アイリス ガナッシュ
原名:Iris Ganache
種類:オード・パルファム
ブランド:ゲラン
調香師:ティエリー・ワッサー
発表年:2007年
対象性別:女性
価格:75ml/35,200円
第二次グルマン・ブームを作った香り
2005年、パリ・シャンゼリゼ通り68番地のゲラン本店のリニューアルオープンを記念して発売された「ラール エ ラ マティエール(芸術と貴重なる生の素材)」コレクションは、時のクリエイティブ・ディレクター、シルヴェーヌ・ ドゥラクルト(マチルド・ローランと共にジャン=ポール・ゲランの下で学んだ女性)によって生み出されました。
この〝世界で最も貴重な原料を使ってゲランのパッションを表現して欲しい〟というコンセプトにより生み出されるコレクションの第五弾として、2007年に発売された「アイリス ガナッシュ」は、五代目ゲラン専属調香師ティエリー・ワッサーにより調香されました(何よりも興味深いのは、この作品を調香した時は、ティエリーはまだ専属に就任していなかった)。
ウッディ・バニラ・オリエンタルのこの香りにより、第二次グルマン・ブームの幕が切って降ろされることになりました。2012年に廃盤となり、2018年にパリ・ブティックでのみ限定版が発売されました。
珍しいホワイト・チョコレート・ノート
新鮮なアイリスの根は土の匂いがし、純粋なイリスバターの香りはキュウリのような香りがします。希釈すると、ヴァイオレットやレッドフルーツ、ウッディでパウダリーな香りがします。ゲランが使っているアイリスは、チョコレートのアクセントを出すためにアルコールの中で熟成させて抽出しているものになります。
アイリスは、調香の組み合わせ次第で無限の可能性を持ちます。ローズと合わせれば、クラシックかつ荘厳さを生み、女性のリップスティックのような香りになります。ウッディな香料と合わせれば男性的な香りに、オレンジブロッサムと合わせればベビーパウダーのようなイノセントな香りになり、レザーノートとの相性は抜群です。
個人的にはグルマンノートやナッツの香りと合わせた時に最も興味深い香りに感じ、それを「アイリス ガナッシュ」で表現しました。さらにレッドフルーツとアイリスは、フレーバーにも使われるほど完璧に相性が良く、「フレンチ キス」で組み合わせてみました。
デルフィーヌ・ジェルク(ゲランの調香師)
チョコレートに生クリーム、バター、牛乳を混ぜ合わせることによって生まれる「ガナッシュ」とは、チョコレートの寿命を犠牲にする代わりに、うっとりするような滑らかな食感を生み出してくれます。
そんなガーナッシュとアイリスの出会いがこの香りのテーマです。スパイシー(シナモン)なベルガモットのオープニングからはじまり、パウダリーなアイリスがホワイトチョコレートに溶け合います。そこにシダーとパチョリが加わることにより、甘すぎず、香ばしすぎないクリーミーさを生み出すことに成功しています。
最後に、ホワイトムスク、バニラ、アンバーの香りが見事に調和し、ホワイトチョコレートの優しさに最後まで包まれていきます。
ちなみにこのホワイトチョコレート・ノート(ココアパウダーを含まないため苦くない)というものを生み出すことは(割と良くある)ダークチョコレート・ノートより遥かに難しく、繊細さを要求されます。更に、アイリスのパウダリーさに、クリーミーさが加わると、得てして上品さを失ってしまうのですが、この香りは、そうはなっていません。
タニア・サンチェスは『世界香水ガイド』で、「はじまりはカラメルの入った「アプレロンデ」のような美しい香り。それから強く甘くなり、最後には鋭くて油っぽいアンバーが残るだけ。ほんとがっかり。」と3つ星(5段階評価)の評価をつけています。
香水データ
香水名:アイリス ガナッシュ
原名:Iris Ganache
種類:オード・パルファム
ブランド:ゲラン
調香師:ティエリー・ワッサー
発表年:2007年
対象性別:女性
価格:75ml/35,200円
トップノート:シナモン、ベルガモット、ホワイトチョコレート
ミドルノート:アイリス、パチョリ、シダー
ラストノート:アンバー、バニラ、ホワイトムスク