オダリスク
原名:Odalisque
種類:オード・パルファム
ブランド:ニコライ
調香師:パトリシア・ド・ニコライ
発表年:1989年
対象性別:女性
価格:30ml/15,400円、100ml/38,500円
販売代理店ホームページ:NOSE SHOP
その乳白色の肌から匂い立ちそうな香り
ニッチフレグランス・ブランドの元祖とも言えるニコライが、1989年に創業された時に発表した4つの香りのうちのひとつ。それが「オダリスク」です。創業者であり専属の調香師パトリシア・ド・ニコライにより調香されました(叔父さんはジャン=ポール・ゲラン)。
ローズとジャスミンではなく、スズランとジャスミンにより生み出された非常に珍しいフローラル・グリーン・シプレの香りです。
〝オダリスク〟とは、オスマン帝国においてスルターンに従事するハーレムの女奴隷のことを指すのですが、どうやらこの香りの〝オダリスク〟は、ドミニク・アングルが「グランド・オダリスク」(1814)で描いた神秘的な美女を指していると思われます(パトリシアは、アングルとエドゥアール・マネを崇拝している)。
それは、陽が燦燦と照る場所よりも、日陰を好む可憐なる白い花スズランの繊細で儚い美しさを、オダリスクの美女に重ねあわせ、その乳白色の肌から匂い立ちそうな香りを表現したようです。
とんでもなくクールビューティーなスズラン
暗黒からのご招待。闇の向こうから流れてくる、オークモスとビターなガルバナムに飼いならされたジューシーなマンダリンオレンジとベルガモット。それぞれが吸い寄せられるように肌に到来する情景からこの香りははじまります。
絶対に食べることはできないコケを感じさせるシトラスの瞬発力が衰えていくにしたがい、入れ替わるようにして、謎の完熟フルーツ(アプリコット)に導かれ、闇の中に居る淑女然としたジャスミンとチューベローズのクリーミーな甘さがビロードのように広がります。
そんな甘美な暗闇の中から、スゥーっと突き抜けるように白いスズランが浮き上がり、フレッシュグリーンな香りを解き放ちます。甘さの中から立ち上る煙のように、凛とした鈴蘭の音色が厳かに鳴り響いた時、パウダリーなイリスバターが降り注がれます。
静寂に支配された暗黒の中で、白い閃光のようなクリーミーなスズランが、イリスバターの甘い浮遊感と、オークモスの塩気を含んだコケ蒸した空気感を与えられ、はかなく身体をしならせ踊る女性を〝そこに見た〟ような幻覚を感じます。
〝心を奪うようなスズラン〟とも言えます。「オダリスク」という名でありながら、20世紀のジャンヌ・モローやカトリーヌ・ドヌーヴの横顔のような、凛とした気高さを感じさせます。
やがて、最初から存在感を示していたオークモスに、パチョリとムスクが溶け込み、スズランを中心とするホワイトフローラルブーケに、温かな女性の素肌を感じさせるアプリコットの優しい余韻を残してくれるのです。
ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「ごくごくまれに、調香師の妄想のおかげで構成は名の知られた大陸を後にし、未開の島へと上陸する。そして、そこが自分の土地だと主張する。・・・たとえばオダリスクのように、香水製造のケルゲレン諸島であり、損なわれることもなく、吹きさらしの状態でほとんど忘れ去られている。」
「パトリシア・ド・ニコライの確かな航海術によって発見されるまでは、ほんの一握りの人たちだけが、「アプレロンデ」のシャイで物思いに沈んだ無情なフローラルと、「クリスタル」風のかどのあるグリーンシプレに挟まれた海から、その島が現れるかもしれないと思っていたのだろう。」
「そんな中、すばらしい判断によって、オダリスクのジャスミンとフローラルアコードがうまれた。これはどちらも抽象的でありながら、ゆるぎなく、オークモスのビターノートと結びついて、初めのうちは繊細だが、使ってみると力強くも輝きもある。古典的なシプレのアコードの内側から大理石の輝きがにじみ出てくるまで、まるで調香師が余分な素材を巧みにそぎ落としたかのようだ。ほかにない、もっと評価されてしかるべき作品であり、男性がつけてもたいへんよい。」と5つ星(5段階評価)の評価をつけています。
香水データ
香水名:オダリスク
原名:Odalisque
種類:オード・パルファム
ブランド:ニコライ
調香師:パトリシア・ド・ニコライ
発表年:1989年
対象性別:女性
価格:30ml/15,400円、100ml/38,500円
販売代理店ホームページ:NOSE SHOP
トップノート:ベルガモット、マンダリン・オレンジ、ガルバナム
ミドルノート:スズラン、ジャスミン、アイリス、チューベローズ
ラストノート:オークモス、パチョリ、ムスク