ロタール
原名：Lothair
種類：オード・トワレ
ブランド：ペンハリガン
調香師：ベルトラン・ドゥシュフール
発表年：2014年
対象性別：ユニセックス
価格：100ml／33,550円
販売代理店ホームページ：ラトリエ デ パルファム
2014年「トレードルート コレクション」始動。
©Penhaligon’s
2007年にペンハリガンのジェネラル・マネージャーに就任し、ブランド復興の舵取り役を見事に果たしていたサラ・ロザラムが、右腕のクリエイティブ・ディレクター、ナタリー・ヴィンチグェッラと2008年に生み出した最初の香り「エリクシール」により、オリヴィア・ジャコベッティがペンハリガン初登場となりました。
それ以降、実力派調香師を起用する流れがはじまりました。そんな中、2014年に（19世紀末の）ロンドンと植民地とを結ぶ大英帝国の貿易ルートから想起された「トレードルート コレクション」として、3種類の香りが発表されたのでした（日本では2015年2月25日から全国発売されました）。
華美でデカタンな空気に包まれた19世紀の世紀末、世界の海洋貿易の中心地として栄華を極めたロンドンには、世界の最果てから贅沢品、神秘的な装飾品や特産品、あやしげな薬の数々が到着し、船着場にうず高く積まれていました。
いわば何でもありな冒険に満ちたフロンティア・スピリットと戦利品の数々からインスピレーションを得たコレクションです。
最後のティークリッパー〝ロタール号〟
ロタール号
2014年にスタートした「トレードルート コレクション」の3種類のうちのひとつが「ロタール」です。その名の意味は、実存した〝紅茶を運ぶ快速帆船＝ティークリッパー〟です。
アロマティック・スパイシーな香りは、調香師界の海賊とも言えるベルトラン・ドゥシュフールにより調香されました。ちなみに他のふたつの香りは「エンプレッサ」と「ラヴァンティウム」です。
1830年代後半から、ティークリッパーが英国とアジアの間で、茶葉・香辛料・阿片などの輸送に広く使われるようになりました。しかし、1869年にスエズ運河が開通し、ティーの取引はクリッパーから蒸気船へと移行していきました。
つまりペンハリガンが創業した1870年には、ティークリッパーは衰退の一途をつつあったのですが、創業年と同じ1870年7月2日に建造されたティークリッパーが〝ロタール〟でした。これまで建造された中で最も速いティー・クリッパーのひとつとして、衰退期の中で、好転の前兆として進水式は盛大に祝われました。
船名は、1870年5月2日に出版された英国首相ベンジャミン・ディズレーリの14作目の小説『Lothair』にちなんでつけられました。1870年9月10日にロンドンを出発した処女航海では、135日で日本の横浜に到着しました（さらにニューヨークまで96日間で）。
以後〝最後のティークリッパー〟のひとつとして、ロンドン、ニューヨーク、横浜、香港などの港へ紅茶貿易に就航し、1910年まで活躍しました。
素肌の上に生み出されるミルキーな海原を帆船で駆け抜けていく香り
大航海を終え、世界の果てからロンドンに到着した紅茶の安堵感に満たされるこの香りは、開放感に満ちたグレープフルーツに導かれて、ジュニパーベリーとカルダモンが溶け合う、大空と海原がひとつになったブルーに煌めく瞬間＝ジンのシャワーを全身に浴びるような爽快感からはじまります。
すぐに潮風を思わせるソルティーさに誘われて、アロマティックなラベンダーとバニラのスペシャルブレンドが到来します。それはまるで高級理髪店で身だしなみを整え、大航海の準備を完了したかのようです。
そして、帆船の帆のように何帆にも、スモーキーなブラックティー、グリーンでまろやかなフィグミルク、芳醇なマグノリアの花といった〝香りの帆〟が張り巡らされていきます。
やがて、スモーキーでミルキーなチャイのような〝香りの帆〟を張り、波のまにまに、アンバーグリス、シダー、オークモスの風が到来し、素肌に生み出された海原を駆け抜けていくのです。でありながら、ティーカップの中を航海しているようなロマンティックなムードも併せ持つ香りとも言えます。
ニスを塗ったウッドデッキの帆船が、戦利品を詰め込み威風堂々とミルキーな海原を駆け抜けていくように、優雅な余韻に満たされていくのです。
シンプルな紅茶の香りではなく、シトラスとハーブ、スパイスが贅沢にブレンドされた〝ティーフレグランスの隠れた名香〟と言えます。
香水データ
香水名：ロタール
原名：Lothair
種類：オード・トワレ
ブランド：ペンハリガン
調香師：ベルトラン・ドゥシュフール
発表年：2014年
対象性別：ユニセックス
価格：100ml／33,550円
販売代理店ホームページ：ラトリエ デ パルファム
トップノート：ジュニパー、カルダモン、ベルガモット、グレープフルーツ、フィグリーフ、レッドベリー
ミドルノート：フィグツリー、ラベンダー、マグノリア、ゼラニウム、ブラックティー
ラストノート：バニラ、ムスク、シダー、アンバーグリス、オークモス