マリリン・モンローが太陽神になった瞬間
マリリン・モンロー・ルック5 ゴールドドレス
- ゴールド・プリーツラメ・ドレス
マリリンは、ハリウッドで最も美しい胸を持つ女優だ!
ウィリアム・トラヴィーラ
本作において、ただバック・シルエットが映し出されただけのこのゴールドドレスが、後世において、マリリン・モンローのアイコニック・ドレスのひとつになります。
1953年当時において、胸元を広く開けたセクシーなフロント・シルエットに対して、検閲(ヘイズ・コード)が入ると予想されたため、撮り終えていたピギー(チャールズ・コバーン)とのダンスシーンも全てカットされました。ここまでの話だと、間違いなくこのドレスは、幻のドレスになったことでしょう。
「私はあのドレスを着て授賞式に出たいんです!」
セックスは誰の人生においても非常に重要な役割を果たしています。人はセックスに惹かれ、憧れます。けれども、目の前でこれ見よがしに見せびらかされたくはありません。誰かがミス・モンローに言うべきです。世間の人々は挑発的で女らしいパーソナリティを好むでしょうが、同時に素顔の女優はレディであることを望んでいるのです。
ジョーン・クロフォード
1953年2月9日にビバリーヒルズホテルのクリスタル・ルームで開催されたフォトプレイ・アワードの授賞式で、マリリンは、同じゴールドドレスを着用することにしました。このころマリリンは、同じホテルのシングルルームに住んでいたので、トラヴィーラに連絡し、ドレスを持参してもらうようにお願いしました。
しかし、その申し出に対してトラヴィーラは、無碍も無く断ってきました。その理由は、このドレスは、あくまでも撮影用に作ったコスチュームであり、生地が薄すぎて、誰が着ても、太って見えるということと、ジッパーがないので仮縫いをしなければならないということからでした。それでもすでに撮影中にこの服を着た自分の感触を信じ、絶対にハレの舞台でこのドレスを着たいと決めていたマリリンは、20世紀フォックスのボス・ダリル・F・ザナックに連絡しました。ボスからの鶴の一声でトラヴィーラは、このドレスをマリリンに着せることになったのでした。
「底抜けシリーズ」のジェリー・ルイスがテーブルに乗り、口笛を吹く中で、ゴールドドレスで登場するマリリン。その姿を芸能ジャーナリストのジェームズ・ベーコンは、「マリリンは会場の人々のあいだをくねくね歩きながら舞台に上がっていったが、ヒップはシルクのシーツの下で仔犬が二匹じゃれついているように見えた」と書き記しました。
「バーレスク・ショーみたいで低俗だ!」と言い放ったジョーン・クロフォードの言葉は、「時代遅れだ!」と非難され、クロフォードは、後に発言を撤回し、謝罪することになります。つまり、このドレスは、ハリウッドにおいて、それほどのセンセーションを巻き起こしたドレスだったのです。このゴールドドレス騒動により、20世紀フォックスには、どの女優よりも遥かに多い25000通のファンレターが毎週殺到するようになりました。
こうして、1953年にマリリンは、ハリウッドのセックス・シンボルの不動の地位を手にしたのでした。