パルファム ドゥ エルメス
原名：Parfum d’Hermès
種類：オード・トワレ
ブランド：エルメス
調香師：アキコ・カメイ、レイモン・シャイラン
発表年：1984年
対象性別：女性
価格：不明
史上初めて日本人が調香したエルメスの香り
©Hermès
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1970年代にエルメスの香水は「エキパージュ」と「アマゾン」の僅か2作品しか発売されていません。それはエルメスが丁度低迷期に入っていたためでした。第4代社長のロベール・デュマ（1898－1978）は、1951年に社長就任してから、エルメスがラグジュアリー・ブランドとして確固たる地位を確立することに心を砕きました。
そのため、60年代に、ピエール・カルダンやイヴ・サンローランが行ったライセンス生産を一切行いませんでした。しかし、一方で、カジュアル志向の時代の潮流に乗り切れず「古くさい」イメージが定着するようになってしまいました。
そして、ロベールの後、1978年にジャン＝ルイ・デュマ（1938－2010）が僅か40歳で第5代社長に就任したのでした。彼は、ロベールの4子（6人兄弟）であり、元々家業を継ぐつもりはありませんでした。
パリ政治学院で学んだ後、イランやアフガニスタン、ネパールをシトロエンで放浪の旅をしたり、ジャズドラマーとしてチェコスロバキアを旅し、写真を撮影することをライフワークにしていたアート気質の高い人です。
1963年には、ニューヨークの百貨店ブルーミングデールズのバイヤートレーナープログラムに半年参加しました。そして、翌年エルメスに入社し、アーティスティック ディレクターとして活躍し、1978年に第5代社長に就任したのでした。それは、アップル社が設立された2年後であり、ソニーからウォークマンが発売される前年にあたりました。つまり、あらゆるブランドのグローバル化が進んでいこうとしていた時期でした。
バーキンと共に誕生した香り
初代バーキンとジェーン・バーキン。
そんな時期に、アメリカでグローバルなブランド戦略を学んだ経験を生かし、ジャン＝ルイは、アメリカとアジアに市場を拡大していったのでした。そして、1984年にはバーキンを発表し、10年間で10倍の売り上げを生み出すことに成功したのでした。
そんなバーキンが生まれた年に、10年ぶりの新作香水を発表するにあたり、多くの調香師に試作品を依頼したのでした。
かくして後にディプティックの「オイエド」（2000）を調香することになるアキコ・カメイ（亀井明子）とレイモン・シャイラン（イヴ・サンローランの「オピウム」を調香した三人のうちの一人）の作品が選ばれ、「パルファム ドゥ エルメス」として発売されることになるのでした。
雪が降る。心の中に降り積もる〝エルメスのエレガンス〟
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赤いローズの上に雪が降るように、冷たいアルデハイドが優しく降ります。白い雪に覆われ失われていく緑が最後にその存在を示すように、ヒヤシンスとガルバナムがビターグリーンな香りを解き放ちます。
そんな心に孤独がつのるはじまりの中、雪が、温かな白いアイリスとオークモスの粉雪へと変わってゆくのです。パウダリーなアイリスがうっとりするようなグリーンと溶け合い、冷たいローズに温かい心を与えてゆくように広がってゆきます。そして、ジャスミンとイランイランも一緒に花を咲かせてゆきます。
まるで滑らかなエルメスのリボンが、肌と心を結び付けていくように、柔らかに美しいパウダリーフローラルの中に、スモーキーで甘やかなアンバリーバニラとクリーミーなサンダルウッドが注ぎ込まれ、エルメスの〝抑制されたエレガンス〟は、静かにあなたの心の隙間に到達するのです。
肉体にブランドロゴを刻み込むような香りではなく、心に、エルメスの精神を宿してくれる温かいブランケットのような香りです。
この香りは、2000年以降「ルージュ エルメス」の名で販売されることになります（もちろん再調香されています）。
香水データ
香水名：パルファム ドゥ エルメス
原名：Parfum d’Hermès
種類：オード・トワレ
ブランド：エルメス
調香師：アキコ・カメイ、レイモン・シャイラン
発表年：1984年
対象性別：女性
価格：不明
トップノート：アルデハイド、ガルバナム、ヒヤシンス、ベルガモット
ミドルノート：アイリス、イランイラン、ブルガリアン・ローズ、エジプト産ジャスミン
ラストノート：サンダルウッド、アンバー、バニラ、ベチバー、インセンス、シダー、ミルラ