マイバーバリー
My Burberry 1856年にトーマス・バーバリーにより、大英帝国で創立されたバーバリーが、最初のフレグランスを発売したのは1981年のことでした。しかし、この頃から1990年代にかけて、バーバリーのブランド力は落ちてゆき、存亡の危機に立たされていました。
そんな中、1997年にバーバリーのCEOに就任したローズ・マリー・ブラボー(1951-)は、2001年に帝国を復活させるための布石を打ちました。それはクリエイティブ・ディレクターとして若干29歳のクリストファー・ベイリー(1971-)を抜擢することでした。
彼は、1994年にダナ・キャランにより見出され、1996年にトム・フォード王朝下のグッチでレディース部門のシニアデザイナーに抜擢され頭角を現した人でした。ローズ・マリーは、バーバリーの存在感が薄かった北米市場攻略を、最重要視しました。そして2005年までの在任中に、ベイリーの起用が見事に当たり、目的を達成したのでした。
1990年代以降、バーバリーは、インターパルファムとライセンス契約し香水を作っていました。ベイリーは積極的に協力し、香水の開発に取り組んでいきました。
ベイリー率いるバーバリーは、2001年に4億2,500万ポンド(約6億200万ドル)だった売上を、2011年に15億ポンド(約24億ドル)にまで回復させました。つまり僅か10年で4倍の売上に拡大したのでした。
2014年9月に、ベイリーは、フランシス・クルジャンをバーバリーの調香師として迎え、「雨上がりのロンドン庭園」と「トレンチコート」からインスパイアされたアイコンフレグランス「マイ バーバリー」を誕生させました(日本では2015年6月3日に発売)。
私はかつてバーバリーのためにフレグランスを作っていましたが、私にとってイギリスのフレグランスは非常に単調で、アウトドア向きです。例えばフローリスには、白檀、ラベンダー、ライラック、バラの香りが混ざっています。一方、フランスのフレグランスははるかに知的です。
フランシス・クルジャン

©Burberry
バーバリーのトレンチコートを着た四姉妹の香り

©Burberry

©Burberry
バーバリーのCEO兼クリエイティブ・ディレクターだったクリストファー・ベイリーは、2013年にスター調香師フランシス・クルジャンの招聘を決定しました。
メゾン・フランシス・クルジャンの創作に集中しており、なかなかラグジュアリー・ブランドの調香を引き受けないクルジャンが、実質的にバーバリーの専属調香師になった理由は、彼自身がバーバリーというブランドを愛していたことと、トレンチコートという明確なインスパイアの源が存在していたからでした。
こうして2014年に生み出された、クルジャンのファースト・バーバリーが「マイ バーバリー」でした。ケイト・モスとカーラ・デルヴィーニュという二人のスーパーモデルが出演したキャンペーンは、明確に「マイ バーバリー」の客層はあらゆる世代の女性なのだということを示唆していました。
全4作品に共通する香料はローズです。それはローズこそが、バーバリーのトレンチコートを着る女性のイメージを体現する香りだと、クルジャンが確信してのチョイスでした。

「バーバリー シグネチャー コレクション」©Burberry
2017年には「バーバリー ビスポーク」という7種類のエクスクルーシブ・ラインがクルジャンの調香により発売されたのですが、日本に上陸することなく蜃気楼のように消えてゆきました(2025年に「バーバリー シグネチャー コレクション」として、それらの香りを含む9種のフレグランスが日本初上陸を果たしました)。
マイ バーバリー四姉妹
2014年
マイ バーバリー
「短い秋の雨上がりのロンドン庭園」と「ハニーカラーのトレンチコート」からインスパイアされた記念すべき第一作目。春というよりは、短い秋の香り。甘くクリーミーなスイートピーと、果蜜を滴らせるマルメロ、パッションフルーツ、ピーチに、ダマスク・ローズとグラース産センティフォリア・ローズがブレンドされたローズ・アブソリュートが溶け込んでいくフルーティフローラルの香り。
2015年
マイ バーバリー オードトワレ
「雨上がりの晴れた春のロンドン庭園」と「人生ではじめて袖を通すトレンチコート」からインスパイアされた第二作目。フレッシュな酸味が広がるレモン・ブロッサムとクリーミーなスイートピーが織り成す、朝霧の涼やかなモーニングシャワーからはじまりるフレッシュグリーンな素肌の上に、うっとりするほど壮大で清らかなローズガーデンが誕生する、春の花園の香り。
2016年
マイ バーバリー ブラック
「雨に濡れる夕暮れのロンドンの庭園」と「ブラックトレンチコート」からインスパイアされた第三作目。ピーチリキュールが素肌に引き伸ばされるその上に、ローズウォーターのようなさらりとフレッシュなローズが開花し、パチョリが溶け込んでゆく、激しく降りつける雨の中でエレガントに薫る花々をイメージした、情熱的なフローラル・アンバーの香り。
2017年
マイ バーバリー ブラッシュ
「早春の朝の光に満ちたロンドンの庭園」と「ハニーピンクトレンチコート」からインスパイアされた第四作目。シュワっと弾ける、酸っぱいレモンと甘く艶やかなザクロの鮮やかなフルーツのきらめくハーモニーからはじまり、シャキシャキとしたグリーン・アップルと繊細なピンクのローズペタルが溶け合い、洗練されたジューシーなローズの香りを広がらせてゆく、開花したばかりのみずみずしい花々の魅力をとらえた、上品なフルーティフローラルの香り。