経て、優秀な評価者の協力のもと、ついに香水が完成したのだ。香水のベースノートとして茶を使うのはたいへん筋が通っている。なぜなら、フレイバーティーが証拠となるように、いくらでも変化がつけられるからだ。ラプサンスーチョン、アールグレイ、ジャスミンティー、などなど。その観点からいえば、茶はシプレの現代版として使える。好きなように着せ替えができるマネキンのようなものだ。「トミーガール」はいうなれば闘牛士の光り輝く衣装を着せられた。爽やかなフローラルアコードは、心が浮き立つほどに輝き、今後のすべてのフレグランスの基準として使えるだろう。注目すべきことは、プロジェクトも終盤に差しかかったころ、カリス・ベッカーはトミー・ヒルフィガーの広告代理店に、典型的なアメリカのフレグランスと銘打てる根拠がほしいと頼まれたときのことである。クエスト社専任の植物の専門家が召喚されると、誰もが驚いたことに、配合が、きれいにいくつかのグループに分かれている、それぞれが、明らかに典型的なアメリカ原産の植物の香りだったことが分かった。つまり、このプロジェクトは多大なる天使の後押しがあって完成したものなのだ。― ルカ・トゥリン

配合が奇跡のように、典型的なアメリカ原産の植物のアコードに当てはまっていることがわかった?私はちょっとそれには懐疑的だ。とはいっても、トミーガールはすばらしい香りだ。そして、これでもかというほどたくさんの模倣品が出ている。― タニア・サンチェス

『「匂いの帝王」が五つ星で評価する世界香水ガイドⅡ』ルカ・トゥリン/タニア・サンチェス 原書房

トップノート:ブラックカラント、カメリア、マンダリンオレンジ、アップルツリーブロッサム
ミドルノート:ハニーサックル、リリー、ヴァイオレット、ミント、グレープフルーツ、レモン、ローズ
ラストノート:マグノリア、レザー、サンダルウッド、ジャスミン、シダー

アメリカを代表するカジュアルファッションブランド、トミー・ヒルフィガーがエスティ・ローダーとパートナーシップを組んだ1995年に「トミー」は誕生しました。そして、第二弾として1996年に発売された歴史的な名香が、「トミーガール」です。

フルーティフローラルに包まれた紅茶の香りは、カリス・ベッカーにより調香されました。カリスの処女作にして伝説になった香りです。それは、世紀末のアメリカン・ガールを捉えた香りであり、ジャン=クロード・エレナの「オ・パフメ テヴェール」の流れをくむ、紅茶フレグランス・ブームの立役者なのです。

エレナが生み出した世界初の茶の香り=「テヴェール」も、パリにある紅茶専門店マリアージュ・フレールから生み出されたように、この香りも同時期、カリス・ベッカーが同じ場所から香りのインスピレーションを広げていったのでした。

2006年には10周年を記念して「トミーガール10」が発売されました。