ウェイフルックはココから始まった。
パトリシア・ノリスは、エルヴィラの衣装イメージについて、監督のブライアン・デ・パルマより、本作のオリジナル作品であるハワード・ホークス監督の『暗黒街の顔役』(1932年、原題はスカーフェイス)の情婦ポピー(カレン・モーリー)のファッションを参考にしてくださいと言われていました。そのため、エルヴィラのスタイルは1930年代スタイルなのです。
しかし、彼女のスタイルがタイムレスなのは、コカインとアルコールで生きているエルヴィラのヘロインシックとでも言うべき退廃的な存在感ゆえです。
それはまさに1993年にケイト・モスによって幕開けしたウェイフルックの先駆けとも言えるものであり、ミシェル・ファイファー(1958-)は、エルヴィラを演じるにあたり、摂食障害とも言えるほどの過酷なダイエットを行いつつこの撮影に臨んでいたのでした。
ミシェル・ファイファーは、コカインを吸入するときは、薄く美しい肩甲骨を前かがみにする…
ポーリン・ケイル
エルヴィラ・ハンコックのファッション5
唯一の80年代風ファッション
- ゴールデンイエローのデイワンピース、プランジング・ネックライン
- シルバーのハイヒールサンダル
- 一連のパール・ネックレスとパール・イヤリング
エルヴィラ・ハンコックのファッション6
ウェイフルック
- ルームウェア、スパゲッティストラップ、バタフライ柄
- シルバーのハイヒールサンダル
彼女もまた野垂れ死にするのでしょう
この作品におけるミシェル・ファイファーは、物語を牽引するほどの重要な役割ではありませんでした。しかし、その存在感は、映画的というよりはファッション的なセンスにおいて独特な閃光を放っていました。
いまではエルヴィラ・ハンコックというキャラクターは、トニー・モンタナというヤクザの中のヤクザが愛した唯一の女として、ファム・ファタール〝滅びへと導く女神〟的なアイコンとして、タイムレスな輝きを放っています。
それはまさに1980年代に蘇えりし1930年代風のクールビューティーとして、または、1993年から始まるウェイフルックの先導者として、多くのファッション・デザイナーに影響を与えるファッション・アイコンとなりました。
エルヴィラ・ハンコックのファッション7
スパンコールドレス
- ブラックスパンコールドレス、スパゲッティストラップ
決して笑わない女の笑うオフショット
最後に、決して笑わない女エルヴィラ・ハンコックを演じたミシェル・ファイファーがオフショットで、アル・パチーノと向き合い、照れ笑いする一枚。すごく可愛い!
作品データ
作品名:スカーフェイス Scarface (1983)
監督:ブライアン・デ・パルマ
衣装:パトリシア・ノリス
出演者:アル・パチーノ/ミシェル・ファイファー/スティーヴン・バウアー/ポール・シェナー
- 【スカーフェイス】トニー・モンタナ帝国とアル・パチーノ
- 『スカーフェイス』Vol.1|アル・パチーノとアル・カポネ
- 『スカーフェイス』Vol.2|アル・パチーノとアロハシャツとチェーンソー
- 『スカーフェイス』Vol.3|トニー・モンタナと世界で最も薄い高級時計
- 『スカーフェイス』Vol.4|トニー・モンタナと『白と赤の美学』
- 『スカーフェイス』Vol.5|アル・パチーノ=トニー・モンタナ愛用香水
- 『スカーフェイス』Vol.6|アル・パチーノのトニー・モンタナ伝説
- 『スカーフェイス』Vol.7|ミシェル・ファイファーのショートボブ
- 『スカーフェイス』Vol.8|ミシェル・ファイファーのディスコ・ドレス
- 『スカーフェイス』Vol.9|ミシェル・ファイファーの元祖ウェイフルック