ローズ カブキ
原名：Rose Kabuki
種類：オード・パルファム
ブランド：クリスチャン・ディオール
調香師：フランソワ・ドゥマシー
発表年：2018年
対象性別：ユニセックス
価格：40ml／19,140円、125ml／39,600円、250ml／55,880円
公式ホームページ：ディオール
ピーター・フィリップス×五代目尾上菊之助
尾上菊之助とピーター・フィリップス ©VOGUE
私は日本の伝統的な美しい歌舞伎の白塗り化粧に思いを寄せたとき、白いコットンのようにパウダリーなムスクに包まれた繊細なローズの香りを創りたいと思いました。この香りの中心は、ピンクのローズの花びらが、光を帯び、白いローズの花びらに生まれ変わる瞬間です。その愛撫するようなやわらかな肌ざわりに、真珠のような露が光るみずみずしいグリーンがアクセントを添えるのです。
フランソワ・ドゥマシー
ディオールの「ラ コレクシオン プリヴェ クリスチャン ディオール」は、2004年に「コローニュ ブランシュ」「オー ノワール」「ボア ダルジャン」という3種類の香りからはじまりました。そして、2009年に「アンブル ニュイ」が発売され2017年までコンスタントに新作がリリースされていました。
このコレクションが、2018年に「メゾン クリスチャン ディオール」として一新されました。そして、新作のうちのひとつとして「ローズ カブキ」が発売されました。ディオールの初代専属調香師フランソワ・ドゥマシーにより調香されました。
自分ほどの日本通はいないと自称するドゥマシーが、日本の伝統芸能である〝歌舞伎〟から着想を得て創り上げた香りです。さらに、同じく古いものも新しいものもすべてひっくるめて日本文化ガ大好きなディオールの三代目アーティスティック・ディレクター、ピーター・フィリップス（2014－）の話からも強い影響を受けている香りです。
その話とは、2009年のシャネル時代にピーターが五代目尾上菊之助（1977－、 富司純子の子）から教わったカブキ・メイクについてでした。その内容は以下のものです。
歌舞伎役者は、男性が女性を演じ、役者自身でメイクをします。メイクはまず最初にシェービングからはじまります。眉を完全に剃ります。次に、かつらがずれないように梳き油というワックスで髪を固めます。
そして、おしろいです。まず油と混ぜた練りおしろいを鼻筋にすーっと引いて鼻を高く見せます。白のみを使い立体感を見せるのがポイントです。舞台では顔の真ん中を強調したメイクであるように心がけなければなりません。
次に、みずみずしいピンクの頬紅を、ほっぺではなく目の周りにまぶします。さらに目尻に鮮やかな赤を引きます。これは昔は舞台の灯りが蝋燭だったので、ほの暗い灯りの中で、目元を強調させるために使われるようになったからです。そして目頭に黒を入れます。少し目を寄せて見せる効果が生まれます。
最後に眉毛を引きます。笹眉を使い、笹の葉っぱの形に眉を描くのです。黒だけだと印象が薄くなるのでその下に赤を引きます。歌舞伎のメイクというものは、日本画のように少しぼけているほうが良いのです。
このピーター・フィリップスが菊之助から伝授されたカブキメイクの精神を、ドゥマシーはディオール流にアレンジしたのでした。だから、この香りの主役はピンクのローズと白塗り化粧のようなパウダリーなムスクなのです。
今にもその美しさが露となりこぼれ落ちていきそうな香り
©DIORBEAUTY
©DIORBEAUTY
とても素晴らしいローズの香りです。それは舞台の幕が上がるのを待つローズのようです。スプレーから苦みのない澄み渡るグリーンノートと共に広がるローズは、ピュアで清らかで厳かです。すぐに幕が開き、パウダリーなムスクの照明がローズを照らしてゆきます。
そして、ローズは目覚めるのです。キラキラと光り輝くような美しさを、白く塗られたメイクアップの中で、赤を重ね、美しさを際立たせていくように、生き生きと、ローズはムスクの中で奥ゆかしくも気高く透き通るようなきらめきを素肌の上に解き放ってゆくのです。
まるで今にもその美しさが露となりこぼれ落ちていきそうな、生まれたてのビューティに包まれていくような香りです。どこか、ルイ・ヴィトンの「ローズ デ ヴァン」がよりピュアになったような感触も感じさせます。
香水データ
香水名：ローズ カブキ
原名：Rose Kabuki
種類：オード・パルファム
ブランド：クリスチャン・ディオール
調香師：フランソワ・ドゥマシー
発表年：2018年
対象性別：ユニセックス
価格：40ml／19,140円、125ml／39,600円、250ml／55,880円
公式ホームページ：ディオール
シングルノート：ローズ、ムスク、デュードロップ