オードゥ カンパーニュ
原名:Eau de Campagne
種類:オード・トワレ
ブランド:シスレー
調香師:ジャン=クロード・エレナ
発表年:1976年
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/15,180円
公式ホームページ:シスレー
ジャン=クロード・エレナの最初の香りのひとつ
ランコムの創設者の一人を父に持つ、ウベール・ドルナノ伯爵が1976年に創業した化粧品会社シスレーは、時代を先取りした天然植物エキスを化粧品に使用するというコンセプトにより一躍話題を集めました。
そして、1999年に、今でも最も売れているエイジングケアアイテム「シスレイヤ」の販売をスタートして、業界の寵児となります。
そんなシスレーが創業された1976年に、シスレー一族のプライベート・フレグランスを作るために若き日のジャン=クロード・エレナが招聘されました。
「オードゥ・カンパーニュ」=「田舎の水」。1976年のある日エレナは、ウベール伯爵に呼び出され、一族のための香水を作ることを依頼されました。〝レタスやリンゴ〟の香りを一族の領地がある〝ノルマンディーの田園風〟にというリクエストを元に、当時新しいエッセンスだったトマトの葉を中心に、バジル、ガルバナムなどのグリーンノートを駆使して僅か数日で調香したのでした。
ちなみにラルチザンを1976年に創業した科学者のジャン・ラポルトは、シスレーを1972年に創立した3人のうちの一人でした。公式ホームページなどに記載されているシスレーの社史では、創業は1976年にウルベール・ドルナノ伯爵によるものとなっています。それはこの年に、3人からほぼ休眠化していた会社を買収したからでした。
エレナは、ラルチザンにも深く関わっていくのですが、もしかしたらラポルトによってウベール伯爵を紹介されたのかもしれません。
トマトの葉で生み出した〝プロヴァンスの草原の輝き〟
プロヴァンスやロワールの美しい田園風景を眼下に納めながら、ゆるやかな斜面になった草原に仰向けに寝転んだときに感じるやさしい陽射し。空を飲みこみたくなるほどの開放感に包まれながら、鼻先に到来する爽やかな風の訪れと共に、草原の輝きと柑橘の煌めきを全身で受け止めます。
ビターグリーンなガルバナムに、煌めくようなトマトの葉とバジルが重なり合うようにしてこの香りははじまります。そして、すぐに太陽に搾り出されたレモンの雫が草原全体にスパークリングしながら降り注ぐのです。
独特の苦味を持つトマトの葉というシャープなグリーンの香りは、1976年当時人々に受け入れられるか未知数でした。しかし、その葉の鋭いグリーンが、人々の郷愁を呼び覚ますことがこの香りで証明されたのでした。
やがて、シトラスシャワーが乾き、緑の葉が擦れ合う中、フレッシュグリーンなスズランと甘やかなジャスミンが、草原と花畑の思い出をシンクロさせてゆきます。
スズランのソーピィーな透明感がジャスミンの花びらを摘み取り、草原にそっと振り掛ける中、プラムとゼラニウムがトマトの葉の苦味をその酸味で蘇らせてゆきます。そして、スモーキーなベチバーと、オークモスとパチョリが注ぎ込まれ、牧歌的なグリーンシプレの円やかな余韻を残してゆくのです。
27歳のジャン=クロード・エレナが、ヴァンクリーフ&アーペルの「ファースト」と同じ時期に生み出した〝プロヴァンスの草原の輝き〟です。
ディプティックの「ロンブル ダン ロー」に多大なる影響を与えた香りです。一方でこの香りは、エレナの師匠ともいえるエドモン・ルドニツカの「オー ソバージュ」の影響を強く受けています。
1987年に発売された時、ゴルフや乗馬をする一族のプライベート・スナップショットを使い、壮大な宣伝キャンペーンを一切せずに、フランス、アメリカ、日本で大ヒット作となりました。スーパーモデルのクラウディア・シファーとエルトン・ジョンが定期的に1リットル購入するくらいのファンであるという事も、話題になりました。
作品データ
香水名:オードゥ カンパーニュ
原名:Eau de Campagne
種類:オード・トワレ
ブランド:シスレー
調香師:ジャン=クロード・エレナ
発表年:1974年
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/15,180円
公式ホームページ:シスレー
トップノート:ベルガモット、ガルバナム、バジル、レモン、ワイルドハーブ
ミドルノート:プラム、ジャスミン、スズラン、トマトリーフ、ゼラニウム
ラストノート:パチョリ、ムスク、オークモス、ベチパー