フラワーボム
原名:Flowerbomb
種類:オード・パルファム
ブランド:ヴィクター&ロルフ
調香師:オリヴィエ・ポルジュ、カルロス・ベナイム、ドミニク・ロピオン、ドミティーユ・ベルティエ
発表年:2005年
対象性別:女性
価格:日本未発売
1996年〝開けることの出来ない香水〟を発表。
オランダのアーネム芸術アカデミーで知り合ったヴィクター・ホスティンとロルフ・スノラン(共に1969年生まれ)が、1993年に卒業後、パリに活躍の場を移しヴィクター&ロルフの名で創業しました。
型破りなファッションへのアプローチを通じて、驚くべき美しさと意外なエレガンスを生み出すことを目指し、1998年春夏からはオートクチュール・コレクション、2000年秋冬からRTWコレクションへ進出してゆきました。
ヴィクター&ロルフのファースト・フレグランスは1996年にオランダのアムステルダムにあるトーチギャラリーの展示会で出品されました。250本作られたこの香水は〝開けることの出来ない香水〟でした。
二人のデザイナーが自分たちのフレグランスを創造したいという夢の導火線に火がつけられたのは、1998年秋冬オートクチュールコレクション『アトミック ボム』の発表によってでしょう。
男性のハートにフラワーボム投下!フローラルグルマン革命始動。
私たちは、誰もがネガティブをポジティブに変える力を持っているという私たちの人生哲学を体現する、すべてを美しくする力、世界をより良い場所にするフレグランスを創りたいとずっと考えていました。
ロルフ・スノラン
2002年4月にヴィクター&ロルフは、ロレアルと美容部門における提携を果たし、ラグジュアリー部門のマネージング・ディレクターであるPatricia Turck-Paquelier(2009年に51歳の若さで逝去した彼女は、メゾン マルジェラの興隆の第一功労者)の指揮の下、真のファースト・フレグランスを創造することになるのでした。
素晴らしいボトル・デザインとネーミングの勝利とも言える「フラワーボム」=「花の爆弾」=「香りの時限爆弾」の誕生です。二人のデザイナーは名前の決定、ボトルやパッケージのデザイン、広告に関わりました。
一つのボトルの中に、1000本の花束が封印され、信管を抜いた瞬間に爆発するというフローラル・オリエンタルの香りは、オリヴィエ・ポルジュとカルロス・ベナイム、ドミティーユ・ベルティエにより調香されました。
2005年春夏コレクション。その名も『フラワーボム』
この香りの発売に先立つ2004年10月の2005年春夏コレクションは、既に完成していた香水名である『フラワーボム』をテーマに掲げ行われたものでした。
黒い戦闘機乗りのヘルメットをかぶった黒のレザートレンチコートを着たモデルが顔を一切見せず、ランウェイを歩く姿からはじまるこのコレクションは、黒一色から、途中でピンクを中心としたフローラルカラーにドラマティックに舞台転換するのです。
そして最後に、タキシードを着た二人のデザイナーが登場し、ランウェイをダンディに歩く中、背後でフラワーボムの特大広告が出現し、フラワーボムが爆発するのです。
フラワーボムは単なる香水ではありません。活動的で、物事を美しいものに変える力を象徴するものです。フラワーボムとは、香水のコンセプトを考えているときに思いついた言葉です。花を連想させ、何千もの異なる花の爆発を表現する名前にしたかったのです。
新しい言葉だったのでとても気に入りました。また、その名前が表す感覚も気に入りました。相反するものが合わさって新しいものを生み出す、一種のパラドックスです。
ロルフ・スノラン
21世紀最高のボトルデザイン:ダイヤモンド型の手榴弾
デザイナー達が〝現実に対する解毒剤〟と呼ぶこの香りの秀逸なダイヤモンド型の手榴弾のボトル・デザインは、ファビアン・バロンによるものです。
この爆弾は花が詰め込まれた爆弾であり、この花とは、あなたの夢を象徴しています。だからこそ、ダイヤモンドの形をした手榴弾を素肌で爆発させると、どんな夢も叶いそうな香りに満たされるのです。
初代キャンペーン・モデルとして、ブラジル出身のスーパーモデルのイザベリ・フォンタナが約10年間続け、次にルーマニア出身のファッション・モデル、アンドレア・ディアコヌが二代目キャンペーン・モデルとなりました。
2020年には、アメリカの女優アニャ・テイラー=ジョイが三代目キャンペーン・モデルとなり、2023年にはロンドン出身のファッション・モデル、エミリー・ラタコウスキーが四代目キャンペーン・モデルとなりました。すべての撮影はイネス・ヴァン・ラムスウィールド&ヴィノード・マタディンにより行われました。
10年経っても英国では3分に一本売れているように、世界的に爆発的に売れている香りです。
フラワーボムではなく、グルマンボム=スイーツボムが素肌に投下される。
非常に複雑な香りにしたかったので、一日の中で香りが変化するのです。最初の香りは新鮮で、その後ドライダウンすると抱擁のように、とても暖かい。
私たちは瓶の中にユートピアを求めた。クラシックでありながら革命的なものを求めた。甘いものが欲しかったが、砂糖は好きではなかった。
ファッションは単なる製品、単なる衣服以上のものだと私たちは常に言ってきました。ファッションは夢であり、香水はボトルに入った夢なのです。
ヴィクター・ホスティン
『匂いの帝王』を書いたフレグランス・ジャーナリストのチャンドラー・バールは、大絶賛し、『世界香水ガイド』は、最低の評価を下したことからも分かるように、一般的に「フラワーボム」ほど、賛否両論の香りはなかなか存在しません。
ある人にとって、爆弾が落とされ、燃えさかるお花畑に、バニラとパチョリの焼夷弾を落とし、焦土と化した甘ったるい焼け野原の香りであり、ある人にとっては、素肌の上に、夢のような花の女神たちが、バニラとパチョリと共に、流れるように、満ち広がる、花をテーマにしたパティスリーの祭典の香りなのです。
そんな〝花爆弾〟の香りは、砂糖漬けされたベルガモットに、オスマンサス・ティーが注ぎ込まれ、素肌の上をスイートなバブルガムとキャンディが引き伸ばされるようにしてはじまります。
すぐに綿菓子とムスクの風に乗り、ローズ、ジャスミン、オーキッド、オレンジフラワー、フリージアといった花々が、爆発するようにカラフルにそれぞれの花々を、甘い花蜜を素肌に舞い散らせながら、咲かしてゆくのです。
まさに〝花ずくめ〟な情景の中に身を置いているような感覚に満たされる中、バニラとキャラメル、チョコレート、パチョリが加わり、カラフルな色彩の中に隠れていた、フローラルを遥かに凌駕する〝グルマン爆弾〟の無限の可能性が解き放たれていきます。
この香りがとても素晴らしいところは、つぼみも、咲いている時も、枯れていく時も、それがすべて花と考えている点です。だから、花蜜だけでなく、ハーブやグリーン、スパイスの小さな爆発も同時多発していることを感じ取ることが出来るのです。
でありながら、あっさりとそれらを凌駕する〝グルマン爆弾〟が投下され、素肌の上で、フローラルが朽ち果て、食べたくなるようなクレームショコラ、クレームパティシエール、フランといったスイーツが誕生していく様を体感できるのが、ヴィクター&ロルフらしい、すべてを裏切ってくれる爽快感なのです。
タニア・サンチェスは『世界香水ガイド』で、「フラワーボム」を「砂糖っぽいフローラル」と呼び、「「エンジェル」の次にくる甘いもの好きのファンタジア。グミを量り売りしているようなお店の匂い。「でもローズっぽい香りよ!」って抗議の声が聞こえてきそう。確かにそう。」と1つ星(5段階評価)の評価をつけています。
作品データ
香水名:フラワーボム
原名:Flowerbomb
種類:オード・パルファム
ブランド:ヴィクター&ロルフ
調香師:オリヴィエ・ポルジュ、カルロス・ベナイム、ドミティーユ・ベルティエ
発表年:2005年
対象性別:女性
価格:日本未発売
トップノート:ベルガモット、ティー、オスマンサス
ミドルノート:ジャスミン、アフリカン・オレンジ・フラワー、フリージア、センティフォリア・ローズ、カトレヤ・オーキッド、ピオニー
ラストノート:ムスク、パチョリ、バニラ