グルマン コキャン
原名:Gourmand Coquin
種類:オード・パルファム
ブランド:ゲラン
調香師:クリスティーヌ・ナジェル、オーレリアン・ギシャール
発表年:2008年
対象性別:女性
価格:75ml/38,830円
70年代の甘いブラックバラードのような香り
「女性の官能性を呼び覚ます」をコンセプトに、2008年に生み出されたゲランのエクスクルーシブ・フレグランス・コレクション「エリクシール シャルネル(=肉感的な秘薬)」から、最初に発売された3作品のうちのひとつが、「グルマン コキャン」です。
このコレクションは、時のクリエイティブ・ディレクター、シルヴェーヌ・ ドゥラクルト(マチルド・ローランと共にジャン=ポール・ゲランの下で学んだ女性)により生み出されました。
「チョコレートは、身体に塗りたくるものではなく、食べるものよ!」と、説教されてしまいそうなチョコグルマンの香りは、クリスティーヌ・ナジェルとオーレリアン・ギシャールにより調香されました。
「グルマン コキャン」とはフランス語で〝いたずらな食いしん坊〟の意味です。無邪気で大胆な魅力をふりまく女性をイメージした、デリシャスでセクシーな香りです。そして、その名に全く遜色がないほどにワンプッシュした瞬間から清いまでに甘いグルマンの香りが鼻腔をくすぐります。
ダーク・チョコレートにブラック・ペッパーが絡み合い、カカオがスパイスの伴奏によりステップを踏む、甘いバラードのようなトップノートからこの香りははじまります。
やがて、一際甘い歌声を聞かせるスパイシーなカカオのバラードにあわせて踊る女性と男性のように、ピンク色の砂糖漬けされたローズ(華やかな正統派ローズの香りも伴うベリーの香り)にスモークティーが寄り添うように、ゆっくりと溶け合います。
そして、ラムとバニラが世界は二人のためだけにあるかのように、酔わせるほどの甘さで、身も心も蕩けさせてくれるのです。この香りの重要なポイントは、官能的な甘さではなく、安らぎを与える甘さをラストに持ってきているところにあります。
子は抱きつきたくなり、夫は抱きしめたくなる香り
しかし、何よりも、この香りを創造した二人の女性(シルヴェーヌ・ ドゥラクルトとクリスティーヌ・ナジェル)の恐ろしさは、女性の官能性を呼び覚ます香りを作ると同時に、子供たちに母親への強い愛情を掻き立てる香りを創造した所にあります。
昼間は、子供が抱きついてくる香りであり、夜は、夫が抱きついてくる香りです。それは母性愛とロマンティックな感情を同時に掻き立てる「奇跡のグルマン」なのです。
ただし、母性愛を必要とせず、ロマンティックな感情よりも、騒がしい恋愛を求める時には、不愉快以外の何物でもない「甘ったるい悪臭」となります。ある一定以上のレベルの香水の面白いところは、その人の置かれている状況を如実に反映するところにあります。
公式ホームページで推奨しているように、数滴の「ドゥーブル ヴァニーユ」をブレンドすると、ダイヤモンドシンドロームを香りで体感することが出来るでしょう。合計8万円ものフレグランス・コンバイニングをして、冷静な判断が出来る人などそうそういない。
ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「グルマン コキャン」を「過剰なジンジャーブレッド」と呼び、「調香師ジャック・ゲランが史上もっとも偉大なパティシエだとしたら、ゲランは自分たちが発明し、完成させ、今は批判ばかりしているグルマン(美食)系の香水に追従する必要はない。昔のゲランが手がけたグルマン系は大家族の夕食、とりわけ調理中の風景をすべて詰め込んだような香りだった。」
「「ミツコ」はピーチと一緒にフロアワックスの香りがするし、「シャリマー」もバニラとともにペンキの臭いがする。食べ物をそのまま香りに見立てても胸が悪くなるような香水しかできないことは、すでに90年代にわかっていたはず。」
「今さら試みるなら、せめてゲップではなく涎を誘うものであってほしかった。これではまるで、カサノバの物語に出てくる18世紀の貴族だ。食べ過ぎの消化不良で死にそうな彼らは、飢えた物乞いを見て「お前のようになりたい」と叫ぶのだ。」と2つ星(5段階評価)の評価をつけています。
香水データ
香水名:グルマン コキャン
原名:Gourmand Coquin
種類:オード・パルファム
ブランド:ゲラン
調香師:クリスティーヌ・ナジェル、オーレリアン・ギシャール
発表年:2008年
対象性別:女性
価格:75ml/38,830円
トップノート:ブラック・ペッパー
ミドルノート:ローズ、スモーク・ティー
ラストノート:ラム、ダーク・チョコレート、バニラ