ベチバー プール エル
原名:Vetiver pour Elle
種類:オード・トワレ
ブランド:ゲラン
調香師:ジャン=ポール・ゲラン
発表年:2004年
対象性別:女性
価格:125ml/33,600円
女性のためのベチバーを作る試み
1959年に、当時22歳のジャン=ポール・ゲラン(1937-)により作られた「ベチバー」は、ゲランの五代目調香師ティエリー・ワッサー曰く「いつもジャン=ポールが身に纏っていた香りはただひとつでした。それは「アビルージュ」ではなく「ベチバー」でした。」と証言するように、彼が心の底から愛している処女作でした。
そして、ジャン=ポールが63歳になった2000年に「ベチバー」は41年ぶりにリニューアルされました。さらにこの頃、上海を訪問した彼は、ひとつの恋に落ちたと言われています。そして、その「東洋の恋」が彼に「ベチバー」の女性ヴァージョンを生み出させるきっかけになったのでした。
典型的な男性のための香料といわれるベチバーを女性のための香料にする試み。それはエルメスの「カレーシュ」(1961)、カルティエの「ル ベゼ デュ ドラゴン」(2003)に続くチャレンジでした。
ベチバーに非現実的な煌きを与える香り
非現実感を現実社会に降り注ぐ力があるのは、香水のみ。そんな言葉を体現するようにフレッシュなベルガモットとオレンジ・ブロッサムの香りと共に、太陽が燦々と照りつける中、収穫されている最中のベチバーのフレッシュグリーンな香りが土っぽい香りと共に煌きます。
そこに迷い込むピンクペッパーとナツメグがネロリに導かれベチバーと絡み合い、ベチバーは軽やかさを手にします。そして、(オリジナルで飛び込んでいったタバコの煙の中ではなく)ジャスミンとスズランの花束の中に飛び込んでいきます。
ソーピィーなフローラルブーケの中にベチバーが溶け込んでいく中、トンカビーンを中心としたゲルリナーデの温かな空気が香り全体を包み込んでくれます。この香りの最大の魅力は、日によって、ベチバーがフローラルと見事に調和することもあれば、フローラルに屈する日もあるということです。このアンバランスなバランスこそがこの香りの女性らしさでもあるのです。
「ベチバー プール エル」は、パリの空港と鉄道のアエリア免税店でのみ限定発売されました。そして、2007年に「パトリモワンヌ コレクション」のうちのひとつとして再販され、2012年まで発売されました。
ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「ベチバー プール エル」を「フローラル・ベチバー」と呼び、「ゲランのオリジナルの「ベチバー」は1965年当時、この種の香水の中では最高峰だった。フレッシュで、繊細で、慈しむかのようなに原料に忠実な香りでありながらも、きちんとしたフレグランスだった。だが時とともにいくぶんか香りが損なわれ、ほかの競争相手(セルジュ・ルタンス、フレデリック・マルなど)に追いつかれてしまった。」
「しかし、この女性用バージョンで再度返り咲いた。ベチバー プール エルは間に合わせに急いで作った香水のようなのに、悪くない。オリジナルの男性用香水にジャスミンをトップに加えて女の子らしくし、エスティ・ローダーの「プレジャーズ」のようなパウダー調の光り輝くムスクでモダンな香りになっている。そして「ミツコ」をすっきりとさせたようなシプレベースで仕上げている。」
「結果、みごとな均整を保つ持続性があり、親しみやすい日常用のベチバー香水が出来上がった。もしもどこででも買えたならば、絶対にベストセラーになっていただろう。」と4つ星(5段階評価)の評価をつけています。
香水データ
香水名:ベチバー プール エル
原名:Vetiver pour Elle
種類:オード・トワレ
ブランド:ゲラン
調香師:ジャン=ポール・ゲラン
発表年:2004年
対象性別:女性
価格:125ml/33,600円
トップノート:オレンジ・ブロッサム、ベルガモット、スズラン
ミドルノート:ハニーサックル、ジャスミン、ナツメグ、ピンクペッパー、ネロリ
ラストノート:ベチバー、トンカビーン、シダーウッド、ホワイトムスク