舞い散る雪の美しさと儚さを体現する白い着物
『修羅雪姫』という劇画の主人公を演じる半年前の1973年はじめに梶芽衣子様(1947-)は、『仁義なき戦い 広島死闘篇』で深作欣二監督の作品にはじめて出演しました。
壮絶なる悲劇のヒロインとも言えるこの役柄を演じ上げたことが、〝舞い散る雪の美しさと儚さを体現する白い着物〟を着た凛とした主人公へと繋がっていくのでした。
深作欣二監督の作品に出演することになるきっかけは『現代やくざ 人斬り与太』(1972年、渚まゆみ様が素晴らしい!)を見て感動した梶様が、東京の撮影所の廊下で初対面の深作監督に「僭越ですが、とても面白かったです」と話しかけたことからはじまります。
「女性から絶賛されるとは思わなかった」「会社では評判が悪いんだ」と謙遜した深作監督に対し、「面白いかどうかは客が決めることで、客の立場で見て私が面白いと思うんだからいいじゃないですか?」と言った〝清さ〟に、監督は感動したのでした。
花が咲いていくような、生が弾けるような感じがしない女優さんです。あの人には、どこか生が閉ざされているところがある。色っぽさがあるんだけど、濡れて開くというイメージではないのです。
深作欣二
修羅雪姫の衣装3
白色の綸子の着物
- 白色の綸子の着物、家紋入り、半衿
- 濃紺の帯、水色の帯締め、後見結び
- 緋色の裾よけ
- 珊瑚の玉簪
- 仕込み刀の蛇の目傘
- 素足に黒塗りの二枚歯の下駄
修羅雪姫の衣装4
白色の綸子の着物PART2
- 白色の綸子の控えめな花柄の着物、半衿
- 紫の帯、金色の帯締め、太鼓結び
- 緋色の裾よけ
- 漆塗りの前櫛
- 仕込み刀の蛇の目傘
- 素足に黒塗りの二枚歯の下駄
「許しもしないし、助けもしない!」
仲谷昇(1929-2009)が、本当にいい芝居をしています。しかも、その死にざまの凄まじさは他に類を見ないものでした(浅瀬の岩の上に仰向けに倒れこみ、波に飲み込まれながらも、死体を演じ続ける、絶対鼻の穴に逆流した海水が入り込んでる死にざま)。
そんな母親の敵である仲谷に梶芽衣子様が言い放つセリフが凄まじいのです。
「行こうか。迎えの者さ。お前を一番ふさわしい所へ連れていく、迎えの者だよ。さ、死出の旅にでかけようか。」
「ようく見てごらんわたしの顔を。お前たちが、なぶりものにしたその女にどこか似ていると思わないか?」(ようくの抑揚がポイントです)
「許してくれ!助けてくれ!」「許しもしないし、助けもしない!」
梶様の魅力とは、ただ美しいだけではなく、どこか現実離れした役柄を演じても説得力を生み出す、そのウルトラマンにも似たルックスにあります。
だからこそ、何をしても、ただ痺れるしかないブルース・リーや歴代ジェームズ・ボンドに共通するスーパーヒーロー性が生み出されるのです。
修羅雪姫の衣装5
太縞の着物
- 白地に濃紺の太縞の着物、半衿
- 朱色の帯、紫色の帯締め、後見結び
- 緋色の裾よけ
- 珊瑚の玉簪
- 仕込み刀の蛇の目傘
- 草履
作品データ
作品名:修羅雪姫 (1973)
監督:藤田敏八
衣装:記載なし
出演者:梶芽衣子/黒沢年雄/赤座美代子/仲谷昇