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ジェームズ・ボンド

『女王陛下の007』Vol.5|素晴らしかったジョージ・レーゼンビー

ジェームズ・ボンド
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「おまえはマカロニ・ウエスタンどまりだ」と言われた男

本作は、1968年10月21日のスイス・ロケから始まり、3ヶ月間のスイス・アルプスでの撮影を経て、1969年6月23日、ポルトガルの撮影で終了します。撮影の日程は大幅に58日間オーバーするのですが、制作費の10倍の収益を上げる大ヒットになりました。

しかし、1969年12月19日のプレミアに、ジョージ・レーゼンビーは長髪にひげ面というジェームズ・ボンドらしからぬ、1969年という時代を反映したヒッピースタイルで登場しました。

そんなレーゼンビーの姿を見て激怒したプロデューサーのアルバート・ブロッコリは、一言こう言い放ったのでした。「ボンドは英国人じゃないとダメだな」と(レーゼンビーはオーストラリア人)。

その瞬間、ブロッコリの中で、レーゼンビーは永遠に葬り去られたのでした。後日、レーゼンビーがボンド役を再びやりたいとブロッコリに電話したときのことをこう述懐しています。「それは不可能だと私は断りました。しかし、私はあの作品が素晴らしい作品だったと実感している。脚本もよかった。何よりも、レーゼンビーはボンド役として最高の演技を見せていた」。


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ジェームズ・ボンド・スタイル15 そして、トレーシーとの再会

スキージャケット
  • タータンチェック・ウール・スキージャケット、グレーの3つレザーボタン

ポルトガルのサマー・リゾートから、スイスのウィンター・リゾートまで、季節感さえも壮大なボンド・ムービー。

ボンドにしては、可愛らしいジャケットです。

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ジェームズ・ボンド・スタイル16

チョーク・ストライプスーツ
  • ダークネイビーのフランネル・チョーク・ストライプスーツ
  • フランク・フォスターのスカイブルー・ポプリン・シャツ
  • ネイビ・シルクニットタイ

ニューヨーク・マフィアの一員に見えます。

どこまでもストライプスーツが似合わない二代目ボンド。

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ジェームズ・ボンド・スタイル17

スキー&ボブスレー・スタイル
  • アノラック・パーカー、ブルー・ウインド&ウォータープルーフ・ジャケット、フード付き、胸に二つのベロクロ・チェスト・ポケット、ヒップにスラッシュジップ・ポケット、アジャストできるカフス、ヒップ丈
  • 下には、ブルーのポロネック・プルオーバー
  • ブラック・アンクルブーツ
  • ブラック・レザーグローブ、銀のバックルで手首に固定
  • ロレックスのサブマリーナー5513

壮大なスキー・アクションを撮影したのは、『007は二度死ぬ』で片足を失った伝説のカメラマン・ジョン・ジョーダンによるヘリコプターぶら下がり空撮によるものです。

しかし、ジョン・ジョーダンは、本作公開時(1969年)に『キャッチ22』撮影中の事故によりメキシコ湾で死にました。

ボンド役を降板した時、プロデューサーのアルバート・ブロッコリは、レーゼンビーに「おまえはマカロニ・ウエスタンどまりだ」と言い放った。

のどかにブロデルド=テリー・サバラスに、バイクの手ほどきをするボンド=レーゼンビー。めっちゃ仲良しやん!

レーゼンビー=ボンドは、一作限りだったから良かったのか、それとも継続出演するべきだったのか・・・

伝説のボブスレー・ファッション。

一体なんなんでしょう!このカッコいい臨場感とカラーバランスは!

カッコよすぎる黄色のヘルメット!!

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ジョージ・レーゼンビーに栄光あれ!

トレーシー=ダイアナ・リグと共に。

絶妙のバランスを誇る最高のボンドムービー!アクションとロマンスと悲劇とエモーションと、そして、壮大なスケール感が!

クリストファー・ノーラン (『ダークナイト』(2008)『インセプション』(2010)の監督)

この作品は、ショーン・コネリーこそが唯一無二のジェームズ・ボンドだと認識されていた(ジェームズ・ボンド=ショーン・コネリーただ一代限りと考えられていた)時代に生み出された作品であり、誰もが、この作品でボンド・ムービーは終わるのだろうと(恐らくプロデューサーも含めて)考えられていた作品でした。

だからこそ、総決算的な豪華さに満ち溢れています。ボンドの衣装だけで20着もの衣装が用意されており、ボンドカーもアメリカンなフォルムでまったく人気はなかったアストン・マーティンDBSが投入され、さらにゴージャス感たっぷりのポルトガル・リスボンとスイス・ロケを敢行し、ルイ・アームストロングの名曲が現在に至るまでのボンドムービーにおける「最高のラブソング」の地位を占めるにいたっています。

この作品の後、ジョージ・レーゼンビーの俳優としてのキャリアは、ボンドを降板した時にブロッコリに「おまえはマカロニ・ウエスタンどまりだ」と言われたように、落ちていきます。

そして、1973年、まだ『燃えよドラゴン』で世界的なスターになる前のブルース・リーとの共演が決定します。1973年7月20日、香港の地を踏んだレーゼンビーがブルース・リーと初対面するその日にブルース・リーは死亡します。

こうして、レーゼンビーの俳優としてのキャリアは完全に終了し(なお1975年に黒社会のボス兼映画スターのジミー・ウォングと『スカイ・ハイ』で共演)、以後、ジェームズ・ボンドの亡霊のような役柄を演じる程度の存在となったのでした。

しかし、彼には1969年の『女王陛下の007』があります。もう一度あの言葉を繰り返しましょう。監督のピーター・ハントの言葉です。「本物のジェームズ・ボンドはショーン・コネリーやロジャー・ムーアじゃない。ジョージ・レーゼンビーこそボンドそのものなんだ」

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ジェームズ・ボンド・スタイル18

ウエディング・スーツ
  • テーラー:ディミ・メイジャー
  • ミッドナイト・ブルー・シングル・ラウンジコート、ピークラペル、ダブルベンツ、2ボタン
  • ライトグレー、6ボタン・シングル・ベスト
  • グレー・トラウザー
  • 白のポプリンシャツ
  • ライトブルーのグレー・サテン・ネクタイ、ウィンザー・ノット
  • ブラックレザー・スリッポン・ローファー
  • ロレックス・サブマリーナー
  • ネイビーブルーのフェルト帽

ボンドムービー史上、最初で最後の結婚シーン。

そして、QとM,そして、ミス・マネーペニーが登場します。

そして、トレーシーはブロフェルドに暗殺されるのです。

作品データ

作品名:女王陛下の007 On Her Majesty’s Secret Service(1969)
監督:ピーター・ハント
衣装:マージョリー・コーネリアス
出演者:ジョージ・レーゼンビー/ダイアナ・リグ/テリー・サバラス/アンジェラ・スコーラー/カトリーヌ・シェル