作品名:ピンクの豹 The Pink Panther (1963)
監督:ブレイク・エドワーズ
衣装:イヴ・サンローラン
出演者:ピーター・セラーズ/デヴィッド・ニーヴン/クラウディア・カルディナーレ/キャプシーヌ/ロバート・ワグナー
ダーク・ボガードが唯一結婚したいと願った女
『地獄に堕ちた勇者ども』(1969)『ベニスに死す』(1971)『愛の嵐』(1974)の名優ダーク・ボガードが唯一結婚したいと願い、ウィリアム・ホールデンが、死後、5万ドルの遺産を残した女キャプシーヌ(1928-1990)。彼女はまたオードリー・ヘプバーンが心から気を許した数少ない親友の一人でした。キャプシーヌが、ジバンシィのモデルだった時代に二人は知り合いました。重度のうつ病の果てに、1990年3月に、ローザンヌの8階建ての自宅マンションからキャプシーヌが飛び降り自殺した時、遺産はオードリーに託され、ユニセフや赤十字に寄付されました。
何よりも、ダーク・ボガードという稀代の名優を夢中にさせた唯一の女(ボガードが、恋愛感情ではなく、崇拝した女性として、ヴィヴィアン・リー、ジュディ・ガーランド、イングリッド・バーグマンの名が挙げられる)ということがキャプシーヌを語るにおいて重要なポイントでしょう。女優としては、本作を除いてぱっとしなかったのですが、女性として、これほど偉大なる俳優たちを夢中にしたということは、余程魅力的な人だったのでしょう。
キャプシーヌは、1928年に、(ココ・シャネルが生まれた)ソミュールで生まれました。そして、僅か17歳で、パリでスカウトされファッションモデルになりました。後に、ディオールやジバンシィの専属モデルになり、ニューヨークに出て、「ヴォーグ」などで活躍する超一流のファッション・モデルになりました。そんな彼女が1957年に映画プロデューサーのチャールズ・K・フェルドマンと出会ったことから、女優としての人生がはじまりました。
1960年にダーク・ボガードと共演し、恋に落ちた『わが恋は終りぬ』で、グレタ・ガルボの再来と絶賛される存在感を示しました。以後1968年に後ろ盾のフェルドマンが膵癌で亡くなるまで、キャプシーヌは順調にハリウッドスター街道を駆け上って行きました。そんな中、『ピンクの豹』は、クルーゾー警部にピーター・ユスチノフ、妻シモーヌにはエヴァ・ガードナーの予定で製作が決定しました。しかし、エヴァが降板し、フェルドマンが、キャプシーヌをシモーヌ役にごり押ししたため、ユスチノフは、クランクイン寸前に降板しました(変わりに出演した強盗映画『トプカピ』でアカデミー助演男優賞を獲得)。
イヴ・サンローランのリバーシブルコート
シモーヌ・クルーゾー・ルック1 リバーシブルコート
- グレーのリバーシブルコート、タイト、ボタンが大きい
- ダークブラウンのハンドバッグ
- ダークブラウンのレザーグローブ
- サングラス
- ダークブラウンのローヒールパンプス、ボウ付き
欧米のファッション業界において根強い人気を誇るイヴ・サンローランのリバーシブルコートで、エレベーターで早変わりするシーン。
オードリーが認めた長い首のシルエット
シモーヌ・クルーゾー・ルック2 早変わり
- リバースするとダークネイビーコートに
- リトル・ブラック・ドレス
- エメラルド色のターバン
- 黒のロンググローブ
- 黒スエードのローヒールパンプス
- 黒のハンドバッグ
一説によると、1940年代に既にオードリー・ヘプバーンとキャプシーヌは、ファッション・モデル友達だったと言われています。そして、身長もスタイルも似ている二人はすぐに姉妹のように仲良くなったのでした。オードリーと同じく、キャプシーヌの麒麟のような長い首には、ターバンがとても似合います。