フローラボタニカ|エメラルドシティに咲く、露に濡れてエメラルドグリーンに煌めくローズの香り

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©Balenciaga
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フローラボタニカ

原名:Florabotanica
種類:オード・パルファム
ブランド:バレンシアガ
調香師:オリヴィエ・ポルジュ、ジャン・ クリストフ・エロー
発表年:2012年
対象性別:女性
価格:30ml/6,700円、50ml/9,000円、75ml/14,000円

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21世紀のバレンシアガ帝国の復活

ケイト・モスとバレンシアガのバッグ

バレンシアガ帝国の復活の象徴の一人、ケイト・モス。

パリ・モード華やかなりし頃、クリスチャン・ディオール、ガブリエル・シャネル、ユベール・ド・ジバンシィといったファッション・デザイナーが活躍していた1950年代に、「クチュール界の建築家」と呼ばれるデザイナーが居ました。その人の名をクリストバル・バレンシアガ(1895-1972)と申します。

クリスチャン・ディオールは彼のことを「万能の人」と評し、ガブリエル・シャネルは「自分でデザインし、パターンをおこし、縫製まですべてをこなすことの出来るたった一人の真のクチュリエ」と一目置いていました。

クリストバルは、1937年からオープンしていたクチュールメゾンを1968年に閉め、引退しました。しかし1986年にブランドとしてのバレンシアガは復活するも、鳴かず飛ばずの状況が続き、90年代半ばにはどん底の状況でした。そんな中、一人の青年ファッション・デザイナーが日本でのウェディングドレスのライセンス部門のデザイナーとして、コツコツと実力を積み上げていました。

ファッションの正規教育を一切受けていないこの青年は、ジャン=ポール・ゴルチエの下でデザイナーとして実地で叩き上げてきた人で、1997年にわずか25歳で、復活を目指すバレンシアガの新しいクリエイティブ・ディレクターに就任しました。

この青年の名をニコラ・ジェスキエール(1971-、現ルイ・ヴィトンのウィメンズコレクションのアーティスティックディレクター)と申します。

ずっと冬眠状態で、古臭いファッション・ブランドのイメージが強かったバレンシアガの復活に、グッチ・グループのトム・フォードとドメニコ・デ・ソーレは目を付けていました。

そして2001年にグッチ・グループが買収したことにより(ビジネスマンとしても優秀なジェスキエールは、バレンシアガのデザイナーとしてではなく、最高責任者として買収に応じ、9%の株式を保有し、完全にブランドの未来に対する影響力も堅持しました)、大きな資金力を得たバレンシアガは、この年〝シティバッグ〟を発表し、空前の大ヒットとなり、完全復活を遂げたのでした。

見事、バレンシアガ帝国に、1950年代の栄冠を与えることに成功したニコラ・ジェスキエールは、12年近くある思いを持っていました。それはバレンシアガのフレグランスを再び創造することでした。

そして2010年2月に、1998年の「クリストバル」以来、12年ぶりの新作として「バレンシアガ パリ」を発売し(日本では同年4月1日に発売)、ようやくその宿願を果たすことになりました。

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クリステン・スチュワート×ニコラ・ジェスキエール

©Balenciaga

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バレンシアガというブランドには、古きものを愛する精神と、新しいことに挑戦する実験精神という相反する二重性があります。私はこのパラドックスを生かしたフレグランスを創造したいと考えました。そして、数年前、私のフローラル・コレクションのイメージでもあった、ロマンティックである以上に、力強くも奇妙な存在感を誇り、優しさと危なさを兼ね備えた花々に包まれたシークレット・ガーデンの香りを作ろうと思いました。つまり、魅惑的で危険な女の子のような香りです。

ニコラ・ジェスキエール

さらに20代の女性に向けて2012年9月に発売されたのが「フローラボタニカ」でした(日本では2013年3月6日に発売されました)。美しい花と危険な花が咲く18世紀の神秘的な植物園にインスピレーションを得て、さわやかなフローラルノートとミステリアスなグリーンノートがシンクロするように構成されているこの香りは、オリヴィエ・ポルジュジャン・ クリストフ・エローにより調香されました。

ニコラ・ジェスキエールによるバレンシアガの2008年春夏コレクションと2011年秋冬コレクションのフローラルモチーフがインスピレーションの源となっています。ちなみに2012年12月にニコラは、バレンシアガのクリエイティブ・ディレクターを退任し、ルイ・ヴィトンに。そして後任にアレキサンダー・ワンが就任しました。

キャンペーン・モデルとして、当時22歳のハリウッド女優のクリステン・スチュワートが起用され、フラワープリントドレスを着て、スティーヴン・マイゼルにより撮影されました。クリステンとニコラの出会いは、14歳だった頃に、ブルース・ウェーバーによる撮影の現場ででした。それ以来二人は親交を深めてきました。

クリステンが図らずも告白しているように、「22年間の人生で、ほとんど香水に興味がなかった」。そんな人に対してのフレグランスとも言えます。

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エメラルドシティに咲く、露に濡れてエメラルド色に煌めくローズ

©Balenciaga

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おとぎの国にひっそりと佇む、小さなお家の煙突のようなキャップを取り、スプレーを吹きかけると、シャープなシトラスのファンファーレが聞こえてきます。そんな泡立つミントとフレッシュなガルバナムが混じり合う、氷のように冷たく、ほろ苦いグリーンシャワーを素肌に振りかけていくような感覚からこの香りははじまります。まるで植物園に迷い込んだようなリアルな感覚に満たされてゆきます。

すぐにターキッシュローズがすっきりと素肌の上で開花してゆきます。それはまるでオズの魔法使いに出てくるエメラルド・シティに咲く、露に濡れてエメラルドグリーンに煌めくローズのように、とてもクールでロマンティックな、モダンな若々しさをほとばしらせていくようです。

そんなフレッシュに軽やかに透き通るようなローズの香りが広がる中、場違いとも感じられる古風な毒々しさを感じさせるカーネーションが到来します。さらにメロウなシダーウッド、アーシィーなベチバーが漂うことにより、素敵な石鹸のニュアンスが感じられる、見事なコントラストが生み出されてゆきます。

やがてアンバーとムスクに包まれ、素肌に親密なあたたかく滑らかな余韻へと昇華してゆきます。

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ひそやかに感じるカンナビス(大麻)の香り

©Balenciaga

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最初から最後まで、このローズは、ジャスミンとピオニーのニュアンスが感じられるにもかかわらず、レッドやピンクの色合いを見せることはなく、フルーティーローズになることはありません。

カンナビス(大麻)の香りが、はじめのあたりから最後まで、死神のようにうっすらと香りの背景にその独特な禁断の薫りを漂わせています(日本でこの香りが売れなかったのは、ここがアピール出来ないからでしょう)。

リアルのカンナビス(大麻)の匂いは、強い麝香のように動物的で、ガソリンのような強い臭みもあり、ブラック・ペッパーの土っぽさ、さらにオレンジやレモン、トロピカルフルーツのようなフルーティーさも感じられます。

花々の秘密のエッセンスを集めようとしている実験室の試験管をイメージしたポップなボトル・デザインも特徴的です。

ルカ・トゥリンは『世界香水ガイドⅢ』で、「これは面白い、感心さえする作品。そもそも「フローラボタニカ」に野心はない。今人気の感傷的なピオニー入りの安っぽいアコードを求めるのではなく、立体化した大きな匂いの空間を色あざやかなタッチで大胆に区切り、合間に十分な余地を残している」

「「フローラボタニカ」の構造は、古い抽象性から新しい抽象性へと、2段階に分かれて続く。古い抽象性は、よく考えた交響曲のようなフローラルで、どれかひとつの天然香料が目立つことはない。その原点は百年以上前に作られた、ウビガンの「パルファム イデアル」。もう二つ例を挙げるなら「ジョイ」や再処方前の「ビヨンド パラダイス」(エスティローダー、2003)を嗅いだときのような驚嘆の念を覚える」

「一方、新しい抽象性では、あらゆるフローラルが滅びて、生物学的進化ではなく純粋な化学による産物へ。もはや植物への考慮は消え失せ、会計士や皮膚科医にとって大いに喜ばしいことに、完成した香りは本物の花よりも花柄のほうが近い」

「「フローラボタニカ」は、やぼったくて安っぽい要素をふわふわしたチャーミングな香りにうまく変えているが、その鍵はフローラルの扱い方にある。それはデザイナーのフィリップ・スタルクがインテリアの材料を扱う方法と同じだ。スタルクはルイ16世時代のデザインの椅子に透明なアクリル樹脂を割り当て、「ゴースト」と名づけた。つまり両者の共通点は、特に心地よくはないがまちがいなく知的でスタイリッシュな作品を生み出すこと」と4つ星(5段階評価)の評価をつけています。

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香水データ

香水名:フローラボタニカ
原名:Florabotanica
種類:オード・パルファム
ブランド:バレンシアガ
調香師:オリヴィエ・ポルジュ、ジャン・ クリストフ・エロー
発表年:2012年
対象性別:女性
価格:30ml/6,700円、50ml/9,000円、75ml/14,000円


トップノート:ミント
ミドルノート:ローズ、カーネーション、カンナビス、カラジウムリーフ
ラストノート:ベチバー、アンバー