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オードリー・ヘプバーン

『パリの恋人』Vol.6|オードリー・ヘプバーンとウエディングドレス

オードリー・ヘプバーン
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ユベール・ド・ジバンシィのデザインしたウエディングドレス

『パリの恋人』は、非常に贅沢なファッション・ムービーです。『麗しのサブリナ』の中で、パリから帰ってきたサブリナの衣装として3着のドレスとスーツを提供したユベール・ド・ジバンシィは、二回目のコラボとなる本作において、〝Miss Hepburn’s Paris Wardroab…〟と初めてタイトルにクレジットされることになりました。

それは最初のコラボの時、ジバンシィの名が一切表に出されなかったことに対するオードリー・ヘプバーン自身の謝罪であるかのように、ジバンシィのファッションが色々なバリエーションで登場します。オードリー×ジバンシィのコラボの中でも最多と言ってもよいでしょう。

リトルブラックドレスをはじめとするドレスの数々がとても魅力的なのですが、中でも、この作品を不滅のものにしている理由は、今でも女性の永遠の憧れとなっている〝プリマドンナのようなウエディングドレス〟にあります。

オードリーはプライベートで3回ウエディングドレスを着ています。どのドレスも素晴らしいのですが、それらを遥かに凌ぐロマンティックな空気を運んでくれるのがユベール・ド・ジバンシィによるこのウエディングドレスなのです。

オードリーがファッションモデルを演じる圧倒的な説得力。そして、そっとヴェールに触れるジバンシィの兄のような優しさ。

砂時計のようなシルエットのウエディングドレス。

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オードリーのウエディングドレス① 幻のドレス

この写真が撮影された時、オードリーは『ローマの休日』の撮影に参加していました。つまり、スター前夜のオードリーです。

最初の結婚式のリハーサルをするオードリー。

とてもエレガントなスカートのシルエットです。

まず最初にオードリーがプライベートでウエディングドレスを着たのは、1952年のことでした。当時23歳だったオードリーは、『ローマの休日』の撮影中に、英国の御曹司ジェームズ・ハンソン(当時28歳)と婚約しました。

そして、後に『甘い生活』(1960)でアニタ・エクバーグのブラックドレスをデザインすることになるフォンタナ・シスターズに、ウエディングドレスのデザインを依頼したのでした。

ボートネックとフレンチスリーブが特徴的なオフホワイトのサテンドレスでした。しかし、フィッティングして一ヶ月も経たないうちに婚約を破棄したため、このドレスは〝幻のウエディングドレス〟になりました。

この時、オードリーは姉妹にお願いしました。「このドレスを私は着ることができなくなってしまいましたが、他の女性に着てもらいたいです。とても美しく、でも貧しくてこのようなドレスを買えないイタリアの女性を見つけて、差し上げて頂けませんでしょうか?」

そして、アマービレ・アルトベラという、敗戦後のイタリアで、極貧にあえぐラティーナの田舎町の美しい娘に、このドレスは与えられることになりました。彼女は農園で行った質素な結婚式で着用し、町でも話題となり、パリへの新婚旅行までオードリーから贈呈されました。

2002年までこのドレスはアマービレによって大切に保存されていたのでした。幸せな家庭を築いたアマービレは回想しています。「オードリーのドレスが、私の生涯に幸運を運んでくれました」と。

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オードリーのウエディングドレス② 最初の結婚式

とてもエレガントなボールガウンスリーブ。

あえてヴェールを着用しなかったオードリー。

オードリーは『ローマの休日』で共演したグレゴリー・ペックの紹介により、運命的な出会いを果たしたメル・ファーラーと、1954年9月25日に、スイスではじめての結婚式を挙げました。

この時にオードリーが着ていたウエディングドレスは、ピエール・バルマンがデザインしたボールガウンスリーブ、ハイネックのドレスにロンググローブを組み合わせたものでした。

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オードリーのウエディングドレス③ 二度目の結婚式



1968年にメル・ファーラーと離婚したオードリーは、1969年1月18日にイタリア人精神科医アンドレア・ドッティとスイスで結婚式を挙げます。

当時39歳だったオードリーは、盟友ユベール・ド・ジバンシィがデザインした淡いピンクのファネルネックのウエディングドレスをバブーシュカと白いタイツと白いバレエシューズで合わせました。すべてのスタイリングはもちろんジバンシィと一緒にオードリーが考えたものでした。

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ジョー・ストックトンのファッション12

ウエディングドレス
  • デザイン:ユベール・ド・ジバンシィ
  • ホワイトサテンのウエディングドレス。セパレーツ。バレリーナのようなチュールスカート。サブリナネックライン
  • 白のショートグローブ
  • トップに白のリボンつき二層のベール
  • ホワイトサテンのボウつきパンプス。レネ・マンシーニ1956年SS

ポイントは、ウエディングのためにデザインされたドレスではなく、ファッション誌のためにデザインされたウエディングドレスだということです。だからこそ、女性が求める究極のシルエットがそこにはあるのです。

映像の中では実に優雅に見えるのですが、1956年6月に行われた実際のパリの一ヶ月間のロケーション撮影は過酷を極めました。季節はずれの雨が続きじめっとした環境の中で、撮影ははかどらず予算も超過し、ぬかるんだ足場で、滑りやすい草の上で、ウエディングドレスを着て踊るオードリーのサテンのシューズは泥だらけになりました。

「20年間憧れていたフレッド・アステアとのダンスで、得たものは泥だけよ」と冗談めかして言うほどの環境で生み出されたダンス・シークエンスはさりげなく配置された白いハトと白鳥が効いていて、二人のダンスと牧歌的な雰囲気がマッチしていました。

シニヨン・スタイルのオードリーの壮麗なる美しさ(どこかナタリー・ポートマンを思わせます)。

ウエディングブーケはスズランです。

女優は涙を流すことが出来ます。一方、ファッションモデルは涙をアクセサリーにしてしまいます。

そして、このウエディングドレスがフィナーレを飾るため二度登場するのです。

ヴェールの素材感が良く分かる写真。

祝福するように咲き誇る赤い薔薇と白いドレス。

スズランのブーケを持つオードリーとフレッド・アステア。

ショートグローブが聖なる雰囲気を与えています。

サブリナネックラインとは、オードリーの鎖骨を巧みにカバーするデザインです。

トップにリボンという非常に珍しいウエディングベールのデザイン。

憧れのアステアと踊るオードリー。

『パリの恋人』のアイコニックな写真。

このドレスがセパレーツであることが分かる写真。

自由にダンス出来るように、ダンス仕様のウエディング・ドレスのフィッティング風景。ジバンシィの格好良さも映画スター級です。

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ジョー・ストックトンのファッション13

ギャルソン・ルック
  • デザイン:イーディス・ヘッド
  • 白のサテンシャツ、スタンドカラー、左胸にポケット
  • 黒のサブリナパンツ
  • 黒のサルヴァトーレ・フェラガモのローファー
  • ブラックソックス

右端の女性のファッションも素敵です。

手塚治虫の『リボンの騎士』に引用されたスタイル。


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マギー・プレスコットのファッション6

ホワイトシャツ×ブラックパンツ
  • デザイン:イーディス・ヘッド
  • ダブルボタンシャツ、オフホワイト
  • ブローチ
  • 黒のトレアドールパンツ
  • 黒のTストラップサンダル

エレガントなダブルボタンシャツ。

シルエットも颯爽としていて素晴らしい。

オードリーと並んでも引けを取らない存在感。

作品データ

作品名:パリの恋人 Funny Face (1957)
監督:スタンリー・ドーネン
衣装:ユベール・ド・ジバンシィ/イーディス・ヘッド
出演者:オードリー・ヘプバーン/フレッド・アステア/ケイ・トンプソン/ドヴィマ