タバコ バニラ
原名:Tobacco Vanille
種類:オード・パルファム
ブランド:トム・フォード
調香師:オリビエ・ギロティン
発表年:2007年
対象性別:ユニセックス
価格:30ml/28,050円、50ml/39,600円
公式ホームページ:トム・フォード
タバコとバニラが愛を囁く『紳士同盟』
2007年にトム・フォードが発表した新たなるフレグランス・ライン「プライベート ブレンド コレクション」の第一弾として発売され、いまだに根強い人気を誇る香りです。「スパイスやコニャックの芳醇な香り漂う、イギリスの紳士クラブを思わせるフレグランスを誕生させました」という打ち出しよりも端的に、このオリエンタル・スパイシーの香りを伝える言葉は、「タバコとバニラで女性の耳元に愛を囁く紳士同盟」の香りなのです。
もちろんこの香りのイメージは、体格が良くスーツをうまく着こなす、つまりトム・フォード自身です。
そんなこの香りは、ジンジャー、クローブ、アニス、コリアンダーといったスパイスにより、タバコの花と葉から生み出される「催淫効果」を再現してゆきます。そこに、ベンゾインと組み合わせたバニラを(ラム酒のような砂糖漬けされた)ドライフルーツに寄り添わせ、〝相手に抗う気持ちを失わせていく〟見事な「甘い罠」を仕掛けています。
そんなタバコとバニラの見事な共犯関係は、オリビエ・ギロティンにより調香されました。
あるフレグランスの評価が、香りとボトル・デザインとブランドに対する愛情から弾き出されるとするならば、男性にとって、「タバコ バニラ」は、かなりの高評価となることでしょう。ことトム・フォードのフレグランスに関していうならば、外箱とボトル本体のフィット感も素晴らしく、それはトム・フォードのコスメ全般にも共通します。
特に日本人にとっては、仏教は、経典の中身ではなく、まず仏像に対する魅了から始まり、民主主義に対する理解も、占領したアメリカ軍のチョコレートから始まったように、「外面に惚れ、内面の理解へと走る」その民族性において、トム・フォードのフレグランスの外面は、所有欲をくすぐる要素に満ち溢れています。
トム・フォードという男を纏う香り
日本人にとって、相当ハイランク(ハイセンスではなく)な香りであることは間違いありません。背中で語ることが出来る男、サングラスで感情を隠した『地下室のメロディ』のジャン・ギャバン。
この香りが似合う男性は、〝感情を易々と表には出さない美学〟の中で生きているのでしょう。だからこそ、香りも外に向かう香りではなく、内へ向かう香りなのです。
間違っても全身「広告塔」のような流行ブランドに身を固める男性には似合わない香りです。そんな香りだからこそ、女性が身に纏うと、空間を完全に支配するほどのクールビューティーぶりを発揮することになるのです。
バニラが辛けりゃバニラの意味はないのですが、この香りは、バニラとタバコという磁石のプラスとマイナスを引き合わせることにより、それが、身に纏いし人自身の磁力となる香りなのです。甘くないバニラだからこそ、甘いバニラの香りよりも、上質なバニラをイメージさせる香りなのです。
ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「タバコ バニラ」に対して、「タバコバニラはダッチパイプタバコのにおいを完璧に再現し、改めて我々の嗅覚が複雑で濃厚な匂いを好むことを明らかにした。これは、ドライフルーツとハニーの新しい趣向で、セルジュ・ルタンスのがなりたてるようなミエル ド ボワよりもよいできばえになっている。よい香りだ。だが、どちらかというと、本物のフレグランスというよりは、心地よいルームフレグランスのようだ。」と3つ星(5段階評価)の評価をつけています。
香水データ
香水名:タバコ バニラ
原名:Tobacco Vanille
種類:オード・パルファム
ブランド:トム・フォード
調香師:オリビエ・ギロティン
発表年:2007年
対象性別:ユニセックス
価格:30ml/28,050円、50ml/39,600円
公式ホームページ:トム・フォード
トップノート:タバコリーフ、ジンジャー、クローブ、アニス、コリアンダー
ミドルノート:トンカビーン、タバコブロッサム、バニラ、カカオ
ラストノート:ドライフルーツ、ウッズ