グレー・スーツの復権。
ダニー・オーシャン・スタイル4 グレー・スーツ
- グレー・ウィンドウペーン・シルク・サマースーツ、ノッチドラペル、シングル、2つボタン
- 白のコットン・ドレスシャツ
- 黒のレザー・ベルト
- ブラック・カーフレザーのブルーチャー
- チタン・フレームのアビエイター・サングラス
- ハミルトン・リンウッド・ビューマチック。黒のクロコダイル・レザー・ベルト
19世紀に日本で龍のタトゥーを入れた英国王ジョージ五世(在位1910-1936)は、欧米の王室の大半が没落していく20世紀初頭において、イギリスの王制を守り通した人であり、堅実な服装や質素な生活も含めて、英国民に愛された君主でした。そんな彼が、こだわった色がグレーでした。1930年代にグレーは社交界の花形の色となります(日本の結婚式において男性がグレーのモーニングを着るのはその名残り)。
そして、スローン・ウィルソンの1955年の小説『灰色の服を着た男(グレー・フランネル・スーツを着た男)』が1956年にグレゴリー・ペック主演で映画化される頃には、グレーこそは、スーツの花形のカラーとなったのでした。やがて、1980年代にヤッピー達がネイビー・スーツを着るようになり、世界的に、グレー・スーツは、サラリーマン(社畜)・カラーとして、ドブねずみ色という形容詞とともに、スーツとして最もイケてないカラーとなりました。
そんなグレー・スーツの復権の狼煙を上げたのが、この作品のダニー・オーシャンとラスティ・ライアンです。
あくまでも控えめに主張する男の美学。
ダニー・オーシャン・スタイル5 ハウンドトゥース・スーツ
- チャコールのハウンドトゥース・スーツ
- オリーブカラーのドレスシャツ
リーダーとして、あくまでも頭脳に徹し、大局を見る控えめな主張に徹するダニー・スタイルは、(能ある鷹は爪を隠すことを好む)日本人に最も合ったスタイルとも言えます。
ブラック・スーツは男を磨くスーツです。
ダニー・オーシャン・スタイル6 ブラック・スーツ
- ブラック・ウールスーツ、ノッチドラペル
- 白のドレスシャツ
- ブラック・レザーベルト
日本では冠婚葬礼もしくはリクルート、または販売員専用スーツの趣があったブラック・スーツ。そして、海外においては、ほぼフォーマルなイメージがあるブラック・スーツ。しかし、『レザボア・ドッグス』(1992)『トランスポーター』(2002)『ヒットマン』(2007)の主人公に見られるように、グレードの高い孤高の犯罪者のステイタス・スーツのイメージも備わっています。
そんなブラック・スーツをモードに着こなすことは、かなり上級な装いですが、ディオール・オムに代表されるブラック・スーツを着こなすことは、メンズ・ファッションの個性と感性を磨くための絶好の近道です。なぜならば、ブラック・スーツは、ごまかせるアイテムをつけることが許されず、アインプルさが求められ、その分、優雅な立ち振る舞いが求められるからです。
レザー・ジャケットも実に落ち着いたものです。
ダニー・オーシャン・スタイル7 レザー・ジャケット
- ブラック・レザー・ジャケット
- 白のドレスシャツ
- チャコールのトラウザー
ダニー・オーシャンの最後のファッションは、最初のファッションと同じブラック・タキシードです。そのファッションで釈放され、捕まり、そして、愛するテスと再会するのです。この作品がどこまでも魅力的なのは、ダニー・オーシャンという安定した男性の存在がいたからなのです。
40男の魅力を体現するダニー・オーシャンという男の美学。それはあくまでも控えめに、それでいて、自分の野望はきっちりと果たすというところにあるのです。