カイエデモードに花束を|最終日

香水を愛するひとびとのまいにちを豊かにしたい!そんなカイエデモードの記事を楽しんで頂いているみんなに読んでもらえたら幸いです。|2026年3月22日

詳細ページへ

シダー|シダーウッドとチューベローズ、男と女のラブゲーム

セルジュ・ルタンス
©資生堂
セルジュ・ルタンス
この記事は約5分で読めます。

シダー

原名:Cedre
種類:オード・パルファム
ブランド:セルジュ・ルタンス
調香師:クリストファー・シェルドレイク
発表年:2005年
対象性別:ユニセックス
価格:日本未発売(75ml/€260)

スポンサーリンク

シダーウッドとチューベローズ、男と女のラブゲーム

©Serge Lutens

フェミニテデュボワ」の直系の子孫「シダー」!遺産であり、名であり、当然の成り行き。ベルベットの上を滑る大きな猫のように…

「木でできたペイストリーのような香り。フェミニテを別の現実へと誘う、もう一つの解釈。その名にふさわしく、主役は蜂蜜が鍵であるシダーウッド。さらに、私はチューベローズを加えた。かすかにしか感じられないが、極めて重要な存在だ」

セルジュ・ルタンス公式サイトより

2018年3月21日にセルジュ・ルタンスの「ブラック&ベージュ コレクション」が「コレクション ノワール」に変更され、10種類もの名香が2017年末から一挙に廃盤になりました。2005年に発売された「シダー」もそのうちの一つでした。クリストファー・シェルドレイクにより調香されました。

月夜に咲くチューベローズの香りが、夜風に乗って杉林を包み込んだ瞬間をイメージした香りであり、木製のペイストリーという奇妙なイメージの側面も持っています。

現在は、パレ・ロワイヤル本店だけで取り扱われている「レフラコンドターブル」コレクションのひとつとなっています。

スポンサーリンク

またの名を「ペイストリー デュ ボワ」=木のペイストリーと呼ぶ。

©Serge Lutens

セルジュ・ルタンスが最も愛している木、それはシダーウッドです。

「フェミニテデュボワ」でも取り上げたこの木に再び脚光を当てた「シダー」は、男性的な香りのイメージを持つこの木に、女性的な香りのイメージを持つチューベローズを組み合わせることにより、〝新しい木の香り、新しい花の香り〟を同時に感じさせる〝ペイストリー デュ ボワ=木のペイストリー〟を作り出しています。それは食べたくなる木の香りです。

花のような木のような香りは、クローブとシナモンが混じり合い、(メントールのような)薬草入りのサイダーが弾けていく強烈なフルーティーさからはじまります。

とても独特な爽快感に包まれる中、すぐに甘くて柔らかいチューベローズの花びらがうっとりさせるように広がってゆきます。共に到来するアニマリックなレザー調ムスクと甘くて香ばしいアンバーが静かに溶け込んでゆきます。そしてシダーウッドの香りがしなやかに立ち上りはじめます。

この前後から、香りは、〝木のペイストリー〟感を増してゆきます。まるでシナモンをまぶしたラム酒がドライフルーツやアップルパイに振りかけられたような美味しさがほのかに漂いはじめます。

やがて、チューベローズはゆっくりとムスクとひとまとめになり、インドールを解き放ち、クリーミーな花蜜のギラギラとした野性味を放ってゆきます。一方で、シダーウッドはアンバーと結びつき、スモーキーでドライな、清く正しく美しい甘さですべてを包み込んでゆきます。

スポンサーリンク

日本酒やワイン、ブランデーを素肌で味わうような余韻

©資生堂

『秋刀魚の味』の岩下志麻と笠智衆

『秋日和』を撮影した頃の小津安二郎監督と、岡田茉莉子と司葉子

花と木の香りがそれぞれ主張しすぎずに、蜂蜜を仲介人に、婚姻関係を結び、豊かに素肌に心地良くとろけて匂い立つ、すべてが〝控えめの美学〟に包まれた「シダー」。花と木の先にある日本酒やワイン、ブランデーを、素肌で味わうような錯覚を覚えさせてくれます。

それは日本酒の酒樽や盆栽を連想させる、和の空間に、ジャズが静かに流れる高級なバーにもマッチしそうな香りです。まるで50年代から60年代の小津安二郎監督の映画によく出てくる木のカウンターバーで主人公たちがお酒を嗜んでいる姿を思い起こさせます。

推理小説のような謎かけした香水名を好んでつけるセルジュ・ルタンスにしては、とてもシンプルな香水名が付けられているのは、この〝シダー〟という一つの言葉が持つ意味の広さを考えてのことなのでしょう。

どこか陰鬱で淫靡な空気を感じさせる一方で、神々しく清らかな空気も感じられる不思議な木の存在感に、チューベローズというニンフのような艶めかしさが、素肌とひとまとめになっていく瞬間を、全身で静かに受け止め、交互に映し出す、心の中に見たこともない情景を描いてくれることでしょう。

タニア・サンチェスは『世界香水ガイド』で、「シダー」を「甘くしたチューベローズ」と呼び、「チューベローズのオリエンタル調で、かなり強いカンファー様インドールの匂い、そしてボトムはバルサムとウッドの濃くオイリーな組み合わせ」と3つ星(5段階評価)の評価をつけています。

スポンサーリンク

香水データ

香水名:シダー
原名:Cedre
種類:オード・パルファム
ブランド:セルジュ・ルタンス
調香師:クリストファー・シェルドレイク
発表年:2005年
対象性別:ユニセックス
価格:日本未発売(75ml/€260)


シングルノート:チューベローズ、アンバー、シナモン、ムスク、クローブ、シダー