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クリスチャン・ディオール

【ディオール】ディオール アディクト(ティエリー・ワッサー/フランソワ・ドゥマシー)

クリスチャン・ディオール
@DIORBEAUTY
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ディオール アディクト

原名:Dior Addict
種類:オード・パルファム
ブランド:クリスチャン・ディオール
調香師:フランソワ・ドゥマシー
発表年:2002年、2012年、2014年
対象性別:女性
価格:30ml/11,550円、50ml/16,720円
公式ホームページ:ディオール

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2002年、ジョン・ガリアーノは世界中の女性に羽根を与えた!

©Christian Dior

©Christian Dior

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2002年7月4日、アメリカの独立記念日に合わせて開催された、ディオールの2002年秋冬オートクチュール・コレクションのランウェイは、この上なき期待感に包まれていました。それはジョン・ガリアーノが前夜に、「私たちはディオールを解体しました。今こそ再建の時です!失われたグラマラスを取り戻すのです!」という力強い革命宣言のためでした。

このコレクションには、ガリアーノが、ハリウッドとメキシコを風まかせに旅して得たインスピレーションの集大成が、たっぷり詰めこまれていました。それはまさにハリウッド・バビロンとクラシック・ディオールが融合された世界観に、ガリアーノの才能がかぶりついているような凄まじさがありました。

ガリアーノ自身がオール・ホワイト・ルックでダチョウの羽根に包まれながら、風に舞うようにランウェイに現れた瞬間、ディオールは、そのグラマラスの扉を、更に若い20代に向けて開放したのでした。

そして、この時、「ディオール アディクト」の発売が高らかに宣言されたのでした。「ADDICT IT!」と!

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ティエリー・ワッサーが覚醒した『2002年版』

@DIORBEAUTY

20世紀末にジャドールを発売し、世紀末覇者となったディオールは、21世紀に入り、20代をターゲットにしたコスメとフレグランスを創造することを至上目的としました。

かくして、2002年10月に「ディオール アディクト」の香りが大々的な広告キャンペーンと共に発売されたのでした(その少し前に同名のリップとネイルカラーが発売されていた)。

しかし、そのテレビCMの世界観(「ADDICT IT!」)が、ヨーロッパとアメリカにおいて「いかがわしく」「薬物中毒者を連想させる」という理由で、大反発を受ける波乱の幕開けとなりました。

日本語訳すると「ディオールに首ったけ!」という意味のこの香りは、若き日のティエリー・ワッサーにより調香されました。

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まぼろしの最初のキャンペーン広告

@DIORBEAUTY

悪女がとぐろを巻くように、体液にびっしょりと濡れているこの広告。今見ても、扇情的で、獣心を目覚めさせるパワーに満ち溢れています。

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〝夜の女王〟タブー・ディオール・スタイル

〝夜の女王〟大輪柱

かつてのヴィクトリアズ・シークレットのランウェイに最も相応しい香りのイメージと言えるほどに、トランスジェンダーが表現する女性の妖艶さを、女性自身が表現しているような、遮るもののない圧倒的なグラマラスなムードにこの香りは支配されています。

漢字でこの香りを表現するなら「黒蜥蜴」か「女王蜂」、ひらがなでこの香りを表現するなら「でんきくらげ」でしょう。食べ物で表現するなら「脂の乗ったステーキのようなバニラ」です。

さぁ、サバト(魔宴)のさなかに煮られるバニラの液体をあなたも一滴いかが?と言わんばかりに、水気の足りないオレンジに、魔法のバニラが振り掛けられます。そのスモーキーなバニラによって、みるみる水気を含んだオレンジは、白い花を咲かせ、バニラに官能的な甘さを加えてゆきます。スモーキーさの秘密とも言える、マンダリンリーフとブラックベリーはあくまでもバニラの甘さに官能的な含み笑いを生み出す役割に徹しています。

間違いなく、悪意を秘めたバニラがそこには存在します。やがて、この魅力的なバニラは、スパイシーな小悪魔のようなシナモンを加え、あざとさ満点の妖艶さを振り撒きながら、この香りの主役を待ち望みます。

〝夜の女王〟大輪柱(セレニケレウス、またの名をムーンライト・カクタス)の登場です。ここに、成熟した〝ほとばしる官能性〟が解き放たれるのです。大輪柱とは、1年に一夜だけ大輪の花を数時間咲かせる非常に珍しいサボテンです。そして、バニラとオレンジフラワーを思わせる香りを持ちます。

ジャスミン、ローズ、イランイランがサボテンの花に奥行きを与えながら、バニラと貪り合うように一体化してゆきます。そして、ドライダウンの時を待ち望みます。やがてクリーミーなサンダルウッドとブランデーのように甘いアンバーが、フロリエンタルの真骨頂とも言えるダークな神秘性を称えながら香り全体を包み込んでゆきます。

相当妖艶な踊りを見せるショーダンサーの姿を連想させる危険な夜の女王の香りです。まさに香りの「タブーアメリカンスタイル」です。

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女性の中の悪魔を引き出すことに徹した香り。

@DIORBEAUTY

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ディオール アディクト」シリーズに一貫している〝自由奔放に人生を謳歌する女性〟のフレグランスというテーマに実に忠実な香りです。

ニック・ナイトの撮影により、ファッション・モデルのリバティ・ロス(1978-)がつとめた広告キャンペーン・フィルムがかなりクールです。

そして、ティエリー・ワッサーは、この香りにより、ついに悪魔の香り「サルバドール ダリ プールオム」(1987)の呪縛を、ディオールの勝色のボトルに封印し、解き放たれたのでした。

ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「安いチョコレートと、調和していないもったりしたフローラルの組み合わせで、どこから嗅いでもいやな感じ。」と評価し、

タニア・サンチェスは同書内で「ある日酔ったままメイシー百貨店に行ってこれを見つけた私は、オレンジブロッサムの香るバーボンバニラの完璧な香水を見つけたと、まるで生涯を賭けた探し物が見つかったみたいに、そこらじゅうに吹聴した。残念なことに、バーボンの香りは自分だった。」と2つ星(5段階評価)の評価をつけています。

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香水データ<2002年版>

香水名:ディオール アディクト
原名:Dior Addict
種類:オード・パルファム
ブランド:クリスチャン・ディオール
調香師:ティエリー・ワッサー
発表年:2002年(現在廃盤)
対象性別:女性
価格:20ml/5,000円、50ml/9,000円


トップノート:ブラックベリー、マンダリンリーフ
ミドルノート:オレンジ・ブロッサム、大輪柱、ジャスミン、ブルガリアン・ローズ
ラストノート:バーボンバニラ、サンダルウッド、トンカビーン

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フランソワ・ドゥマシーによる『2012年版』

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ディオールの初代専属の調香師フランソワ・ドゥマシーにより2012年にリニューアルされたこの香りは、「ディオール アディクト オー フレッシュ」と「ディオール アディクト オー センシュアル」と共に、アディクト・コレクションの一つとして発売されました。

オリジナルの神秘的な香りの奥行きは少し失われ、フレッシュなシトラスがトップで強化され、スモーキーなバニラとオレンジ・ブロッサムが対等に混じり合う中、スパイスはもはや自分自身が用済みであることを知り、去っていくのです。

ボトルデザインが若干違い、2014年ヴァージョンとの外見的な違いは、ゴールドとシルバーです。

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香水データ<2012年版>

香水名:ディオール アディクト
原名:Dior Addict
種類:オード・パルファム
ブランド:クリスチャン・ディオール
調香師:フランソワ・ドゥマシー
発表年:2012年(現在廃盤)
対象性別:女性
価格:20ml/5,500円


トップノート:シルクウッド・ブロッサム、マンダリン・オレンジ、オレンジ・ブロッサム
ミドルノート:大輪柱、ブルガリアン・ローズ
ラストノート:バニラ、サンダルウッド、トンカビーン

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現在発売中の『2014年版』

©Christian Dior

これが三度目のリニューアルになります。どちらかというと、オリジナル版を日常的に使用できるライト版にしたような香りです。

フレッシュなシトラスからはじまり、前2作品よりもはるかに優しく柔らかいスモーキースパイシーなバニラが、ジャスミン中心のフローラルによって逆に包み込まれていくように香ります。

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香水データ<2014年版>

香水名:ディオール アディクト
原名:Dior Addict
種類:オード・パルファム
ブランド:クリスチャン・ディオール
調香師:フランソワ・ドゥマシー
発表年:2014年
対象性別:女性
価格:30ml/11,550円、50ml/16,720円
公式ホームページ:ディオール


トップノート:マンダリン・リーフ、オレンジ・ブロッサム
ミドルノート:ジャスミン・サンバック
ラストノート:バーボン・バニラ