腕時計のリューズを引っ張ると絞殺用のワイヤーが!
ロバート・ショウ(1927-1978)の冷酷なブロンドヘアの殺し屋像(どこかナチスドイツを連想させる=『バルジ大作戦』)が、この作品の成功を決定的なものにしたと言っても過言ではないでしょう。
良いアクションムービーには良い悪役が必要不可欠です。そして、この作品の中のロバート・ショウは、全ボンドムービーの中でも、最高の悪役のひとりであると言われています(最もジェームズ・ボンドに似た殺し屋でもある)。
それはロバート・ショウという俳優自身の存在感による部分も大きいのですが、それ以上に腕時計が殺し屋の暗殺道具になるという、少年が見てもワクワクする秘密兵器の存在が大きかったのでした。ファッションと小道具の関係。ボンド・ムービーとは、男性にとって、小道具がいかに大切かを伝えてくれる福音書でもあるのです。それはハットにしても、バッグにしても同じです。
なぜその人はその小道具をチョイスしたのだろうか?そのこだわりを感じさせる男性になりたい。そんな男性を見ていると私は退屈しない。男性とは永遠の子供であるべきなのです。小道具が生み出す色々な要因こそが、その男性の個性に直結するのです。
ジェームズ・ボンドの魅力とは、まさしくそんな永遠の子供らしさにあるのではないでしょうか?
レッド・グラントのファッション1
グレースーツ=尾行ルック
- グレーのガンクラブチェックウールスーツ、3つボタン、シングル、ナローラペル、センターベント
- 白のポケットチーフ
- フランク・フォスターのペールブルーシャツ
- 光沢のあるロイヤルブルーのサテンタイ
- ブラックレザー・スリッポン
- ブラックレザーグローブ
レッド・グラントのファッション2
グレースーツ=殺し屋ルック
- グレー×ブラウン・ピンストライプ、ウールスーツ、3つボタン、センターベント
- 白のポケットチーフ
- フランク・フォスターのクリームシャツ
- ソリッド・ブラック・タイ
- ブラックレザー・スリッポン
- ダークグレー・フェドラ
ジェームズ・ボンドのファッション8
オリエンタル急行のグレースーツ
- テーラー:アンソニー・シンクレア
- グレーピックアンドピック(シャークスキン)ウールスーツ、シングル、2つボタン、スリムノッチラペル、ベントレス
- ターンブル&アッサー、ペールブルー・ポプリン・シャツ、ターンバック・カクテル・カフス
- ネイビーブルーのシルクネクタイ
- 白のリネンのポケットチーフ
- ブラックレザー・3アイレット・プレイントウ・ダービー、ブラッチャー
- ロレックス・サブマリーナー6538
- ジェームス・ロック & カンパニーのオリーブブラウン・フェルト
- アーマライトAR‐7、『狼の挽歌』でチャールズ・ブロンソンが使っていたライフル
『北北西に進路を取れ』にオマージュを捧げたシーン
元々数年前に、モナコ王妃になっていたグレース・ケリーを再び映画界に誘い出すために、アルフレッド・ヒッチコックは、この作品の原作を映画化して、ジェームズ・ボンドをケーリー・グラントが演じ、タチアナ・ロマノヴァをグレースが演じるという構想を描いていました。しかし、これらのアイデアは、『めまい』(1958)が興行的に失敗したため破棄されたのでした。
本作のヘリコプターの追跡シーンは、そんなヒッチコック監督の『北北西に進路を取れ』(1959)へのオマージュでした。ちなみに本作の多くのシーンは実際にロケ撮影された1963年当時としては極めて珍しいリアリズムを追及したアクションムービーでした。
ジェームズ・ボンドのファッション9
ヴェニス・スーツ
- テーラー:アンソニー・シンクレア
- チャコールグレー・チョークストライプ・フランネルスーツ、シングル、2つボタン、スリムノッチラペル、センターベント
- ターンブル&アッサー、ライト・エクリュ・ポプリン・シャツ、ターンバック・カクテル・カフス
- ネイビーブルーのシルクネクタイ
- 白のリネンのポケットチーフ
- ブラックレザー・3アイレット・プレイントウ・ダービー、ブラッチャー
ボンドのアタッシュ・ケース
アタッシュケースはスウェイン・アドニー・ブリッグ。内装のレッドレザーが特徴。
1750年にロンドンでジョン・ロスによって創業された主に傘、ステッキ、狩猟用の鞭などを製造していた英国王室御用達のブランド。英国産のブライドルレザーを使用したアタッシュケースは英国紳士の定番。
本作により、日本でアタッシュ・ケースが流行するきっかけになりました。
作品データ
作品名:007/ロシアより愛をこめて From Russia with Love (1963)
監督:テレンス・ヤング
衣装:ジョセリン・リカーズ
出演者:ショーン・コネリー/ダニエラ・ビアンキ/ロバート・ショウ/ロッテ・レーニャ