カイロ
原名:Cairo
種類:オード・パルファム
ブランド:ペンハリガン
調香師:クリストフ・レイノー
発表年:2018年
対象性別:ユニセックス
価格:不明
サフランと三種類のウッドで生み出す、砂の都カイロの神秘。
2014年にペンハリガンから(19世紀末の)ロンドンと植民地とを結ぶ大英帝国の貿易ルートから想起された「トレードルート コレクション」として、「ロタール」「エンプレッサ」「ラヴァンティウム」「エッサウィラ」といった4種類(うち1種類は限定品)の香りが発表されました(日本では2015年2月25日から全国発売されました)。
そして、2015年に5作目の「ハルフェティ」が発売され、翌2016年に〝エジプト〟をテーマにした二つの香り「Alizarin」と「オードドニル」が発売されました。さらにその流れを汲んで、2017年に発売されたのが、8~9作品目となる〝インド〟をテーマにした「パイタニ」と「Agarbathi(アガルバティ)」でした。
2018年に発表された「カイロ」は、コレクションの記念すべき第10弾の香りでした。クリストフ・レイノーにより調香されたこの香りは、イスラム王朝ファーティマ朝の将軍ジャウハルにより969年に建設された、エジプトの新都=〝太陽にいちばん近い都〟カイロに昇る太陽からインスピレーションを得た香りです。
クリストフはこの香りを生み出すために、ルーブル美術館の膨大なエジプト古美術コレクションと、さらに実際にカイロを訪問し、古代のスパイスのトレードルートから象徴的な原料であるサフランと三種類のウッド(サンダルウッド、シダーパチョリ)をブレンドするという啓示を得たのでした。
『ネフェルティティの胸像』の魔性の微笑み
1912年12月6日に『ネフェルティティの胸像』が、ドイツ人考古学者により、ナイル川河畔のアマルナで発掘されました(1924年にはじめて公開された)。ネフェルティティとは、エジプト新王国時代の第18王朝のファラオだったアメンホテプ4世の正妃であり、この謎多き胸像が、現代のビューティ界に与えた影響は計り知れません。
〝美しい人の訪れ〟を意味する、この紀元前14世紀の古代エジプトのファラオの王妃について、どのような人であるかはほとんど知られていません。
確かなことは、紀元前1352年から1336年にファラオとして在位したアメンホテプ4世と共にエジプトを統治し、6人の娘を儲けたことでした。そのうちの一人がツタンカーメンと結婚して王妃になりました。つまりネフェルティティは、ツタンカーメンの義理の母なのです。
王の在位14年後に突如として一切の記録が消え去ったこの謎の美女は、のちにファラオになったとも言われています。「カイロ」のバラの香りは、この謎の美女の〝永遠の謎の微笑みの香り〟とも言えます。
永遠の謎の微笑みを浮かべるオリエンタルローズの香り
現実と幻想が交錯するカイロの香りは、魅惑のサフランのスパイスシャワーからはじまります。すぐに(ドライな)砂嵐が生み出す蜃気楼のようなインセンスの風に乗り、スリランカ産サンダルウッドとアトラスシダーが加わり、神秘的な香木の甘くて辛いカクテルに全身が満たされてゆきます。
そして、官能的なパチョリとラブダナムに導かれ、バラの花びらが咲くのではなく、酔わせて散るように、熟成した辛口の赤ワインが空を満たすように香りを広がらせてゆくのです。
それはまるでモノクロの世界の中で、赤いバラだけが唯一の色であるように、または丹念にルージュのリップを塗ったあなたの唇だけが唯一の色であるかのように、妖しくも艶やかなムードが高まってゆくのです。
この香りの中には、ウードが魔性の微笑みのように明らかに存在します。
やがて赤いバラが跡形も無く散っていくように、夢幻(ゆめまぼろし)の如く、心を奪い去るほど滑らかに美しいバニラとサンダルウッドが、酸味の効いたウードローズとひとまとめになり、オリエンタルローズの余韻を素肌にとけこませ、消えゆくのです。
香水データ
香水名:カイロ
原名:Cairo
種類:オード・パルファム
ブランド:ペンハリガン
調香師:クリストフ・レイノー
発表年:2018年
対象性別:ユニセックス
価格:不明
トップノート:ダマスクローズ、サフラン
ミドルノート:バニラ、シプリオール、ラブダナム
ラストノート:サンダルウッド、パチョリ、シダー