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セルジュ・ルタンス

【セルジュ ルタンス】ニュイ ドゥ セロファン(クリストファー・シェルドレイク)

セルジュ・ルタンス
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ニュイ ドゥ セロファン(セロファンの夜)

原名:Nuit de Cellophane
種類:オード・パルファム
ブランド:セルジュ・ルタンス
調香師:クリストファー・シェルドレイク
発表年:2009年
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/19,800円、100ml/30,140円
公式ホームページ:セルジュ・ルタンス

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天空に輝く星々を自由に連ね、あなたの物語を作りましょう。

©Serge Lutens

夜がひろがる。 星のまたたきと地面の間は、甘く透明なかぐわしさで満ちている。美しい夜行性の虫たちがリクエストする。「もしもしお嬢さん。このあたりの空気をぜんぶ包んでいただけますか?」「贈り物ですか?」「ええ、あなたへの」

公式ホームページより

セルジュ・ルタンスの「コレクションノワール」より、2009年に発売された「ニュイ ドゥ セロファン」は、フルーティ・フローラルの香りです。クリストファー・シェルドレイクにより調香されました。

セルジュ・ルタンスが、猛暑のマラケシュの街中から自宅に戻り、庭で休んでいた時に、夜の帳が下り、空には星が燦然と輝きを増し、虫たちの話し声が聞こえていた。そんな空気や気配をすべてラッピングしてプレゼントしたい。

天空に輝く星々を、自由に連ね、私だけの星座を作り、それをラッピングしてみましょう。

そういった感情から生まれた香りです。ネーミングの影響を受けたのは、1938年にドイツで勃発した反ユダヤの暴動である〝ニュイ ドゥ クリスタル=水晶の夜〟。破壊されたガラスが月明かりに照らされ水晶のようにきらめいていたことからヨーゼフ・ゲッベルスがそう名付けました。

〝セロファンの夜〟という名の香りのこのセロファンとは、1912年にジャック・ブランデンベルガーによって発明された物質です。その透明で細菌を通さない特性により、食品の包装材料や、光を屈折させる鑑賞的な見栄えのよさからお菓子や花束を包み、ロマン主義的な装飾材料としても重宝されました。

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『7月の京都』をイメージした香り

私にとってこの香りは、特別な瞬間を想い出させます。それはマンダリンとジャスミンが香るうだるような暑さの中で時差ぼけと疲労に悩まされた7月の京都です。

セルジュ・ルタンス(日本に向けて発信されていないメディアでのインタビューにて)

この香りの名の意味には、夜を密封保存する意味と、夜に色セロファンをレイヤードする二重の意味があります。それは星の煌きに色々な色を与えていくような香りなのです。

真夏の夜の夢が心の中に広がってゆくように、熟したマンダリン・オレンジにグリーンジャスミンが溶け込んでいくような粛々としたフルーティフローラルからこの香りははじまります。

あまりに円やかで心地よい香りに包まれ、ふと目を覚ますと、ここが南国のリゾートであることを思い出します。そして、ヴィラから外に出て、夜空を見上げると、星々がこの上なき輝きで、私を覆いつくしてくれていることを知るのです。

その煌く星々に包まれていく至福の瞬間を象徴するように、オスマンサスが甘露なる(ピーチ風かつレザリーな)アプリコットのような芳香を解き放つ中、ビターアーモンドが得も言われぬパウダリーかつチェリーの香ばしい酸っぱさを加えてゆくのです。

やがて、その星々の中からお気に入りの連なりを見つけ出し、自分だけの星座を作って、それを切り取り、ラッピングを施すように、クリーミーなリリーとメタリックなカーネーション、そして、可憐なるローズとアニマリックなチューベローズが現れ、蜂蜜とムスク、サンダルウッドによって、夜空の星々は、夜空に煌く白い花々へと生まれ変わってゆくのです。

〝セロファンの夜〟それは、セロファンを通して見る女性の姿とも言えます。どんなに生き生きとした女性もセロファンを通して見ると、人工的な人形のように見え、整形が施された美女に見えるというフルーティフローラルというセロファンで我が身に覆い尽くす香りとも言えます。

その静けさとミステリアスを伴った甘いフルーティフローラルの息吹は、疑いようもなく〝夜に咲く花〟を連想させます。

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〝はじめのルタンス〟または〝香りへの初恋〟を思い出させる香り。


「ニュイ ドゥ セロファン」には、それまで芸術作品を生み出してきた映像作家が作った、誰が見ても楽しめる「スピルバーグのような映画」、または、超一流のファッション・デザイナーが、ユニクロとコラボして生み出した、誰もが着たくなる服のようなニュアンスがあります。

そのため、セルジュ・ルタンスが好きな人にとっては、〝裏切り〟のように感じる何の変哲もないフルーティフローラルに感じられるのですが、実際に肌に乗せてみると、オスマンサスのレザーの側面が、肌の上でドライフルーツをなめし、甘やかに引き伸ばしてくれているような、ルタンス独特の香り立ちを感じることが出来ます。

中高生の女性にとっても、心地よい香りのシャンプーを使うように身にまとうことが出来る〝最初のルタンス〟。でありながら、セルジュ・ルタンスを愛用してきた人々がこの香りを身にまとうと、ストレートにハートを射ち抜かれるような〝香りに対する初恋〟を思い出させてくれる香りとなるのです。

タニア・サンチェスは『世界香水ガイド』で、「ニュイ ドゥ セロファン」を「プラム・ピオニー」と呼び、「ルタンスはゴシック風の妖艶な粋を追求する美意識にもかかわらず、香水づくりでは俗悪さに何度も(ときに華々しく)屈している。日焼けローション「ダチュラノワール」と、虫歯になりそうな砂糖漬けチェリー「ラハトルクーム」、繊細なレース装飾の「サ マジェステ ラ ローズ」、ふくらました髪型とアクリルネイルの「アラニュイ」などだ。」

「この作品もまた、判断の劇的なつまづきだ。「ジャドール」のフルーティフローラルを煮詰めてシロップにしたけれど、どうしても希釈が必要になったという感じ。」「フローラルはこのジャンルではましだけれど、気の滅入る凡庸さは克服できず、「サラザン」「エル アッタリーン」の創作力からはステップダウンした。」と3つ星(5段階評価)の評価をつけています。

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香水データ

香水名:ニュイ ドゥ セロファン(セロファンの夜)
原名:Nuit de Cellophane
種類:オード・パルファム
ブランド:セルジュ・ルタンス
調香師:クリストファー・シェルドレイク
発表年:2009年
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/19,800円、100ml/30,140円
公式ホームページ:セルジュ・ルタンス


シングルノート:マンダリン・オレンジ、オスマンサス、ジャスミン、グリーンノート、カーネーション、リリー、ムスク、アーモンド、サンダルウッド、蜂蜜