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共食い Fashion Cannibalism – ファッション・コラム

アパレルの終焉
アパレルの終焉
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共食い

2016年現在、ほとんどのラグジュアリー・ファッション・ブランドにおいて、最も深刻な問題となっているのは、共食いです。今のところ、この問題に直面していないのは、トム・フォードとサンローラン、ジバンシィ、ステラ・マッカートニー他10ブランドくらいです。例えば、多くのブランドは、銀座に最低、2店舗あります。大阪においては、難波から心斎橋間に2店舗あるブランドも多いです。そこから電車で20分内で行ける範囲へと広げてみるならば、六本木、表参道、東京となり、どのブランドもほぼ5店舗以上で共食いしている現状が生まれています。大阪においても、梅田がその範囲に入り、ここも5店舗以上の共食いが始まっています。

全てのビジネスの終焉が、出店し尽くした先にあるということを知らなければなりません。出店するよりも出店を見直す作業の方が、遥かにリスクが高く、全ての皺寄せは、まず販売員に跳ね返ってきます。しかも出店ラッシュはある次元を越えると、必ず制御不能に陥り、その出店に責任のある者たちの自己保身活動が始まります。今多くのラグジュアリー・ファッション・ブランドで繰り広げられている光景がまさにここなのです。

自己保身者の常套文句は、例えば売り上げが良くない旗艦店に対してこう言う点に共通しています。「いい広告塔になっている」と。これは実に間抜けな言い様なのですが、例えば、それはZARAの戦略の焼き直しなのですが、その大前提は、店舗が広告になり、広告経費を抑えている上に、その店舗自体の売り上げも良い事が大前提なのです。その店舗自体の売り上げが悪くて、大型旗艦店が路面広告として機能している理論は成り立ちえません。

さて、共食いの状況が生み出すことは以下の点です。

  1. お客様の即決力の減退
  2. 「今決めないと売り切れてしまいます」トークが信用されない
  3. 販売員がお客様の購買意欲を高めたにも関わらず、違う店舗で購入するという遣り甲斐を削ぐ環境が生み出される
  4. 店舗が増えれば、人材不足となり、相対的に士気が低下する
  5. 競争の激化。本来のラグジュアリー・ブランドの意味を忘れたプライドなき数字至上主義
  6. 優雅さの欠損

今特に深刻なのが、4の人材不足です。

やがて、出店しつくしたラグジュアリー・ファッション業界の行き着く先は、堅実なるラグジュアリー・ブランドの経営戦略に立ち返ることになります(マストになるのが、老害の排除と、ファッション知識の高いコンサルタントによる、販売員研修システムの導入、そして、店舗数のスリム化と少数精鋭主義)。そして、ブランド本国の中枢とジャパン社の関係がその時に問われるようになります。本国の植民地のようになっているラグジュアリー・ファッション・ブランドは、非常に厳しい戦いを行わなければなりません。そして、ほとんどどこも、日本人特有の外国人と喧嘩することを回避する姿勢ゆえに、その状況に追い込まれています。

そんな状況の被害を蒙る事になるのが、お客様と販売員なのです。今ラグジュアリー・ブランドの中には、品質と利益率が明らかに釣り合いが取れていないブランドも少なからず存在します。そして、そういった所は、販売員に対する待遇も恐ろしい状況なのです。共食いの果てにあるものが、失業もしくは転職であるならば、ラグジュアリー・ファッション・ブランドで働く意義は何なんでしょうか?

VOGUEやELLEのファッション誌を広げてみましょう。ラグジュアリー・ファッション・ブランドのトップ達が、優雅さを競い合っています。しかし、なぜその商品を販売している実戦部隊には、富の還元がなされていないのでしょうか?この業界は、18世紀のブルボン王朝に支配された階級社会なのでしょうか?