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グレース・ケリー

『裏窓』Vol.2|グレース・ケリーとヴァン クリーフ&アーペル

グレース・ケリー
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パールを愛していたグレース・ケリー

私はスクリーンの中と同じように、プライベートでもパールを愛用しています。

グレース・ケリー(ハリウッド女優になるまでパール以外のヒュエリーを付けなかった)

裏窓』のグレース・ケリー(1929-1982)のファッションはそれぞれがアイコニックでとても魅力的です。6種類の装いの中で3種類のドレスと1種類のスカートスーツに合わせてパールジュエリーを身に着けていることもあって、この作品は、『パールジュエリーの教科書』と言われます。

『裏窓』が、MIKIMOTOTASAKIの販売員にとって、一番最初に見て学ばなければならないバイブルと教え込まれるのは、この作品のそれぞれのシーンとファッションに合わせたパールのチョイスを知ることによって、「パールジュエリーが生み出す効果」を知ることが出来るからなのです。

一番最初の衣装とパールが生み出す化学反応は〝神々しさと優しさ〟

二番目の衣装とパールが生み出す化学反応は〝湧きあがる好奇心〟

三番目の衣装とパールが生み出す化学反応は〝知性と勇気〟

四番目の衣装とパールが生み出す化学反応は〝はちきれんばかりの若さと健康美〟

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グレース・ケリーとヴァン クリーフ&アーペル

パール・コレクションを身につけたグレース・ケリー。

グレース・ケリーが1956年にレーニエ3世より贈られたヴァン クリーフ&アーペルのパールジュエリー・コレクション。

グレース・ケリーとパールジュエリーを結びつけるものがたりをここでおひとつ。

1956年1月5日にモナコ大公レーニエ3世との婚約を発表した後、カルティエの10.48カラットのエメラルドカットダイヤモンドリングが婚約指輪として贈られました(1955年にすでにダイヤモンドとルビーが交互にあしらわれたカルティエのエタニティリングが贈られていた)。

この婚約発表を知り、ビジネス・チャンスと捉えた一人のジュエラーがいました。彼の名をルイ・アーペル(1886-1976)と申します。当時、彼は1906年に創業したヴァン クリーフ&アーペルのアメリカ支社長でした。

早速レーニエにお祝いの手紙を送り、モンテカルロの支店に殿下のための記念品を用意してお待ちしておりますと一言添えたのでした。レーニエは、その職人技が光るエナメルと金で作られた女性用のヴァニティーケースに感動しました。そして、1956年3月、ニューヨーク訪問の際、グレースを連れ、結婚祝いのジュエリーを選ぶためにヴァン クリーフ&アーペルのブティック(1942年にオープンしていた)を訪れたのでした。

ルイ・アーペルが直々に接客する中、パールジュエリーのパリュールを望んでいたグレースは、その場で1953年から1956年の間に作られた作品一式を見て、ダイヤモンドが散りばめられた3連のパールネックレス、3連のパールブレスレット、パールイヤリング、パールリングを選んだのでした(そして、同年8月にヴァン クリーフ&アーペルは、モナコ公室御用達のジュエラーに認定されました)。

1982年9月13日に自動車事故でグレース妃が死去した後は、パールジュエリーのパリュールは、長女のカロリーヌ公女に引き継がれることとなりました。

マヨルカ島に新婚旅行中のグレース・ケリーとレーニエ3世、1956年。

1978年のグレース・ケリー。

亡き母のパールネックレスをつけた若かりし日のカロリーヌ公女。

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リサのファッション2

リトル・ブラック・ドレス
  • リトル・ブラック・ドレス、シルクオーガンザ、キャップスリーブ、プリーツスカート
  • 三連パールネックレスとパールイヤリング
  • 黒のパテントレザーの細ベルト
  • 黒のハイヒールパンプス

オールブラックに身を包むグレース・ケリーの凛とした美しさ。ヒッチコックがグレースを〝雪をかぶった噴火山〟と表現したように、この衣装は、喧嘩別れしたはずの主人公と、抱き合って抱擁している、グレースの雪解けシーンで登場します。

ブロンドの髪、真紅の口紅の中に存在する健康的な小麦色の肌が、ブラックドレスによって化学反応を起こし、真っ白の肌のような錯覚を生みだしています。

〝向かいのアパートばかり気にしないで私を見て欲しい〟と言っているはずが、彼女自身も、どんどん不審な向かいの住人に興味を持ち始めるのです。情熱的でありながら、凛とした、意志の強そうな、グレース・ケリーそのものを体現した女性像を後押しするLBDです。

リトル・ブラック・ドレスとは、運命のルーレットを廻すときに着るドレスなのです。

二人のイメージは、戦場カメラマン、ロバート・キャパイングリッド・バーグマンの熱愛から膨らんでいきました。

20代の美女にとっての最高のアクセサリーは、40代の紳士です。

この帽子は、作中登場しません。

映画史上唯一存在するグレース・ケリーの喫煙シーン。

リサも〝裏窓〟に目覚めた瞬間。そして、彼女は何かを見た!

非常に珍しいこの衣装の写真。

イーディス・ヘッドのデザイン画。

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ファッションとクレショフ効果。

本作で最もアイコニックな衣装の登場です。

『裏窓』で、ヒッチコックが使用したクローズアップの効果は、ファッションという観点から見ても非常に興味深いものがあります。無表情のクローズアップの前にある映像が、その無表情にさまざまな表情を与えるという効果です。その名を<クレショフ効果>と言います。

例を挙げましょう。ロシアの名優イワン・モジューヒンの無表情なクローズアップに、スープの皿のカットをつないだところその顔には、食欲が感じとれます。次に同じクローズアップに、死んだ少女のカットをつなぐと、その顔には憐憫の情が読み取れます。最後に同じクローズアップに、ベッドに横たわる美女のカットをつなぐと、その顔には性欲が読み取れるのです。

それと同じことが、本作の主役であるジェームズ・スチュアートのクローズアップによって演出されています。籠の子犬を見て微笑み、半裸で踊る娘を見て同じく微笑んでいるのですが、その全く同じクローズアップが、全く違う表情を生み出すのです。

ヒッチコックがなぜ、女優の魅力を引き出す天才なのか?そのヒントが、この<クレショフ効果>に隠されています。つまるところ、女優に必要なのは、天才的に映像をつなぐことの出来る監督の存在なのです。

ファッション・アイコンと呼ばれる女優たちに共通しているのは、そんな監督に恵まれているところにあります。どれほど素敵なファッション・フォトが羅列されようとも、そこにクローズアップ=感情がなければ、ただの無機質なイメージとして忘れ去られていくのです。

しかし、同じファッションを女優が着て、ドラマが存在し、そこに効果的なカットが繋がれていればそのファッションは不滅の輝きを持ちえるのです。

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リサのファッション3

オードニル(ナイルの水)スーツ
  • 淡いオリーブグリーンのシルクスーツ。見るからに上品なシルクシャンタン。チュール付き、ボタンなし、裏地は白のサテン、3/4スリーブ中間丈のジャケット。スタンドカラーに、ゆるやかな肩のシルエット。クリストバル・バレンシアガのなで肩シルエットのデザインを思わせる。ペンシルスカート
  • ホルターネックのシルク・フロントラップブラウス。ノースリーブ
  • 一連のパールネックレス。カメオ・パールイヤリング。ゴールドと華麗なロケットとパドロック(南京錠)つきのシルバー・パールブレスレット
  • 白いサテンのピルボックスハットと取り外せるハーフヴェール
  • 白グローブ
  • 黒のマーク・クロスのオーバーナイト・ケース
  • 黒のレザーパンプス。スティレットヒール。ポインテッドトゥ

このスーツ・カラーはヒッチコック自身のチョイスです。のちに『鳥』(1963)で、ティッピ・ヘドレンが着るシャネル風スーツと同じ色です。

ヒッチコックはこの色にこだわりました。

自然に振舞いながらも、エレガントな佇まいのグレース・ケリー。

アイコニックなパールブレスレット。

剥き出しのアームラインにワンポイントのパールブレスレット。

バンブー・ブラインドを上げるグレースの背中のボディラインが美しいです。

ピルボックスハットとヴェールの非日常感。

グレース・ケリーの健康的に日焼けした肌。

エレガントなプリンセス・ルックを演出する低めのスタンドカラー。

グレース・ケリーは身長が169cmありました。

素敵なシルエットのハイヒールパンプスです。

非常に珍しいこの衣装の写真。

全体のシルエットの美しさが分かる写真。

イーディス・ヘッドのデザイン画。

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マーク・クロスのオーバーナイト・ケース

グレース・ケリーの第二のアイコン・バッグ。


「女は宝石類をバッグにしまったままにしておかないわ」という名言と共に登場するこのバッグは、今では、グレース・ケリーの第二のアイコン・バッグとなっています。

グレースのアイコン・バッグと言えば、1957年にマスコミに妊娠を気づかせないために持参していたエルメスサック・ア・クロワ=のちにケリー・バッグと呼ばれるものであり、これこそが、バーキンと並ぶ映画女優の名のついた史上最も有名なバッグのひとつなのです。

そんな彼女の第二のアイコン・バッグとして有名なのが、マーク・クロスのオーバーナイト・バッグなのです(現在では、グレースボックスバッグと呼ばれ、マーク クロスから販売されています)。

作品データ

作品名:裏窓 Rear Window (1954)
監督:アルフレッド・ヒッチコック
衣装:イーディス・ヘッド
出演者:ジェームズ・スチュアート/グレース・ケリー/セルマ・リッター