パイ
原名:π(Pi)
種類:オード・トワレ
ブランド:ジバンシィ
調香師:アルベルト・モリヤス
発表年:1998年
対象性別:男性
価格:50ml/11,330円、100ml/16,280円
公式ホームページ:ジバンシィ
1999年、世界中の男たちはバニラに溶け込む。
1994年に「ウルトラマリン」によって、メンズ・フレグランス市場におけるマリンノート・ブームに便乗し、〝パイオニアである〟と名乗りを上げるほどの図太さを発揮したジバンシィは、1997年1月に更なる一手を打つことにしました。
ロレアルでパロマ・ピカソ、ラルフ・ローレン、ランバンの香水の開発を指揮し、フィルメニッヒのMDとして3年間活躍していたジュリエット・ラピナト=フロイトガーを、パルファム ジバンシイのマーケティング・ディレクターに就任させたのでした。
就任早々の彼女の仕事は、ジバンシィに栄光をもたらす第二弾メンズ・フレグランスを生み出すことでした。かくして、フィルメニッヒで最も彼女が信頼していた調香師アルベルト・モリヤスは召喚されたのでした。
そして、1998年10月6日にヨーロッパ全土で発売されたメンズ・フレグランス「パイ π」(=終わりのない無限の数=円周率)は、北米と日本で、1999年から順次発売され、瞬く間に〝男性のためのバニラ革命〟を発動し、世紀末の男たちを、バニラでメロメロにさせたのでした。
「無限よりもさらに遠くへ」そして人類の発展のために常に知識や才能に挑戦し続ける男性たちに贈る、人類の終わりのない挑戦を称えるという大風呂敷を広げただけある画期的な香りです。
宇宙飛行士をイメージしたキャンペーンフォトが連想させるように、コズミック・ウッディと名づけられたこの香りの最終到達地点は、〝男たちのミルキーウェイ〟なのです。
永遠に終わらない旅のはじまり
煌くようにジューシーなマンダリン・オレンジに、フレッシュなガルバナムが掻き混ぜられたクリーミーな苦い甘さからこの香りははじまります。
ちなみに公式サイトのミドルノートに記載されているアンフィニウム(Infinium)という香料は、フィルメニッヒのオリジナルの大麦ベースの精油であり、香り全体にアクアティックな効果を生み出すということです。
すぐに四種のハーブ&スパイス(ローズマリー、タラゴン、バジル、そしてアニス)がベースのトンカビーン、アーモンド、バニラと溶け合い、焦げたシナモンキャラメルのような香りとなります。そして、ネロリ、オレンジ・ブロッサム、キンレンカといったフローラルをほんのり効かせながら、グルマンノートが万華鏡のように様々な一面を見せてゆきます。
やがてフローラルが減退する中、グラン・マルニエのような香りを経て、ハーバルな苦味とパウダリーなアーモンドバニラが渾然一体となった香りをベンゾインが優しくシンクロするようなうっとりするような甘さで包んでゆきます。
ロシャスの「ロシャスマン」と共に、2000年代はじめのメンズ・フレグランス市場を席巻したグルマンの香りです。ディオールの「ヒプノティック プワゾン」ともよく比較される香りです。
ただし、現在ジバンシィのコスメカウンターで販売されているパイは2002年にリニューアルされたものであり、よりハーブが強く、フローラルは弱くなっています(より男らしく、エッジーさは失われた)。
近未来的なボトル・デザインは、「アマリージュ」のデザインも担当したセルジュ・マンソーによるものです。本作のロングセラーにより、2001年にはパイ・フレーシュ、2004年にはパイ・メタリック・コレクター、2006年にはパイ・オリジナル・コードとパイ・レザー・ジャケット、2008年にはパイ・ネオ。そして、2017年にはパイ・エアーが生み出されました。
ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「パイ」を「気持ちがいいほど何もない」と呼び、「どうしようもないデザインの参照例。わけのわからない瓶、奇妙な宇宙飛行士の宣伝。気品はあるが救いようもなく安っぽいし、水っぽいマンダリンアンバーの香りは、おそらく3.14秒だけ興味を引き付けられる。」と1つ星(5段階評価)の評価をつけています。
香水データ
香水名:パイ
原名:π(Pi)
種類:オード・トワレ
ブランド:ジバンシィ
調香師:アルベルト・モリヤス
発表年:1998年
対象性別:男性
価格:50ml/11,330円、100ml/16,280円
公式ホームページ:ジバンシィ
トップノート:ローズマリー、マンダリン・オレンジ、ガルバナム、パインニードル
ミドルノート:タラゴン、バジル、オレンジ・ブロッサム、キンレンカ、ガイアックウッド
ラストノート:トンカビーン、アーモンド、ベンゾイン、バニラ