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マレーネ・ディートリッヒ

舞台恐怖症(1950)【映画の中のファッション】(3ページ)

マレーネ・ディートリッヒ
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作品名:舞台恐怖症 Stage Fright(1950)
監督:アルフレッド・ヒッチコック
衣装:クリスチャン・ディオール
出演者:マレーネ・ディートリヒ/ジェーン・ワイマン/リチャード・トッド

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マレーネ・ディートリッヒが最も美しい作品


マレーネ・ディートリッヒ(1901-1992)という女優は、オードリー・ヘプバーンやグレース・ケリー、ブリジット・バルドーと同じくらい女性にとっては、タイムレスなファッション・アイコンなのですが、彼女ほど、現代人にとって親しみを覚えにくい女優はなかなか存在しません。

なぜならば、彼女の出演した映画作品は、現代の観点から見るとそれほど面白くないものが多いからです(他のアイコン達よりも時代が少し古いのもその理由のひとつなのですが)。その時代の空気を捉えて見ないと、すっかり退屈してしまいます。それはある意味、オペラ鑑賞やクラシック音楽鑑賞に似ており、その世界観を理解するためには、ある程度の感性と教養が求められるのです。

結局のところ、より下品なたとえをするなら、ラグジュアリー・ストリートは、無教養であろうとも、ファッションIQが低かろうと容易に理解できるのですが、ディートリッヒ・スタイルは、ある程度のファッションIQと教養が求められるスタイルだということなのです。

そして、ディートリッヒ・スタイルの極めつけの作品が、『舞台恐怖症』であり、この作品の、彼女の全ての衣装はディオールなのですが、それは現在で言う所のディオール社が提供した衣装という意味合いではなく、パリで、クリスチャン・ディオールにより、直々に仕立てられた衣装をディートリッヒは着ているということなのです。

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マレーネ・ディートリッヒ。当時、47歳。




まだこの作品は、ファッション・ムービーとして正当な評価を受けていない作品なのですが、この作品ほど、マレーネ・ディートリッヒが美しい作品はありません。

1901年12月27日生まれのディートリッヒが、この作品の撮影に参加したのは、1949年5月31日から9月19日の間なので、彼女は当時47歳でした。つまりは、この作品は、そういった成熟した女性のエレガンスを示す絶好の教科書として、素晴らしいファッション資産価値を持つ作品なのです。

まずオープニング・ファッションとして登場するのが、このプリーツドレスです。

プリーツドレスは、今では、時代を超えた定番アイテムとして定着しているのですが、このディートリッヒのシューズがダメな様に、やはりこういった生地で魅せるドレスには、足元はきわめてシンプルな方が映えます。

ファッションの基本は、〝一点集中〟にあります。その一点に他人の眼差しを集中させるために、他のパーツのバランスに細心の注意を払うわけなのです。つまりは、魅せ所を分散してしまうとそのファッションの魅力は半減どころか、1/10にもなってしまうのが、ファッションの恐ろしいところなのです。

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大人の女のエレガンスは足首で表現するもの。



オープニング・シーンで着ている美しいドレープコート。大人の女のエレガンスは足首で表現するもの。

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スカートの丈が全てを決する。


ほんの一瞬だけ登場するディオールの典型的なスカートスーツ。腰から下の女性の最も美しいラインを生み出すのが、このスカートの丈感です。ディートリッヒほど、スカートの丈について細かい指示を出す女優はいませんでした。